[東京 1日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は、11月30日の米上院銀行委での証言で、資産購入の削減(テーパリング)の加速を強くにじませる「タカ派」的な発言を行って、米市場では株安・ドル下落などの現象がみられた。今後の東京市場は、どのような影響を受けるのか、市場関係者に聞いた。

●インフレ期待落ち着きドルに下押し圧力、年内は110円方向

三菱UFJ銀行 チーフアナリスト 内田稔氏

米国では雇用コスト指数の上昇や中古自動車の価格上昇もあるが、一番大きいのは原油やガソリン価格であり、そこが揺らいでくると、インフレに対する期待は落ち着いてくる。このため、ドルは下押し圧力がかかりやすい。

原油先物価格は一時85ドルまで上昇した後、11月に入ってからは1割以上下落する場面が出てきていた。日米のほか他国も含めて戦略石油備蓄を放出する形で供給が少し増えた格好となったほか、北半球の冬のピークも12月くらいまであり、石油輸出国機構(OPEC)の高官も12月に入ると供給が需要が上回るとの見方を示している。新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン株」の出現もあり、原油価格は若干軟調に推移するとみている。

オミクロン株の出現や米国では新型コロナウイルスの感染が拡大している可能性があり、実際のテーパリング(量的緩和の段階的縮小)の加速は考えにくい。市場は来年6月の利上げを織り込んでいるが、今後の状況次第では利上げ期待が後退していく。米2年債利回りの上昇は見込めず、ここまで唐突に上がったドルロングの取り崩しが先行する。11月のドル高が一旦ピークアウトして、ドルは緩むとみている。

円は、今年に入り何回か円安に進んだが、いずれもインフレ期待が高まる場面だ。インフレ期待は高まりにくい、もしくは低下するとみられ、円は反発する環境にある。11月はドルが強かったものの、円はG10通貨でみれば米ドルと並ぶくらいまでに持ち直しており、今後も続くだろう。

12月のドル/円は軟調に推移する可能性が高く、110円方向に向かって少しずつ緩んでいく展開になると予想している。年内は、年末越えのドルの資金のファンディング需要があり、ドルは支えられている面があるが、年を越えるとなくなる。年明け以降は110ー112円近辺をもみあいながら、リスクとしては110円を割っていく可能性もある。

●オミクロン株の影響が明確になるまで、株式市場はボラ高い状況に

野村証券 ストラテジスト 澤田麻希氏

オミクロン株については、経済への影響がどれくらいあるのか見極める段階にあるとみられる。たとえば、前日はモデルナCEOが既存ワクチンの新変異株への効果は限定的との見解を示したことが、株価を大きく下げる要因となったが、通常の地合いであれば、そこまで反応する材料とはならない。

つまり、オミクロン株に対する不透明感が強いことが市場の重しとなっており、オミクロン株に関して明確な判断が下されるようになるまで、市場はボラティリティーの高い状態が続きそうだ。当面は、追加の悪材料が出るかどうかを注視したい。

日経平均は直近3日間で1600円以上の値幅調整となったほか、テクニカル面では騰落レシオが71%まで低下するなど売られ過ぎを示唆している。日米ともにファンダメンタルズが良好であることも注目でき、この点からもここからは過度な悲観は禁物となるだろう。

一方、前日の米国株式市場では、パウエルFRB議長がインフレ警戒を示すタカ派的な発言をしたことが嫌気されたが、米国の金融政策もオミクロン株の影響次第で再び見方が交錯し、不安定な状態となる可能性もある。

●FRBはインフレ対応優先か、株下落でも

JPモルガン証券 債券調査部長 山脇 貴史氏

米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長の議会証言はタカ派的だったが、これまでにクラリダ副議長や、ウォーラー理事が同様の趣旨の発言を行っていたことをみると、FRB内部ですでに決まっている方針なのだろう。

インフレへの懸念が強い議会での証言ということもあるだろうが、FRBがインフレの犯人扱いをされないためにも、テーパリング(量的緩和の縮小)の加速などによってインフレ抑制に動くのではないか。オミクロン株の影響が広がらないという前提だが、株価やコモディティー価格が多少下がったとしても、インフレ対応を優先することになりそうだ。

ただ、利上げの議論はまた別だろう。利上げを行えば需要を下げることになる。コロナの影響で低下している供給の水準まで、需要を下げることでインフレを抑えることになるが、需要を下げれば景気には大きな影響が出る。足元の米金利曲線のツイストフラット化はやや行き過ぎの印象もある。

円債金利は米国金利に限定的に連動する展開は変わらないだろう。来年度の国債発行計画が次の焦点だが、40年債が多少増発される程度では相場全体の方向性に影響は出ないとみている。

●変異株出現でもドル高/円安シナリオは変わらず

みずほ銀行 チーフマーケット・エコノミスト 唐鎌大輔氏

新型コロナウイルスの新たな変異株、「オミクロン株」については現時点では分からないことが多く、オミクロン株が登場したことを受けてこれまでのシナリオを変えるというのはまだ難しい。従来の見方通り、ドル高/円安基調が継続するとみている。

オミクロン株に関しては、欧州の感染者の多くが軽症と伝わっているほか、そもそもオミクロン株に対するワクチンは要らないのではないか、という見方もあるようだ。こうした点を踏まえて、従来のシナリオを大きく変える状況には至っていない。

重要なことは、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長がタカ派的な姿勢を示した点だ。パウエル議長は緩和縮小を加速すべきとの見解を示したほか、インフレについて「一過性という文言の使用をやめる適切な時期の可能性がある」と発言しており、オミクロン株の出現を受けてもタカ派化している。

目先のドル/円は、年末にかけて113円前半から116円程度で推移すると予想する。次回の米連邦公開市場委員会(FOMC)でパウエル議長が緩和縮小加速を表明すればドル買い材料となり、年初来高値更新の可能性もあるのではないか。

コロナ禍初期のころと違い、今はワクチンがあるため、株式市場も無制限の株売りのような状況にはなりにくく、リスクオフ姿勢は徐々に和らいでいくとみている。

●オミクロンと金融政策正常化、同時進行で振れ幅大きい

ニッセイ基礎研究所 チーフ株式ストラテジスト 井出真吾氏

きょうは反発で始まったが、その後にマイナスに沈んだ。昨日も大幅高の後、大幅安となっており、先行きは読みにくい。パンデミックと米金融政策の正常化という2つのリスク要因が同時に動き出しているため、相場は振らされやすい。

まずは落ち着きどころを見極めたい。今年のレンジの下限に接近しており、いいところまで下げてきた印象はある。ただ、いったん落ち着いても安心できない状況は続きそうだ。オミクロン株のワクチンが必要な場合、短期間で出荷可能という話があるが、日本に届くのは来春以降になるとみられる。日本でも市中感染が広がりかねず、そうなれば消費者の心理面からも、経済活動の停滞は避けられない。

足元の過度な混乱が一巡すれば、年内に2万9000円程度までは戻してもおかしくないが、3万円には距離があるとみている。