障害年金の請求手続きの代理の仕事をとおして、さまざまな人との出会いがある。ご本人だけではなく、本人を想う配偶者、兄弟姉妹、子供を想う父母、また、父母を想う息子娘たち。これまでキャリアを積んで働いていた妻が、突然、脳梗塞により半身不随となり、不自由になった身体のこと、これまでの仕事に就けないことへの不安から、何度も話合いをしたという夫からの相談もあった。発達障害の息子の今後の就労、生活が心配でしょうがないと話をする母もいた。障害年金の手続きだけではなく、年金と就労についても考えさせられる。

 近年、マクロ経済スライドによって給付水準が低下し、年金が増えにくい状態となっている。

 日本の障害年金の受給者数のうち、国民年金から支給される障害基礎年金の受給者数が多く、さらに、その受給者のうち基礎年金のみの受給者が約4分の3を占めている。所得について考えた場合、受給者の平均年金月額は、障害基礎年金の1級の場合約8.1万円、2級の場合約6.5万円である。

 疾病のため、仕事による収入を十分に得ることが難しく、障害年金の受給者であっても低所得の状態にあることは少なくない。障害年金を受給するほどの疾病を患ってしまうことは誰しも考えに及ばず、老後の資金を備え、老齢年金を受給するといった場合と少し区別が必要かと考える。また、疾病による治療・介護の出費も加わり、厳しい現状である。

 では、障害年金の受給に当たり、認定基準をみてみると、日本は欧米諸国と比べ、いくらか基準は緩やかである。

 欧米諸国では、実質的稼得活動の基準以上で就労している場合、年金給付の対象外とされている。障害者への差別化をなくし、福祉と一般との区別を明確にしているようだ。現在の日本では、障害者雇用促進法の拡充によって障害者雇用が拡大するとともに、コロナ禍における在宅勤務など多様な働き方が促進されている。「就労」は単に収入を得るためだけではなく、社会性、達成感、自己実現など人それぞれの目的がある。フルタイムで働くことができなくても、身体と調整を図りながら就労をすることは、各人の新たな目的を見出す手助けにもなるのではないかと思われる。

 年金と就労のバランスにより、安心と個々のライフスタイルが両立できればと願う。一期一会を大切に、年金に関することのみならず、ご本人やその家族に寄り添い、何かできることがあればやっていきたい。
  
なかがわ社会保険労務士事務所 代表 中川 京子【千葉】