[東京 8日 ロイター] - 年明け以降の日本の国内総生産(GDP)に再び下押し圧力がかかる可能性が出てきた。政府は新型コロナ前の経済水準を年内に回復するとのシナリオを崩していないが、その後の見通しはオミクロン株の出現がかく乱要因で、専門家の間でも意見が分かれる。岸田文雄政権が掲げる賃上げの行方も左右しかねない。

経済動向を巡って政府関係者の1人は「引き続き年内のコロナ前回復を想定している」と、強気の姿勢を崩さない。

政府は、今年7月に改定した経済見通しで、GDPが年内にコロナ前の水準を回復するとした。2021年7―9月期GDP2次速報は前期比年率3.6%減と、1次速報から下方修正されたが、基礎資料の追加などに伴う年次推計で例年この時期に見直される実質GDP(季節調整値)は19年10―12月分が543兆円余りとされた。前回分は547兆円弱で、4兆円程度の縮減となる。

内閣府によると21年7―9月期の実額は533兆円弱で、コロナ前回復のハードルが下がった格好となっており、「リベンジ消費や生産の持ち直しで10―12月期は高水準の前期比プラスが見込まれる。あと一息という印象」と、前出の政府関係者は言う。

<感染第6波が招く停滞>

ただ、11月下旬に出現したオミクロン株の影響が広がり、感染第6波が余儀なくされれば今後の下押し要因になり得る。松野博一官房長官は8日午前の会見で「新たな変異株の出現による内外経済への影響などを注視する必要がある」と述べた。

市中感染が確認されていない日本では「10―12月期の成長率に比べて1―3月期の伸びは抑えられそうだが、腰折れするような経済環境にない」との見方が多いが、専門家の間では「緊急事態宣言が再び発令されるような感染状況になると景気回復が停滞し、1―3月期成長率が前期比マイナスに転じる可能性がある」(三菱総合研究所の森重彰浩・主任研究員)との声もくすぶる。

消費への影響と同時に、企業の生産活動を懸念する声も出ている。「北京冬季五輪を控える中国国内でオミクロン株がクラスターを発生させる事態になれば、厳しい感染対策が導入され、日本への中間財輸出が滞るリスクがある」と、野村証券の美和卓チーフエコノミストは指摘する。

<賃上げの勢い、委縮も>

企業の多くが影響を受ければ、首相が訴える賃上げ実現に向けた勢いをそぎかねない。

近く決定する与党税制改正大綱では、賃上げに積極的な企業支援策として、法人税から差し引く控除率を大企業で最大30%、中小企業では最大40%に引き上げる方針だ。

ただ、税制などの環境整備だけで賃上げに拍車をかけられるかは未知数で、第一生命経済研究所の永浜利広・首席エコノミストは「コロナで企業の状況が厳しい中、1人当たりの給与ではなく『給与総額』を上げるという条件付きでは、効果は限定的だろう」と手厳しい。

「労働市場改革を進めないと賃金は上がらない。規制緩和など労働市場改革を進めることができるか、岸田政権の手腕が問われる」と、前出の永浜氏は話す。

(山口貴也、金子かおり 編集:久保信博)