[ロンドン 7日 ロイター] - バミューダ諸島やバージン諸島など、課税逃れに使われてきた英領の「宝島」群が過去半世紀で最大の危機に瀕している。主要7カ国(G7)の財務相会合が、課税逃れ防止の国際ルールで合意したためだ。

大英帝国の名残であるこうした島々は、富裕な中国政府関係者やロシアの新興財閥、西側企業、ヘッジファンドなどにより、納税額を減らす、あるいは完全に秘密を守るためのタックスヘイブン(租税回避地)として活用されてきた。

英国の非政府組織(NGO)であるタックス・ジャスティス・ネットワーク(TJN)のアレックス・コブハム代表は「今が転換期だ。5年後か10年後に『そうだ。あの時に変わったんだ』と過去を振り返ることになるだろう」と話した。

コブハム氏は、取り組みの具体的な内容がまだ十分に練り上げられておらず、政治家が何年も前から課税逃れの取り締まりを約束していることは認めている。

TJNの推計によると、企業や個人の課税逃れで失われている税収は世界全体で年間4270億ドル。このうち多国籍企業が利益をタックスヘイブンに移すことで発生した損失は約2450億ドルで、富裕な個人の資産隠しによる損失は1820億ドル。

G7財務相会合の公約が実現に移されれば、世界の隠匿利益の流れは20世紀の大英帝国崩壊以降、最も抜本的とも言える転換に直面するかもしれない。

英国海外領土はバミューダ諸島、バージン諸島、ケイマン諸島、ジブラルタル、タークス・カイコス諸島などで、世界に14カ所存在する。

<ライバルは欧州大陸系>

TJNによると、年間2450億ドルに上る企業の課税逃れの29%が英国海外領土のタックスヘイブンを利用している。企業の課税逃れを助長しているタックスヘイブンの上位3つをバージン諸島、ケイマン諸島、バミューダ諸島が占める。

バージン諸島、ケイマン諸島、バミューダ諸島の財務省は、コメント要請に応じなかった。

コブハム氏によると、こうした英国海外領土は企業利益の流れが変わると大きな打撃を受け、数十年続いたビジネスモデルが崩れて失業率が上昇する可能性がある。

タックスヘイブンには英国海外領土系のほかに、アイルランドやキプロス、ルクセンブルク、オランダ、スイスなど欧州大陸系があり、両者は競いつつ、絡み合って発展してきた。

G7財務相会合の合意では、税率が共通最低税率を下回る国で企業が得た利益については、本国に差額分を徴収する権利が与えられているため、タックスヘイブンの魅力は大幅に薄れる。

シェフィールド大学マネジメントスクールのリチャード・マーフィー教授は、伝統的に個人の租税回避に使われてきた場所は、おおむね規制強化の網を逃れると予想。「ルクセンブルクやアイルランド、オランダなど大企業が進出している国が影響を受けるだろう」と述べた。

マーフィー氏によると、最も大きな打撃を受ける国は、税制面の優位をできるだけ維持しようと激しいロビー活動を展開する見通しだ。「利益」や「納税額」など会計上の重要な定義は、まだ決まっていないという。

マーフィー氏は、英国海外領土系タックスヘイブンの多くは影響が比較的小さいと見ている。ただ、G7財務相会合の共同声明で最も重要なのは、企業に対して「襟を正せ」というメッセージを発している点だという。

西側企業の取締役会の多くは、株主から環境、社会、企業統治(ESG)の改善を求められており、こうしたメッセージは特に懸念されるという。

マーフィー氏は「ビジネス界にとって『このような場所には近づくな。厄介なことになるぞ』という非常に大きなメッセージになる。実際にいくつかの企業は、問題に巻き込まれるだろう」と述べた。

マーフィー氏によると、ハイテク企業が打撃を被るのは当然だが、銀行や金融も同じであり、医薬企業も一部が影響を受ける恐れがあるという。

(Guy Faulconbridge記者)