新型コロナウイルスのワクチンを保管していた「冷凍庫のその後」。3年前から、ワクチン接種を進める各自治体に対し、国がワクチンを超低温で保管する特別な冷凍庫を譲渡しました。

役目を終えた今、その冷凍庫がどうなっているのかを追いました。

「超低温冷凍庫」78台の行方

熊本市の熊本保健科学大学の研究室の奥へ入っていくと、熊本市から譲渡されたという冷凍庫が置かれていました。「ファイザーワクチン用」と書かれた張り紙があります。

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熊本保健科学大学 山本隆敏講師実験で使う検体や試薬の保管に使っています。新型コロナのワクチン保管に使われていたマイナス80度の冷凍庫を、本学は受け取りさせていただいた」

冷凍庫は大学の研究室で活用されていました。

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新型コロナワクチンについては、自己負担なしの臨時接種が今年3月に終了しました。熊本市には国から78台の超低温冷凍庫が配備されていましたが、ワクチンを保管する必要がなくなり、マイナス80度にできる特別な冷凍庫がいらなくなりました。

熊本市感染症予防課 木村仁洋課長「冷凍庫を有効に活用いただきたいということで、医療機関や大学などに希望調査を行って、市から譲渡をした」

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患者の血液を長期保存

冷凍庫を受け取った医療機関を訪ねました。

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患者の血液分析などを行う検体検査室の奥へ進むと、超低温冷凍庫があります。この病院では温度の異なる2種類の冷凍庫を受け取っていて、血液の保存に活用していました。

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済生会熊本病院 上島さやか 副技師長「血液を保管をして、ガチガチに凍っている状態。深いマイナスの温度に下げてしまわないと、どうしても検体が劣化してしまうので、一気に固めて状態を維持する」

超低温で冷凍することで長期間保存できるため、治療開始前と治療開始後を比較できる貴重な検体になると言います。

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また、超低温冷凍庫は1台50万円前後。コスト面でも助かっているようです。

上島副技師長「買わなくて良くなったのでラッキーという思いはあります」

研究機関や医療機関で役立てられる超低温冷凍庫。熊本市によりますと、実はそれ以外の場所にもあるといいます。その場所とは?

熊本市感染症予防課 木村仁洋課長「動物園でも活用されている」

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冷凍庫がサイの命をつなぐかも

向かったのは福岡市動植物園です。その使い道は…?

福岡市動植物園 笠志帆さんミナミシロサイの糞を冷凍する目的で導入しています」

冷凍された糞が保管される場所は外部の人が立ち入れないため、園の担当者に撮影してもらうと、確かに糞が凍らせてありました。

なぜ糞を凍らせるのでしょうか?

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笠さん「ホルモンを計測して性周期を把握したり、妊娠結果を分かりやすくする」

福岡市動物園では、ミナミシロサイのオスとメス合わせて2頭を飼育。繁殖を目指していますが、サイは妊娠の把握が難しいと言われています。

しかし、糞の成分を分析すれば妊娠の兆候がわかることが明らかになりました。

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その成分の分析を担う岐阜大学に送るまで糞が劣化しないよう、超低温で保管する必要があるということです。

笠さん「すぐに妊娠したことが分かるので、早く準備ができると思います」

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大学から医療機関、動物園まで。新型コロナワクチンの保管に使われていた特別な冷凍庫が今、様々な場所で活用されています。