中国では、日中共同ニヤ遺跡学術調査隊が1995年10月に新疆ウイグル自治区ホータン地区のニヤ遺跡で発見した「五星出東方利中国(五星が東方に出て中国を利する)」の文字が記された、弓を射る際に用いる錦の「肘あて」が注目され続けている。この「肘あて」は、中国本土外への持ち出しができない最重要文化財である「禁止出境展覧文物」にも指定されるなど「超国宝級」の文化財として扱われている。中国の代表的な検索/情報サイトの百度はこのほど、この「肘あて」を改めて紹介する文章を掲載した。以下は同文章の抄訳だ。



1995年10月、中日ニヤ遺跡学術調査隊は、新疆ホータン地区民豊県ニヤ遺跡の漢代の墓で大発見をした。墓の中の1人の右腕に、色鮮やかな錦の布がくくりつけられていたのだ。色鮮やかな錦の布には、篆書体の漢字で「五星出東方利中国」の8文字が記されていた。布が作られたのは今から2000年ほど前の漢代で、「中国」の2文字は、新疆地区で発見された中で最も早いものだった。

「中国」はもともと地域を示す概念で、黄河流域の中原地区を広く指した。「中国」の二文字が確認された最も古い事例は、西周(紀元前1100年ごろ−同771年)初期の青銅器の銘文だ。

ニヤで発見された錦にある「五星」とは、金・木・水・火・土の五大惑星のことだ。望遠鏡の出現以前に知られていたのは、この5惑星だけだった。「五星出東方」とは、この5惑星が東の空に集まったことを意味する。5惑星の名は陰陽五行説を反映したものであり、すべてが同じ方角に集まることは、非常に縁起がよいとされた。

「五星出東方利中国」の肘あては、蜀錦と呼ばれる生地で作られていた。非常に高級な布で、当時は長安と成都でしか作ることができなかった。この肘あては、当時の中国、ひいては世界における絹織物の最高技術を示すものとしても極めて貴重だ。

青、緑、赤、黄、白の5セットの色彩鮮やかな縦糸と横糸が交わっており、生地は厚い。この五色は金・木・水・火・土の五行に対応しており、まさに「五つ星」を象徴している。

「五星出東方利中国」舞台劇

「五星出東方」舞台劇



図案は美しく流麗で、五色の絹糸が「五星出東方利中国」という漢字8文字や星紋、雲紋だけでなく、孔雀、鶴、魔除け虎など吉祥を示す模様をしっかりと織り上げている。文字と動的な図案がここまで調和している布は、非常に珍しい。

ニヤ遺跡は漢代から晋代にかけて存在した西域三十六国の一つである精絶国の所在地であり、シルクロード南道の経由地でもある。前漢時代(紀元前202年−紀元8年)には張騫が2度にわたって西域に赴き、中原王朝と西域地区の密接な往来を確立した。前漢は西域都護府を設置して西域地域を管轄しており、その中に精絶国も含まれていた。

漢・晋代に、中国の主要な貿易商品や外国の君主、使節への贈呈、辺境地区の少数民族の首領への贈呈の主要な贈答品は主に絹布だった。「五星出東方利中国」の肱あては、古代の精絶国と漢王朝の間に密接な関係が存在していることを示している。

文化財は歴史の証言者であり語り部だ。北京の故宮博物院は2022年初頭に開催した特別展「何以中国(何をもって中国とするか)」で、「国宝重器」130点以上を展示した。新疆博物館が所蔵する「五星出東方利中国」の肱あては、その一つだった。この肘あては、「異文化の共存」が中華文明が存続した大きな理由の一つだったことを、如実に示している。

この肘あては、現代の芸術活動にも刺激を与え続けている。2021年6月に北京市内で初演された舞踊劇の「五星出東方」は、その後中国全国で30回以上も公演された。この舞踊劇は、この肘あてにまつわる物語を通じて、中国の大地における民族の交流と融和の歴史を示すものであり、文化財の背景にある重要な事実を示すものだ。この舞踊劇はその後、中国政府の最高芸術賞である「文華大奨」を受賞した。(翻訳・編集/如月隼人)

「五星出東方利中国」舞台劇

「五星出東方」舞台劇