[ニューヨーク 20日 ロイター] - 多額の債務を抱えて経営難に陥っている中国の不動産開発大手、中国恒大集団の株価が20日に急落し、世界的な株安を引き起こした。そこで投資家は、同社を巡る問題が金融市場にどこまで影響を及ぼすのか探ろうと必死になっている。

今のところ、米国に拠点を置く投資家の間では、2008年のリーマン・ブラザーズの経営破綻時のような金融システム全体が動揺する事態になる可能性は乏しい、との見方が多い。

ただ、一部の市場関係者は、米国株が歴史的高値で推移し、米連邦準備理事会(FRB)による大規模金融緩和の巻き戻しが視野に入ってきた中で、突然、リスク許容度が低下すれば世界全体の市場が幅広い売りに見舞われやすくなるのではないか、と懸念している。

1億ドルの資産を運用するハイテク投資専門ヘッジファンドのポートフォリオマネジャー、ロブ・ロメロ氏は「バリュエーションが高まっている点から、われわれは市場に対して非常に警戒的になっている。(恒大集団が破綻した場合に)どの程度影響が広がるか知るのは難しい。われわれは米国市場に耐性がある、という証拠を探している。そうした耐性が発揮されなければ、負の影響が雪だるま式に膨れ上がるリスクが高まる」と指摘した。

折しも株価水準が高騰し、多くの投資家やアナリストが揺り戻しに警鐘を鳴らしていたところだ。S&P総合500種は予想利益に基づく株価収益率(PER)が17日時点で21.6倍と、1990年代終盤のITバブル以降の最高水準付近に達し、20日の取引開始前までの年初来上昇率は18%強だった。

恒大集団の経営悪化は数カ月前から表面化していたが、20日になって株価が10%余りも下落した。同社が借り入れ状況を安定させない限り、3050億ドルに上る負債が中国の金融システム全体に損失をもたらす恐れがある、と規制当局が警告したためだ。

実際、恒大集団による債務返済の遅れは「クロスデフォルト(1件の借り入れのデフォルトに伴って全ての債務について満期前でもデフォルトが認定され、債権者から一斉に返済を求められること)」を誘発しかねない。

こうした懸念からMSCIグローバル株価指数は1.62%下落し、過去2カ月で最悪の値動きになった。投資家は米国債などの安全資産に急いで避難し、米10年債利回りは1週間ぶりの水準に低下。米10年物金利スワップのスプレッドはほぼ半年ぶりの大きさに達した。

短期金融市場でも、3カ月物ドルLIBOR(ロンドン銀行間取引金利)が12.5ベーシスポイント上昇して4週間来の最高水準となり、銀行システムの世界的な緊張が生じることへの警戒感が映し出された。

<冷静な見方も>

一方、キャピタル・ジェネレーション・パートナーズのロバート・シアーズ最高投資責任者(CIO)によると、機関投資家が恒大集団向けポジションで過大な借り入れをしていて、流動性危機につながるような兆しは乏しいもようだ。「目下のところマイナスの動きの大半は、中国の不動産セクター内にとどまっている。これがほとんどのヘッジファンドに大きな影響を与えたとは思わない」という。

米オプション市場では、ボラティリティー・インデックス(VIX)が4カ月ぶり高水準を付けたにもかかわらず、トレーダーは一段の株価急落に備えるよりも既存のヘッジポジションの利益確定に熱心な様子だ。

2012年発行のリポートで恒大集団は債務超過で投資家をだましていると指摘したシトロン・リサーチ創設者のアンドリュー・レフト氏も、市場で痛みが拡大するとは予想していない。「これが世界経済の背骨をへし折る『最後のわら』になるとは、考えていない」と言い切った。

実際、一部の投資家は20日の株安について想定される事態だったはずだ、と話す。夏を通じてS&P総合500種が上昇した半面、米連邦債務上限に関する議論からキャピタルゲイン増税観測までさまざまな懸念が広がっていたからだ。

ウェルズ・ファーゴ・アセット・マネジメントのシニア投資ストラテジスト、ブライアン・ジェイコブソン氏は「9月に入る段階で、バリュエーションと楽観ムードが非常に高まっていたので、投資家心理が劇的だが短期間の変化にやや、さらされやすくなったとわれわれは考えていた」と述べた。

(David Randall記者、Maiya Keidan記者、Svea Herbst-Bayliss記者)