多くの人が必要とする病院。災害のリスクが高いエリアに立つある病院が、被災の教訓を生かし、被害を最小限に食い止めるための取り組みを進めています。

病院に押し寄せた濁流

球磨川と支流の山田川に挟まれるように立つ、熊本県人吉市の「球磨病院」。

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2020年7月4日未明、前夜から降り続く大雨でついに球磨川は越水、人吉市内を飲み込んだ濁流が病院にも押し寄せました。

球磨病院 和田桂子 看護部長「石が飛んできてバーンと(ドアのガラスを)割ってしまって」

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看護部長の和田桂子(わだ けいこ)さんです。当時、和田さんは、病院に押し寄せる濁流を止めようとしていたといいます。

和田看護部長「マットレスを積み上げていったんですけどね。(何とか止めようと?)止めようと必死でした、あの時は」

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大量の水が流れ込み、ロビーの机やソファーは次々と流されました。

和田看護部長「もっと水が上がるんのではないかと怖かったですね」

濁流が押し寄せた人吉市内※球磨病院内から撮影

一刻の猶予もない中、和田さんがまず考えたのが入院患者の避難。全職員で、患者たちを3階以上に避難させました。

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和田看護部長「患者さんたちも怖がっていたと思います。『大丈夫だからね』と(励ましながら)。ご家族も心配なさっていたので、電話して『ちゃんといらっしゃいますから』と言って」

一部の病棟では、濁流は2階にまで達していましたが、なんとか患者やスタッフは無事でした。

「浸水から得た教訓」

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球磨病院では、災害時のマニュアルを策定していましたが、対策本部として想定していた場所は、浸水した1階。院内の情報を集約するサーバーや、助けを求める消防への直通電話も使えませんでした。

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この反省から、対策本部や重要な設備は2階以上のフロアに置くことにしました。

さらに初めて、災害が起きる前の対応行動をマニュアル化しました

・注意報が発表された段階で、職員は「注意体制」を立ち上げること。

・また付近の河川が氾濫危険水位に達した場合は、外来を中止して、職員や患者は3階以上に避難することを決めました。※状況によっては、その前に外来を中止することも

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和田看護部長「心の準備があるので、『今度何かあったらこうすればいい』というのが頭の中に入っている」

被災の教訓を、備えに。和田さんたちは決意を新たにしています。