清春×大森靖子という異色にしてディープな対バンイベントが6月12日、東京・渋谷CLUB QUATTROで実現する。両者ともに唯一無二のアンダーグラウンドなルーツを持ちながらも、メジャーの第一線で活動し、多くのフォロワーを生んでいる。そんな二人の初の対談をお届けする。お互いの歌や言葉やライブにおけるこだわりを語り合い、そしていつしか対バン当日のコラボについても話が及んだ。

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―お二人の関係性を知りたいので、お互いの存在をいつぐらいから知っていたのかを教えてください。まずは大森さんの清春さん歴から。

大森:小学生のときのスターです。テレビ番組でドラマの主題歌を歌っているのを観てました。みんな歌ってましたから。あと、勝手な縁でいうと、私がメジャーデビューしたとき、私は新宿LOFTプラスワンでライブをやっていたんですけど、その時、黒夢さんが新宿LOFTでライブをやっていて。やば! 私、黒夢さんと同じ新宿でライブやってる!ってファンと一緒に爆上がりして記憶があります。

―最近のご縁は?

大森:最近だとコロナ禍の前に渋谷でのソロライブにお邪魔しました。

―テレビで観ていた時と最近のソロのライブでは印象などは変わりましたか?

大森:一緒です。妥協せず隅々まだこだわる方だなぁと。

―では、清春さんの大森さん歴を教えてください。

清春:たぶん僕の方が知ってます。実は西森っていう僕のマネージャーが、もう震えるぐらい大森さんのファンなんです。西森はうちに入って15年ぐらいになるんですけど、最初はファンクラブの仕事をしてたんですよ。だから、当時は僕と交流がほとんどなかった。いろんな人が辞めていったり、会社が変わっていく中で、ここ10年以内にマネージャーになったんですね。でも、最初って好きな音楽についてとか話さないじゃないですか。うちに入ってきたぐらいだから、清春を好きだったと思うんですけど。だんだんと音楽の話をするようになって、ある時「大森靖子ちゃんって知ってますか?」って言われて。僕はその時は正直ネットで写真とかを見たことあるかもぐらいで。そこからまた年月が経って、ある日ツアーで北関東へ向かう移動車の中で、大森靖子プレイリストを延々リピートしてたんですよ。あと自分が気に入ってる映像とかを見せてくれたり。もう車中ずっと大森靖子が流れてました。

大森:オタ活の一環みたいな?(笑)

清春:オタ活というか、もう布教(笑)。で、だんだん僕がメロディを覚えてきて、あっ、これ知ってるとか、聴いた曲をネットで見てみたりとか、たまに大森さんがテレビで歌ってるのを観たりとか。あ、これ聴いたことある、あ、これもあるなってレベルになってきて。あとはマネージャーが大森さんのアルバムを買うと、ジャケット見せてくれるんですけど、それでピンクが好きなんだって知ったり。大森さんはグッチが好きなんですよとか、いろいろ教えてくれて(笑)。インストアライブの映像とかもたくさんあるじゃない。ネットで大森さんがお話してる映像は西森リコメンドで大体見てます。

大森:かなりマニアック(笑)。

清春:(笑)。何年か前「清春のライブをいろんな人に観せたい」というキャンペーンが西森と当時のメーカーであったんです。SHIBUYA PLEASURE PLEASUREでかなりの本数のライブをやっていた時期で、当時『エレジー』(2017年)っていうアルバムを出して、大森さんと僕は何の関係もなかったんですけど、お呼びしたいと。で、ライブを観てほしい窪塚(洋介)君と大森さんを別々の日にお呼びしたんです。そしたらちゃんと来てくれて、その時初めて会ったんですよね。



大森:そうです。それが初対面だし、初めてライブを観させていただいたときです。

清春:で、そのあと、僕も大森さんのライブに行きたいってなって、中野サンプラザでの弾き語りライブを観たんですが、本当にカッコいいと思って、さらにネットで大森さんの歌ってる動画を見るようになったり、移動車でも更に聴くようになりました。なので、俺の方が大森さんを知ってると思いますね。


“慣れ“の向こう側にあるもの

―今回の対バンのきっかけは何だったんですか?

大森:ライブの制作をしている方が同じ人なんです。その方がこの対バンを企画してくれて。

清春:その制作の人から言われたんですよね。たぶんマネージャーもいつか一緒に大森さんと清春さんがやってるのを観たかったでしょうし、僕自身もそれとは関係なくやってみたいなと。僕は女の子のアーティストとは、対談も対バンもあんまりしたことないので非常に楽しみですね。大森さんの曲はだいたい知ってるので(笑)。曲だけじゃなくお話してる様子とかもだいたいわかる。きちんとお話しするのは今日が初ですがもう見慣れてます。リアルか画面越しかの違いです(笑)。

―大森さんのことを知ってる中で、清春さんが大森さんの表現で琴線に触れる部分や、共鳴する部分はどこですか?

清春:大森さんのライブって、バンドスタイルだったり、キーボードと二人だったり、大森さんがアコギ一本で演奏したりとか、3つか、4つスタイルがありますよね。その中でも一人で演奏するときの様子が最強だと思いますね。弾き語りだと歌がよく聴こえるっていうのもあるんですけど、リズムとか僕が思う大森さんの特徴がよく出てる。歌の特徴がマスキングされずによく出ているのをご自分で知ってらっしゃるのかなって思って観ています。あと、間奏の時にストロークして、ちょっとお休みされている余韻とかも最高ですね。ずっと弾き続けてるわけじゃなくて。たぶん意識的にやってるわけじゃなくクセなのかもしれないですけど。僕が生で観たのはサンプラザだったんですけど、コードの余韻が会場に広がってて。なかなかあれは出せない。だって4〜50歳とかじゃないわけだから。大森さんの年齢でなかなかあの感じは出ないです。

大森:アハハハハ。

―大森さんは技術的なところではないレベルにすでに表現が達していると?

清春:技術的なところというより、アカデミックじゃないところ。アカデミックなところは最近の子はできるんだろうけど、逆に余韻とかって……。

大森:若い世代は、余韻はどんどんなくなってますね。よくアレンジャーの方もおっしゃるんですけど、ギターソロをなくしてくれとか、前奏はやめてくれとか、そういうオファーが多いみたいで。実際若い方のライブに行っても、映像が流れて、映像の方がストーリーになってて、それの主題歌みたいな感じで曲が始まるとか、そういうライブの構成が多いですから。確かに余韻はないですね。

清春:サンプラのライブを観たときに、その余韻感じたんですよ。余韻って慣れの向こう側にあるものなんですよね。場数を踏んで慣れていくとライブ進行とか、MCとかは誰でもできるんですよ。場数を踏めばけっこう余裕が出るからそこはできる。だけど、その向こう側の余韻が実はカッコいいんですよ。僕が好きな部分と、大森さんのファンの方が好きな部分は違うのかもしれないけど。僕はその部分がなんとなく理解できていて、そんな僕から見てると、一人で歌ってる、その佇まいや所作に、余裕の向こう側に余韻が嫌ほどある感じが、素敵だった。あんまりそういう風に思わないんですよ。男にも思わないし、女にも思わない。最近誰がいます? 女性で。

大森:自分と同じ感じだなって思う方はいないですね。

清春:まぁいないかもだね。あと、大森さんの歌詞も独特というか、歌詞の中で、自然といろんなことをカバーできてると思うんです。大森さんに憧れている女性へもそうだし、普通の女性にも刺さるだろうし。女性に限らず男性にもだし。あ、こういう人生だけじゃないんだって思わされると思う。セレクトする言葉というよりは、言葉の組み合わせの角度が凝ってますよね。歌い方と同じように組み合わせの角度で攻めてるなって感じします。


清春(Photo by Yoshihiro Mori)



「母音で歌いやすさが決まる」

―大森さんは来月から『KILL MY DREAM TOUR 2023』がスタートする中で、そのツアーでもバンド編成、大森さん+鍵盤、舞踏、一人での弾き語りのスタイルでライブを予定されていますが、現在ライブにおいて意識してやっていることは何ですか? また、去年10月にアルバム『超天獄』をリリースされましたが、直近の作品での言葉の選び方はどんなことを意識していますか?

大森:もともと弾き語りでライブ活動を始めたので、弾き語りで普通にいい曲を作って、5分ぐらいのバラードとかを作って、30分ぐらいのライブで聴いてもらおうと思うと、「めちゃくちゃいい声」とか、「めちゃめちゃ綺麗」とかじゃないともたないなと思ってた。でも、別にめちゃくちゃ声がいいわけでもないので、言葉の組み合わせで、例えばこの言葉が隣り合ってるとおかしいっていうのを繋げるようにずっと工夫していくのから始まって、今もそれは意識しています。あとは、ライブの場数を踏まなきゃっていうのが気持ちとて強かったんです。それで、もう4、50代の人くらいの本数はやったから(笑)。そのライブの経験の中で、対バンして、お互い影響し合って、“この人とだからこういう自分が出せたよね“ということや、“この人だから出せるぞ“っていう感じがあるので、わりと対バンはしたいと思ってるんです。でも、いざ誰とやりたいかなって思った時に、あまり同世代とやることがないので相手が思いつかなくて。それでライブ制作の方がすごく考えてくださって、清春さんいいんじゃない?って。できるんですかね?みたいな感じでした。

清春:僕もそうだよ。やってくれるのかな?っていう感じでしたよ。



―不思議な、そして異色の対バンですけど、何かとんでもないものが生まれる気がしますし、みんな観たい対バンだと思います。

清春:そもそも僕自身、あんまり対バンしてないもんね。ここ最近だと去年SIONさんと対バンしたぐらい。なかなか女性とはないですよね。

―当日の編成はお二人ともなんとなくイメージしてるんですか?

清春:うちは、辻コースケと栗ちゃん(栗原健)、畑崎(大樹)さんかな。楽器でいうとサックスとパーカションとギター。大森さんは?

大森:一人で弾き語りの予定です。

清春:ピアノの人と一緒の編成もいいですよね。

大森:そうなんですよ。少し考えます。

―編成も楽しみです。

大森:話していて思い出したんですが、渋谷のライブに伺った時に、帰り道ずっと“瑠璃色“って歌詞だけがすっごく残ってたんです。私は歌詞に“瑠璃色“って入れようって発想が絶対ないし、松田聖子さんの歌詞でしか聞いたことがなかったですし。瑠璃色かぁって。瑠璃色ってどんな色だろうってずっと思いながら帰ったのを覚えてます。

清春:「瑠璃色」って曲があるんですけど、そもそも歌詞を書く時にすごく言葉を調べるんですよ。言葉って普段使ったり、耳にしているものだけじゃなく、使われなくなった言葉もたくさんあるよね。あと、僕の場合は言葉の意味だけではなく、母音が大事なんです。母音で歌いやすさが決まるから。



大森:そうなんですよね。リズムにはまりやすいって言葉って思うと、ついつい同じ言葉になってくるかもしれない……。

清春:あと僕、嫌な子音もあって。“T“とか歌詞にあんまり入れたくなくてなるべく避けてるんです。あとは星の名前とか、花の名前とか、色の名前とか、いろいろ調べて、いいなって思うものをケータイに記録しておきますかね。おっしゃってくれた「瑠璃色」は原田真二さんの「CANDY」をオマージュした曲なんです。

大森:清春さんの鼻濁音ってすごいセクシーじゃないですか。その感じを、子音を自分で取り除いて作ってたんだっていうことに今お話しを聞きながら感動してました。

清春:子音が気に入らないっていうか、サ行とかをタイトにしていくと鼻が詰まっていく風に聞こえるんですよね。あと、マ行、ナ行もすごく気にしてますね。それから“ず“が“す“に聞こえたりとか、“ざ“が“さ“に聞こえたりとかも、いまだにすごく気にしてます。だからレコーディングが憂鬱(笑)。YouTubeの『街録ch』で大森さんのレコーディングの様子を見たんだけど、あ、こんなにすぐ録れるんだと思ってすごく驚いたんです。サラっと歌ってて。俺はこういうの絶対に無理だと思った。同じフレーズとか気に入らなかったら100回ぐらいやっちゃうからね(笑)。限界が来て、ソファーで寝ちゃうまでやっちゃいますね。ほんと気にしいなんで、サビの頭の一小節の一個の言葉を、何回も歌う。それだけで、下手したら2日とか。だから、あの早さにすごいなって思いましたね。

大森:気にしてないだけかもしれないです(笑)。

清春:そういう人もいるんだよね。CD聴いてて気にならない人。僕の思うその一人に大森さんは入ってますね。

大森:ピッチを合わせてみたりもするんですけど、違うなっていうか。合わせた方が、思い描いてたものと違うっていうのがあって。

清春:スピード感で歌う人だよね。スピードって言っても速いテンポじゃなくてね。スピード感で歌う人って、あんまり気にしないのかもしれないですね。長い時間歌ってきた結果、自然に自分で危ないところを察知するんだと思うんですよ。転ばないように歩いてるみたいな。大森さんの歌を聴いていて、そういうことをいつの間にか覚えたんだろうなって気がします。


ライブで伝えるための強度の加減

―歌に関して、清春さんも変化ってあったんですか?

清春:僕は、最初はいわゆるビジュアル系だったので、歌は別に下手でもいいやと思ってたんです。歌よりコンセプトを大事にしてたんですよ。例えば、曲のタイトルとか、バンド名は漢字とかね。英語じゃなくて、ビジュアル系の人がやらないような漢字で表記して。それって黒夢がたぶん初めてだと思うんです。そういうコンセプト中心でもビジュアル系ってある程度いけるんですよね。ライブも演奏以外のパフォーマンスで話題になるみたいな。で、34か35歳でソロになって、ギター始めたのはそれからなんですよ。そしたら、だんだん歌が気になってきて。圧倒的に歌の力が足りてないっていう、本能的な弱さみたいなものにいっときぶつかるんですよね。真っ直ぐ声が出ないとか。うわーって大きな声で圧倒できないとか。で、僕もライブが多い方だったので、ソロでやってる中でバンドを再結成したりとか、爆音の人たちと演奏したり、繊細な人たちともやったりと、いろんな環境で歌ってたんです。その中で、ちょっとは歌えるなって思ってきたのが、ここ5年ぐらいですね。今年55歳なんですが、50歳ちょっと前ぐらいから、ちょっと歌に自信を持てるようになった。そうしたら聴いてくれる人や周りにいてくれる人種がちょっとずつ変わってきたという感じですね。フェスとか絶対出るタイプじゃなかったんですけど、ちょっとだけ声がかかかるようになってきて出るようになったり.

大森:声って劣化していくものかなって思ってたので、50からのほうが歌えることに希望が持てますね。

清春:あ、僕、キーを高くしてるんですよ。黒夢が復活した時も、半音とか一音全部上げてるんです。

大森:上げる? 年齢があがってキーを上げる方ってめずらしいですよね。

清春:そうやって歌に関してはがんばって進化させてるんですけど、世間では清春=黒夢とかサッズとかビジュアル系っていう昔のイメージのままで、僕の今の感じの歌を聴こうともしないんですよね(笑)。

―確かに、一旦ビジュアル系っていう言葉で括られると何をしてもそういう評価しかされない問題あってありますよね。大森さんも何とか系とかで括られたりとかすることってあると思うんですけど本人的にはどうですか?

大森:世代的にかもしれないですけど、“〜系“っていうふうに思ってくださっている方って、ネットで好きって言ってる方なので。ライブに来てくださってる方は、ずっとそのままだったりとか、ジャンルとか関係なくアーティストのライブを楽しんでくださる方ですよね。清春さんのライブに伺ったときもそういう印象でした。だから、SNSでの声だけが可視化されてるのかもしれないです。それが嫌だって思う時は、ネットを見なければいいやっていう感じです。

―真実はライブにあると?

大森:そうですね。質問があるんですけど、さっき周りの人が変わったって言ってましたが、何かきっかけがあったんですか?

清春:何でだろう……。なぜかだんだん歌が褒められ始めたんですよね。若いころは歌に自信なかったんで、総合的に頑張ってますってよく言ってたんですよ。歌だけではなくて、歌詞とか作曲とかパフォーマンスとか、総合的に見てほしいっていつも言ってたんです。歌を聴いてほしいって言うようになったのは、ここ10年以内ぐらい。それまでフェスによく出ているようなミュージシャンとあんまり繋がりがなくて。何なら別の星の人達だと思ってたし、フェス自体が遠い異国の砂漠で行われてるみたいなイメージだった。けど、一昨年TOSHI-LOW君がやっている「New Acoustic Camp」に出た時にCANDLE JUNE君が気に入ってくれて、観た後すぐに楽屋来てフジロック出てくださいって言ってくれた。それで翌年はフジロックに出たんです。僕の場合は、歌ってはいたし、場数は多かったものの、歌の開花が遅咲きだったと思うんです。ライブパフォーマンスとかライブでの場慣れとかは自信あるし、歌ってなくても立ってられるとか、そういうのはあるんですけど。歌を聴いてくれっていうような発想じゃなかった。自信がなかったから。だんだん研ぎ澄まされていく中で、どんどん課題が生まれてくるじゃないですか。で、その課題をクリアして、今がある。僕は大森さんって、堂々と歌ってるなって思うんですよね。どうなんですか? 歌ってる時の気分って。

大森:弾き語りで、セットリストを決めずに即興で出て行くので、ずっと今何が求められているかとか、今何を言えば刺さるとか、今こういう気持ちだけど、これを伝えるにはどういう強度でいけばいいのかとか、そういうことしか考えてないです。強かったらダメな時とかもあるじゃないですか。なのでそういうことをずっと考えてます。

清春:間とかは考えていないですか? 曲と曲の間じゃなくて、一曲の中で。わかりやすく言うと、スローダウンしたりとか。

大森:間も、取れれば取れるほどいいんですけど、それが自分のペースになったら、ただダルくなっちゃうんで。

清春:相手の空気を読みつつ?

大森:そういう気持ちで取ってますね。取ればいいってもんでもなくて、結構難しいです。

清春:客席を見てると、ファンの人、泣いてるもんね。

大森:そうですね。泣かせるっていう職業だと思うので。

―会場が大きくなると客さん一人一人の個性やエネルギーも違ってきますよね。どこに向けて強度を強めたり弱めたりするんですか?

大森:たくさんの人がいるところでも、あんまりこうだってしないようにはしてますね。何を持って今日は来る人が多いのかとかは考えますけど。でも多数決にもしたくないから、あの人がいる、あの人がいるっていうのを目視でやったりしてます。なるべくその人の生活を想像するようにしてますね。

清春:あとは空間支配ですよね。僕も種類は違うけど、そこは自信がある。もう会場の色が大森靖子になってますよね。もちろんワンマンだからそうなってるのかもしれないけど、ワンマンでもならない人もいるんですよ。それは別にセットや照明がどうこうとかじゃないじゃないんで。佇まいと、ムードでしかないというか。さっき言った余韻がムードだと僕は思ってるんです。ステージに出る前って余韻ってないじゃないですか。でも大森さんがステージに出て行った瞬間、すぐ余韻が出てた。あんまり見たことないんですよね。

―しかも、ここ最近はそういうアーティスト自体が減ってる気がします。

清春:乱暴な言葉だけど、強い人がいないですよね。

大森:立つだけで説得力みたいな人ですよね?

清春:時代なんだろうな。

―だから、大森さんが、その最後の世代だし、しかも稀有な存在なんでしょうね。

大森:そうかもしれない。下の世代とかを見てると、そうかもしれないですね。


大森靖子(Photo by Yoshihiro Mori)



コラボレーションの可能性

―今回の対バンで、会場の渋谷CLUB QUATTROがどんな空間、余韻に包まれるのか楽しみですが、お二人は渋谷CLUB QUATTROでの思い出はありますか?

清春:CLUB QUATTROはたくさんやったことあるので、思い出もいっぱいあります。

大森:私も初めてワンマンライブをやったのがCLUB QUATTROです。

清春:気になるのが、大森さんのファンの方に、あれ?違うなって思われるかもなって。ファンの方って優しいですか?

大森:優しいです。

清春:うちのファンもめちゃくちゃ優しいよ。

大森:“大森靖子は自分のもの“っていうのがあるので、清春さんのファンに大森靖子が受け入れてもらえないことって、自分を受け入れてもらえないこととちょっとイコールになるので。その逆もしかりだと思うんです。だから、理解してやるぞっていう気持ちで来てくれるんだと思うんですよね。

―ちなみに、お互いの曲を一緒にやる予定は?

大森:え!やりたい。

清春:でも、男女で歌う時って、キーはどうしてるんですか?

大森:私はなんでも大丈夫です。合わせます。

清春:僕は結構キー高いから。そこがネックになる気がするなぁ。

大森:なんとかします(笑)。

―清春さん的に、この曲を一緒にやってみたいとかは?

大森:そこは……西森さんセレクト?(笑)

清春:大森さんの歌難しそう。

―逆に大森さんが清春さんの曲を歌ってみたいとかはないんですか?

大森:歌いたいです! 歌いたいけど、私めちゃめちゃ子音を強く歌っちゃうんですよ(笑)。気をつけます。

清春:うちのファンは優しいと思うんですよ。でもファン同士が交わるかどうかわからないですよね(笑)。世代も違うし。親子ぐらいになっちゃうんじゃないかな。

大森:結構おじさん達もいます(笑)。

清春:どういうおじさんがいますか?

大森:音楽好きですかね。

―大森さんのファンも世代的には、清春さんの存在は絶対知ってるはずですよね。

大森:そうですね。みんな大切な思い出の一つや二つ、絶対あるはず。

―でも清春さんがそこを裏切って、みんなが知ってる曲をやらない可能性がありますから(笑)。フジロックでもいわゆるヒット曲は全部封印して、歌の力だけで勝負してましたもんね。さて今回は……?

清春:今回はIWGP(『忘却の空』)でもいいですよ。一緒に歌うことってあんまりないから、僕の人生の思い出に残ることは決定ですね。



大森:逆に玉置さんとか、歌います?(笑)

清春:玉置浩二さんの曲を一緒に?確かにお互いの曲じゃないっていうのもいいですよね。

大森:それもありです。

―当日のコラボレーションが楽しみですね。そろそろ時間なのですが、お互い何か聞きたいことはありますか?

清春:めちゃくちゃ遠い未来は何になるんですか?

大森:私がですか?

清春:うん。もっと先の将来で。

大森:私、継承したい欲が強くて。自分の技術とか、表現のコツとか。なので、もうちょっとそこを強くしていきたいですね。強くしながら歌い続けたい。

清春:アイドルのプロデュースはやってるじゃないですか。ジャンルが違っても大森さんのような本格的な女性シンガー、立ち込める感じの人を世に送り出すみたいな感じですか?

大森:それってやればやるほど難しさもあるんですよね。やっぱり立つだけの説得力ってことは、本当は才能なんだなって。教えるものでもないかって。

清春:僕も後輩が結構出たんだけど、なんで俺を聴いててこうなっちゃうの?ってなってく人が多くて。でもそういうのたまにはあるんですよ。大森靖子ちゃんを聴いてたのに、こうなっちゃったの?とかありますよね?

大森:ここを抽出したんだ!みたいな(笑)。正直ありますね。

清春:不安になっちゃうよね。自分がやってきたこと、自分が作り出しものが、あれ? そこに行っちゃったの?みたいなこと。

―ではあらためて最後に対バンの意気込みを。

清春:意気込みって、楽しみぐらいしかないですよね。

大森:ステージは1時間ずつぐらい?

―と、聞いてます。

清春:大森さんあとでやってくださいね。僕が先にやるんで。

大森:なんでですか?

清春:レディーファーストじゃないですから、僕は。

大森:じゃないんですか?(笑)

清春:年数的にとか関係ないですから。

大森:アハハハハ! なんで先にやりたいんですか?(笑)

清春:なんか、先の方が緊張しないなと思って。たぶんキャリア的に、僕が後の方が当たり前になっちゃいますよね。前に曽我部恵一さんと対バンしてたけど、曽我部さんの時はどっちが先でした?

大森:私が先です。

清春:うそ!

大森:だいたい私が先です。

清春:お互い二回ずつやるとかね(笑)。30分、30分、30分みたいな。転換ばっかりになるけど(笑)。

大森:楽器をステージに置き放しにしていただいて大丈夫ですよ(笑)。

―(笑)。では大森さんも意気込みを。

大森:同じです。楽しみしかないです。

清春:でも今日でちょっと気が楽になりましたね。お会いしたことはあってもここまでちゃんと喋っていなかったので。あとはライブだね。本当に楽しみです。


Photo by Yoshihiro Mori

SHIBUYA CLUB QUATTRO 35TH ANNIV.
“NEW VIEW“×"Quattro Mirage"
清春 × 大森靖子
 
2023年6月12日(月)東京・渋谷CLUB QUATTRO
開場18:00/開演19:00
チケット一般発売中

e+
https://eplus.jp/sf/word/0000158462
 
チケットぴあ
https://t.pia.jp/pia/ticketInformation.do?eventCd=2316267&rlsCd=001
 
ローチケ
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SHIBUYA CLUB QUATTRO 35TH ANNIV.
https://www.club-quattro.com/shibuya/shibuya35th/