2022年8月11日、独ドイチェ・ヴェレ(中国語版)は11日、海外在住の華人が語る「アイデンティー論」を紹介する文章を掲載した。以下はその概要。

この数週間、ディオールによるスカートの「漢服盗用疑惑」から、ペロシ米下院議長による訪台に至るまで、海外在住華人のコミュニティーでは激しい議論の数々が繰り広げられた。中国政府による一連の政策に反対を唱える人もいれば、海外にいながら情緒的には中国側に立つ人もいる。さらには「中国を守る決心」を過激な言論で示す人もいる。

1年前に家族と一緒に米シアトルに移民した高校生のグレースさんは、米国に移住しても主な友人は華人であり、情緒的には中国側に立っている。中国に関するネガティブなニュースを見聞きすれば気分が悪いという。学校では中国文化が日本のアニメやK-POPに比べるとマイナーであることに気づいた彼女は中国の文化をアピールして、社会における華人に対するステレオタイプを打破しようと考えるようになった。学校の文化祭に積極的に参加してファッションショーに漢服姿で登壇するほか、普段から漢服を来て出かけるとのことだ。

「自分の好きなものを守る」というポリシーを持つ彼女は、漢服を愛するがゆえにディオールの騒動には激しい怒りを覚えたが、両親や友人など周囲からは「なぜそこまで怒るのか」と理解が得られないという。漢服だけでなく、和服や韓服など他民族の伝統衣装も好む彼女は「一切を顧みず他国の文化をおとしめたり、他国を誹謗(ひぼう)する人たちのことは、嫌いになる」と語る。また、自身が声を上げるのは自分が詳しい漢服についてのみで、人権などその他の問題については感情的には中国側に立つものの、自身の理解が限定的であることから現時点では何らかの態度を持たないようにしているという。米国にやってきてから、中国で見聞きしていたのとは異なる情報がたくさん入るようになり、しかも米中それぞれに過激な言論をする人たちが存在することもあって「立場の選択をするのが怖い」と感じるようになったとのことだ。

以前、中国版ツイッター・微博(ウェイボー)のコンテンツ審査員を務めていたという米国在住歴2年という劉(リウ)さんは自己紹介の際、「アジアン・アメリカン」という表現を用いる。愛国主義、民族主義と結び付けられたくないからだそうだ。彼は中国の愛国主義、民族主義や、これにより引き起こされる民族的なヘイトには消極的な態度を持っている。米国に移住して2年余り、中国で生活する友人との関係はやや希薄となり、SNS上でも緊密に連絡を取り合わなくなったという。

また、国や民族といった概念自身に興味を持たない人もいる。テキサス州オースティン在住の阿星(アーシン)さんもその一人だ。彼女は女性の権利運動に強い関心を持ち、自らも活動に参加している。物事を弁証的に捉えることを好み、中国にも米国にもそれぞれ良い点と悪い点があるため、両国がますます良くなるように自身も努力していきたいと考えている。単純な民族主義、愛国主義を捨て、物事に対してできるだけ客観的で公正な認識を保つよう心掛けているとのことだ。(翻訳・編集/川尻)