[29日 ロイター] - カナダとメキシコは、英アストラゼネカの新型コロナウイルスワクチンについて、保健当局が米国の製造委託先に対する適切なチェックをしないまま、数百万回分を輸入して国民に提供していた。各査察記録や関係当局への取材で明らかになった。

アストラゼネカが製造を委託したのは、米メリーランド州ボルチモアにあるエマージェント・バイオソリューションズの工場。ここでは米ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)のワクチン製造も請け負っている。

海外向けのワクチン供給支援を迫られていたバイデン政権が3月終盤、アストラゼネカのワクチンをカナダに150万回分、メキシコに250万回分届けることを決めた。

エマージェントの工場は欧州医薬品庁(EMA)から「良好な製造工程」に沿って操業しているとお墨付きをもらっており、これに基づいてカナダとメキシコはワクチン使用を開始した、と両国の当局者はロイターに語った。

ところがロイターがEMAに問い合わせた結果、リモート査察を踏まえたこの認証は、実際にアストラゼネカのワクチンを製造している区域は対象外だったことが判明した。

一方米食品医薬品局(FDA)は、エマージェントの工場でJ&Jのワクチン製造に際してアストラゼネカのワクチンに使用する材料が混入していた事態を受け、工場の生産を停止させた。その後査察に入ったFDAの担当者は、工場の環境や従業員の不十分な訓練状況に不満を表明する報告書を作成した。

今のところエマージェントの工場で製造されたワクチンで何らかの病気になったとの報告はない。また当局側からも、汚染されたワクチンが誰かに接種されたとの指摘は出ていない。エマージェントは、工場で製造されたアストラゼネカのワクチンが汚染されたという証拠はないと主張している。」

それでもカナダとメキシコのワクチン輸入・使用承認手続きに不備があり、世界にまたがる複雑な製薬業界を各国当局が協力して監視する場合に盲点が生じる可能性が浮かび上がってきた形だ。

カナダの医薬品規制専門家は、どの承認基準が適用されるかを誰が把握しているかが分からない以上リスクがあると強調。カナダ保健当局が外国の規制当局にかなり依存している傾向があると苦言を呈した。

カナダ保健当局はロイターに、アストラゼネカの品質管理態勢を根拠に挙げた上で、輸入したワクチンの安全性に自信を持っていると回答した。メキシコ保健当局も、輸入・使用承認手続きは必要な厳格さを伴って実行されたとの確信は変わらないと述べた。