香港メディアの亜洲週刊はこのほど、全世界で進む自動車のEV化で日本は遅れており、「自動車強国」の地位を維持するには、「武士道の切腹」のような覚悟が必要と論ずる、東京支局長の毛峰氏の署名入り記事を発表した。

記事はまず、環境保護やスマート化など、全世界で進む自動車をめぐる未曽有の改革を押しとどめることはできないと指摘。さらに、自動車産業は伝統的メーカーの独占ではなく、アップル、アマゾン、グーグル、ソニー、さらに中国の阿里巴巴(アリババ)、百度、小米(シャオミ)、滴滴など、異業種企業の参入が続いていると論じた。

記事はさらに、日本の過去に半導体や液晶などで「強者だったのに衰亡」という状況が発生した教訓を考えれば、日本の伝統的自動車産業にとっては技術を転換して産業構造を大変革することが「焦眉の急」と評した。

中国では電気自動車(EV)とプラグインハイブリッド車(PHV)、燃料電池車(FCV)などが、新エネルギー車と呼ばれている。なお、中国政府の基準では、ハイブリッド車は新エネルギー車に含まれない。記事は、中国では2020年、新エネルギー車の販売台数が初めて130万台を突破したと紹介。販売上位企業には五菱宏光、上汽宝駿、長城、広州汽車、比亜迪(BYD)、奇瑞(チェリー)など中国資本企業も多いとして、中国は合弁企業による化石燃料を用いる自動車大国から、新エネルギー車あるいはEVの製造強国へと、急速に変化しつつあると論じた。

記事はさらに、日本人の吉野彰氏が発明者の一人であるリチウム電池の分野でも、日本はかつての優勢を失ったと指摘。電池の性能を向上させた中国企業の寧徳時代新能科技(CATL)が自動車用リチウム電池の世界シェアを28%に引き上げ、同分野での「長男」の地位を獲得したと論じた。現在の日本の動きとしては、電動自動車用電池の分野で主導権を奪還しようと、次世代型の全固体リチウム電池の開発に全力を注いでいると紹介した。

従来型自動車は、エンジン、クラッチ、変速機、消音機、各種電子機器など、部品の点数が極めて多い。EVなどは部品点数が格段に少なくなり、その種類も異なるために、従来型の自動車製造業界の構造が確立している日本が、EVなどの生産モデルを確立しようとすれば、大きな困難が伴うことになる。

記事は日本の自動車業界について「幻想を捨て、厳しい決断を下し、切腹をともなう『武士道』をもって、既存の自動車産業をスリム化せねばならない」と主張。日本で自動車製造に携わる労働者は約91万人でおり、そのうち部品製造に従事する労働者69万人の3分の1はこれまでの仕事を続けることができなくなるとする。今後は、いかにして職を失った労働者のためにEV関連の雇用を創出し、新たな産業チェーンを形成するかが、日本の自動車産業が「災い転じて福となす」ことができる鍵になると論じた。

記事は、トヨタ自動車などが進めている水素エンジン車については、「おそらくは『自己陶酔』に過ぎない」と評した。論拠としては、トヨタは日本国内にける水素エンジン車の生産台数を2030年には200万台までに引き上げ、ホンダや日産にも生産計画があるが、全世界におけるEVの販売は年間数千万台と、市場規模がけた違いであることを挙げた。また水素供給ステーションが20年末時点でも日本全国で110カ所程度しかないことにも触れた。

記事は最後の部分で、自動車分野を専門とする日本人記者からも「日本は背水の陣を敷いて、できるだけ早く巨大な新エネルギー車市場に参入する準備を整えねばならない。競争分野と協力分野を確定し、自らの強みと独自の『武器』を磨いて戦場に向かわねばならない」との見方が出ていると紹介した。(翻訳・編集/如月隼人)