Ross Kerber 山崎牧子

[ボストン/東京 23日 ロイター] - 元経済産業省参与の水野弘道氏は21日、ロイターのインタビューに応じ、昨夏の東芝株主総会の議決権行使を巡って米ハーバード大学の基金運用ファンドに圧力をかけたことはないと語った。水野氏の関与を指摘した第三者委員会の調査報告書を巡り、事実関係を明らかにするよう同基金に求めているという。

東芝が経済産業省と一体となって株主に圧力をかけたとする報告書が発表されて以降、水野氏がメディアのインタビューに応じるのは初めて。

昨年7月末の東芝株主総会は、筆頭株主のエフィッシモ・キャピタル・マネジメントが社外取締役候補を独自に提案し、会社側と対立。東芝の議決権4%超を保有するハーバード大基金は、大株主の1人として動向が注視されていた。

水野氏によると、昨年から同大のフェローに就任することになっていたため、同基金と話をしてもよいと経産省に伝えた。同基金とは、議決権行使を巡って直面しうるリスクについて議論。同時に、自身が日本政府の見解を代弁しているわけではないことを明確にしたと語った。その上で、「どちらに投票しようと自分は関心がない」と基金の首脳陣に話したと述べた。

ハーバード大基金は総会で議決権行使を棄権した。

インタビューでの水野氏の発言を受け、ロイターはハーバード大基金にコメントを求めたが、広報担当者は応じなかった。

エフィッシモは今年3月に弁護士3人を選任し、昨夏の株主総会を調査。6月10日に公表した報告書は、水野氏の基金への干渉などを理由に「(昨年の)株主総会が公正に運営されたものとはいえない」と結論付けた。

水野氏は、基金側とのやり取りを友好的なものにしようと努めたとし、6月10日の調査報告書について、事実関係を明らかにするよう基金に説明を求めていることを明らかにした。

事情を直接知る経産省幹部はロイターの取材に対し、水野氏がロイターに語った内容を肯定。こうした内容が弁護士の調査報告書には反映されていないとした。

東芝はコメントを控えた。

<改正外為法で起こりうること>

水野氏の説明は、調査報告書と食い違う部分もある。報告書は、水野氏とみられる人物から「東芝の投票に関し望んでもいないミーティングの要請を受けた」と記載されたハーバード大基金の東芝宛てレターを引用。そのやり取りは内容も時期も不適切なものだったとしている。

報告書はまた、経産省参与の地位にある人物が議決権行使の内容に関して外国人株主と協議を行ったならば、議決権行使に関わる判断に強い影響を与えるであろうことは容易に予想できるとし、私人としてであっても、当該株主の受け止め方、影響力は変わらないであろうとしている。

ロイターはインタビュー後、水野氏に追加で質問を送付。同氏は22日に返答し、自身の役割について、ハーバード大基金が東芝への不満を強める中で、同基金から経産省と東芝にメッセージを伝える橋渡し役だったと説明した。

水野氏によると、基金を運用するハーバードマネジメントカンパニーのN・P・ナーベカー最高経営責任者(CEO)は同氏の情報を歓迎したという。

ロイターはナーベーカー氏へのインタビューをハーバードに申し込んだものの、実現していない。

水野氏は、外資を規制する改正外為法のもと、エフィッシモと基金の関係性を考慮すると、投票行動がもたらしうる結果について、ハーバード大基金に理解してほしかったと語った。

関係者が昨年、ロイターに明らかにしたところによると、やりとりの中で水野氏が特に取り上げたのが、東芝の筆頭株主であるエフィッシモとハーバード大基金の関係性。同基金はエフィッシモにも出資していた。ロイターは水野氏が、会社側と対立する内容の議決権行使をした場合、議決権の共同行使をめぐる改正外為法に基づく調査が行われる可能性に言及したと報じた。

水野氏はロイターに対し、ハーバード大基金が不測の事態に陥らないよう手助けしようとしたと語った。「十分な情報を提供をしようとしているにすぎないという立場を明確に伝えた」と述べた。改正外為法の適用が始まった日本で物事がどう動くのか、同基金に理解してもらうためだったとした。

水野氏は米電気自動車(EV)大手テスラの社外取締役を務めるほか、今年1月には国連の特使に就任した。昨年3月まで、日本の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の最高投資責任者だった。

(Ross Kerber、山崎牧子 日本語記事執筆:梅川崇 編集:久保信博)

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