岸田政権は新段階にある「働き方改革」推進の看板を下ろしてはいけない。労働分配率向上や賃上げは、容易に達成できるものではない。働き方改革を不断に進めることにより付加価値を高め生産性向上を図らなければ達成不可能である。企業の付加価値を増大させることが、本来の自律的賃上げに直結することを踏まえるべきである。

 岸田政権では、分配戦略への転換を重視している。労働者や下請企業に対して成長の果実がしっかり分配されるよう、環境整備を進めていくとしている。同時に、賃上げの積極化を図る。賃上げを実施した企業へ税制上の支援を行うとした。

 労働分配率の向上や賃上げは、以前の政権でも重要課題として取り組まれてきたが、十分な持続的成果を得られずに終わっている。日本は、数十年にわたって賃金水準が低迷し、世界主要国に大きな後れを取り、相対的貧困化に突き進んでいるのが実情である。この結果、民需の拡大が遅れ、未だにデフレ傾向に悩まされている。

 働き方改革は、本来、労働者の労働環境改善に資する改革であり、企業にとっては規制強化に向かう傾向が強い。たとえば、改正労働基準法で新設した年次有給休暇の使用者による時季指定義務化により、企業側の負担は明らかに増大するだろう。

 しかし、これからの課題に挙がっているのは働き方改革による生産性の向上である。裁量労働制の拡大が好例であり、高度プロフェッショナル制度の利用拡大も重要な柱といえる。労働時間の長さに捉われない働き方を広げ、定着させることなどが新たな段階の働き方改革の狙いである。

 労働分配率は、企業が生み出す付加価値の労働者側への配分割合をいうが、いつまでも大きさが変わらないパイを分け合うのであれば、奪い合いでしかない。人件費以外の投資に回す付加価値が減少するのは、企業にとって望ましくないと思うだろう。

 今後も生産性向上、付加価値増大に向けた働き方改革の看板を下ろさず、新たなアイデアを出し続けることが、支持率にとっても重要である。