中国でライブ配信者の女性が配信中に農薬を飲んで自殺した事件をめぐり、中国の複数のメディアが「早く飲め」などとはやし立てた視聴者の法的責任について論じる記事を相次いで掲載している。

「たぶんこれが最後の配信になるでしょう」――。長期に渡ってうつに悩んでいたという女性は15日、農薬のボトルをテーブルに置いて配信を行っていた。視聴者からリアルタイムに寄せられるコメントには「自分を大切にしなきゃだめだよ」といった慰めの言葉と同時に「早く飲め」「だから早く飲めってば」などとはやし立てるようなものがあった。視聴者にあおられた女性はボトルを手に取り、飲み干した。女性はその後、病院に搬送されたものの、死亡が確認されたという。

女性を知る人物は「彼女は自殺するつもりはなく、別れた彼氏との寄りを戻そうと思ってああいうことをしていた。だから、用意した農薬も薄めたものだったし、飲んだ後には自分で救急車を呼んだ」とし、「死ぬつもりがなかった女性を追い詰め、死に追いやったのはネットユーザーたちだ」と主張。遺族もあおり立てたネットユーザーの責任を追及するとしている。

この件について、中国メディアの澎湃新聞は「ライブ配信中に自殺行為を扇動したネットユーザーはどのような法的責任を負うことになるのか」として、専門家の見解を紹介している。

中国政法大学伝播法研究センターの朱巍(ジュー・ウェイ)副主任はまず、動画配信プラットフォームの責任に言及。「プラットフォームはネットサービス提供者であり、ユーザーの発表する情報を審査する責任を負う。自殺は違反情報であり、すべてのプラットフォームが対策を講じるべき」と指摘した。ライブ配信という特性上、即時に発見したり判断したりすることの難しさがあることには理解を示しつつ、人工知能(AI)による審査や通報の円滑化による即時の遮断やアーカイブの削除といった方法で管理を強化する必要があるとした。

朱氏はまた、「現在のライブ配信では、一部の視聴者が感情を発散させている。一時的な感情で発言し、結果を考えていない」と指摘。今回の事件で問題の発言をしたネットユーザーについては「倫理的、社会的責任の観点から責任を負うべき」との考えを示した。

上海大邦法律事務所の丁金坤(ディン・ジンクン)弁護士は「当事者の女性に農薬を飲ませるような書き込みをしたユーザーは自殺ほう助の疑いがある」とした。また、「自殺との直接の因果関係があると認定されれば、故意殺人の疑いが持たれる。直接的な因果関係はなくても自殺をするような雰囲気を作ったり、間接的に自殺を促すような発言をしたりすれば、『治安管理処罰法』に違反する」と説明した。

一方、中国の法律問題を扱うメディア・法治日報は、「配信者に精神的な疾患があり、症状が重い場合、あおり立てる行為は故意の殺人罪に問われる可能性がある」としながらも、「配信者に自殺の意思があったとしてもヤジは自殺の決意を強めるだけであり、実刑に処せられることはまれ。一般的には公共の秩序を乱す行為として『治安管理処罰法』に基づく行政処分が下される」との見方を示した。具体的には、5日以上10日以下の拘留および500元(約9000円)以下の罰金の併科、情状が比較的重い場合は10日以上15日以下の拘留および1000元(約1万8000円)以下の罰金を併科、となるという。

中国では近年、ライブ配信の増加とともにさまざまな理由で配信中に自傷行為を行ったり、自殺を図ったりするケースがしばしば起きているという。(翻訳・編集/北田)