労働新聞で好評連載中の書評欄『本棚を探索』から、2022年の上半期に公開した三宅香帆さんご執筆のコラムをまとめてご紹介します。

『言葉を失ったあとで』信田さよ子・上間陽子 著
カウンセリングを生業にする臨床心理士である信田さよ子さんと、沖縄県で非行少年・少女を相手に社会調査を続けてきた上間陽子さんが、「言葉を聞くこと」について語った対談集である。ふたりは性暴力加害に向き合い、その加害者と被害者の言葉を聞くことを仕事にしているなかで感じることを共有していく。

『この30年間の小説、ぜんぶ 読んでしゃべって社会が見えた』高橋源一郎・斎藤美奈子 著
はたしてこの30年間、小説は、物語は、そして日本は、いったい何をやっていたんだろう。読んでいると、そんな問掛けを思わず自分のなかで飴玉のように転がしてしまう一冊である。

『我が友、スミス』石田 夏穂 著
会社で働いていると、「あれ?」と思うことがある。あれ? あの人、あんな感じの人だっけ? 雰囲気変わった? と。プライベートのことは話さないけれど、きっと何かしらの変化があったんだろうな……と思わせる、見た目の変わりっぷり。

『田辺聖子 十八歳の日の記録』田辺 聖子 著
田辺聖子の没後、未公開であった女学生時代の日記がみつかった。1945年から47年にかけて、戦時中に青春時代を過ごした田辺聖子の、瑞々しい言葉たちが収録されている。本書は、その日記を1冊にまとめた著作である。

『スピッツ論 「分裂」するポップ・ミュージック』伏見 瞬 著
ものすごく売れていて、みんなが知っているようなバンドの曲を聴くと、「めちゃくちゃ良いけどなんでこの曲『みんな』に受け入れられてるんだろう……」と不思議な気持ちになることがある。みんなが良いって言うものは、もっと、ポップで、明るくて、正しくて、ノリの良いものなんじゃないんだろうか?

『平成転向論 SEALDs 鷲田清一 谷川雁』小峰 ひずみ 著
私は本書の著者と同じ年齢なのだが、「SEALDs」という名前のことはよく覚えている。なぜ覚えているのかというと、彼らの政治活動や言葉がSNSを通して伝わってくることそのものが新鮮だったのもあるし、同時に、彼らを人文学系の著名人たちが一斉に賞賛していたからである。

選者:書評家 三宅 香帆(みやけ かほ)
会社員としても勤務中。近著に『(読んだふりしたけど)ぶっちゃけよく分からん、あの名作小説を面白く読む方法』(笠間書院)。