[シンガポール/ワシントン 31日 ロイター] - 国際通貨基金(IMF)は31日、2023年の世界経済成長率予想を2.9%と、10月に示した予想値(2.7%)から小幅に引き上げた。欧米の需要が「驚くほど底堅い」ことやエネルギー価格の上昇一服、中国の経済活動再開を上方修正の理由として挙げた。

24年の成長率予想については、各国中央銀行の利上げで需要が減少するとして10月予想の3.2%から3.1%に引き下げた。

IMFのチーフエコノミスト、ピエール・オリビエ・グランシャ氏は、リセッション(景気後退)リスクは低下し、各国中銀はインフレ抑制で進展を遂げていると指摘。それでもなお物価抑制にさらなる取り組みが必要で、ウクライナでの戦況激化や中国の新型コロナウイルスとの闘いに起因する新たな混乱が生じる可能性もあるとした。

「われわれは不測の事態も想定して備える必要があるが、(23年に)成長率が底打ちし、インフレ率が低下する転換点を迎える可能性がある」とした。

国別では、米国の23年成長率予測を10月時点の1.0%から1.4%に引き上げた。予想を上回る昨年第3・四半期の消費や投資のほか、堅調な労働市場、消費者の良好なバランスシートを理由に挙げた。

ユーロ圏は0.5%から0.7%に上方修正。欧州はエネルギー価格高に想定より迅速に適応したとし、価格上昇の一服がプラスに働いているとした。

英国については0.6%のマイナス成長を予想し、主要先進国で唯一リセッション入りを見込んだ。家計がエネルギーや住宅ローンを含む生活コストの上昇にあえいでいるとした。

コロナを抑え込む「ゼロコロナ」政策を転換した中国の成長率予測は10月時点の4.4%から5.2%に大幅に引き上げた。インドは6.1%の高い予想を維持。24年には6.8%に加速し、22年の水準に戻るとした。

グランシャ氏によると、中国とインドは世界の23年成長率の50%強を占める見通し。

同氏は中国の経済再開について、コモディティー(商品)価格に多少の上昇圧力がかかると認めながらも「総合的に見て世界経済に恩恵をもたらす」との見方を示した。インフレ悪化の原因となっている生産制約の解消につながり、中国の家計から新たな需要が生じるためとした。