TVアニメ「ぼっち・ざ・ろっく!」の世界に命を与えたキャストへのインタビュー。ギタリストの後藤ひとりを演じた青山吉能、ベーシストの山田リョウを演じた水野朔。作品に登場するバンド、“結束バンド“では作詞・作曲を担当するコンビということもあり、音楽に寄せてフォトシューティングを敢行。グランジver.の青山+水野のいつもと異なる表情とともに、二人がたっぷり語った「ぼっち・ざ・ろっく!」愛をチェックしてほしい。

【別カットの写真を見る】青山吉能、水野朔

※この記事は現在発売中の「Rolling Stone Japan vol.22」に掲載されたものです。

海外のファンからの反響

ー最終回が終わった今も反響が凄まじいですよね。率直に今の心境はどうですか?

青山 アニメ放送中も、いろんな方から見てるよって言っていただいてたんですけど、終わってからさらに盛り上がってる感じがあるんです。多分それって、結束バンドのアルバム(『結束バンド』)や作品のBlu-ray&DVDが世に出たりしたこともあるのかなと思っていて。例えば、何かのチャートで1位になったという結果を目の当たりにして、こんなにたくさんの人が見たり聴いたりしてくれてるんだと、初めて実感できたというか。「ぼっち・ざ・ろっく!」っていう作品が、時代の真ん中に立っていることを、より知らされた感じです。

水野 アルバムが出てから、「見たよ」って声だけじゃなくて「アルバムを買ったよ」って報告もいただけて、あと配信チャートやカラオケのランキングにも結束バンドがいるんですよ。そういったことで世の中の反響を身近に感じられて、めちゃめちゃうれしいです。

ーYouTubeのコメント欄には海外の方からのコメントもありますよね。

青山 ありますね。Instagramでも、海外の方からのコメントがすごく増えました。

水野 増えましたね。

青山 分からない英単語があっても「BOCCHI THE ROCK!」だけは読めるので、「ぼっち・ざ・ろっく!」が好きなんだってわかる。海外でも「ぼっち・ざ・ろっく!」って呼ぶわけだから、面白いですよね。ぼっちちゃんが海外でも受け入れられるキャラクターになってるのが不思議です。「ぼっち」って、“1人“って意味ではないじゃないですか。もっと孤独感がある言葉だから。今後「Bocchi」ってワードが海外のミームになっていくのかなって思うと楽しみです(笑)。

水野 うれしいですね!

青山 誰かに指差されて「ぼっち」って言われたらいい気はしないけど(笑)。そういう新しい文化が、まさか「ぼっち・ざ・ろっく!」から生まれるとは思ってなかったので、うれしいです。
水野 私も海外のサイトで「ぼっち・ざ・ろっく!」がアニメランキングの1位になってるよってことを、知り合いから教えてもらいました。私は洋楽が好きで、歌詞を全部理解してるわけではないんですけど、曲がカッコいいから聴いてる。それと同じように海外の人で「ぼっち・ざ・ろっく!」のアニメを見ていない人でも、音楽だけ聴いていいなって思ってくれている人もきっとたくさんいると思うんですよ。そう考えると音楽の力ってすごいなって感じます。

ー英語だと他に「Geek」って言葉はあるけど、“陰キャ“の概念を海外の人に説明するのってちょっと難しいですよね。

青山 日本ならではですよね。押し入れとかも日本の文化だし。そういうのが広まるきっかけになってる気がします。

水野 カップ酒もですよね、きっと(笑)。

青山 確かに。ボトルネック奏法はあれど、カップ酒奏法はない気がします。

水野 ないですよね(笑)。

青山 海外の人はスミノフの瓶で弾いたりするんですかね。

水野 カッコいい(笑)。

青山 一気におしゃれになる(笑)。

水野 日本のお土産で「鬼ころし」を買って帰る外国の方もいるかも。

青山 あー、確かに! 好きになってくれるといいな。


バンドカルチャーとの接点

ーそもそも二人は「ぼっち・ざ・ろっく!」に出演するまで、バンドやライブハウスのカルチャーと接点あったんですか? 

青山 主人公のぼっちちゃんはバンドを全くやったことがないし、人気者になれるかどうかって観点で音楽を聴いている子じゃないですか。1話(「転がるぼっち」)で伊地知虹夏ちゃんに連れられてライブハウスのSTARRYに入った時、「怖そう」っていうのが第一声にあったんですけど、同じことを私も思ってました。バンドをやる人って、どこかちょっと不良っぽいというか。見た目も派手だし、気軽に近寄れないかも……みたいに。その辺はぼっちちゃんと似通っていたと思います。

ー青山さんはYouTubeでギターを弾く企画(「ギターヒーローへの道」)以前はギターを触ったことはなかった?

青山 全くなかったです。あの企画でギターを渡されて、「青春コンプレックス」を弾けるようになりましょうって。マジのスポ根企画です。アフレコは全部終わってたんですけど、ぼっちちゃんがどのくらい天才ギタリストなのかっていうことは分からない状態でスタートしたんです。





水野 私はギターの経験があって。小学生の頃、ロックをやっていた方にギターを教えていただいていて、初めて触ったのがエレキだったんですけど、そこからギターにハマりました。ベースも1回やってみたことがあるんですけど、弾けるようになるまでに時間がかかってしまって、なかなか続かなかったんです。でもギターは割とスムーズに弾けるようになって。高校生の時に一瞬バンドに入ったことがあるんですけど、田舎だったので練習する場所が少なくて、でもバンドのメンバーやスタジオの店員さんたちとは仲良くしてました。その時に感じた、ロックのバンドをやってる人ならではの共通する空気感というか、それって虹夏と山田リョウの関係にも似てるなって思ったんです。リョウさんって、他人からすると何言ってるんだろうって思われてしまうような突拍子のないことを急に言ってしまうんですけど、虹夏とはちゃんと会話のラリーができている。家族感が強いイメージですよね。

ーなるほど。水野さんがギターを習っていたりバンドをやったりしていた経験が、作品にも活かせたんですね。

水野 そう思いますね。いつか経験として活かせたらいいなと思っていたところもあったので、やっててよかったなと思いました。それこそ、文化祭でも1回弾いたことがあって。

青山 まさにじゃないですか!

水野 クラスの女の子と、それこそガールズバンドみたいな感じでした。ドラムを叩ける子がいて、その子が、私がギターを弾けることを知ってくれていて、一緒にやろうって言ってくれたんです。ギターとドラムとキーボードの編成で、ギターボーカルを私がやらせていただいて、1回だけやったことがあります。

青山 カッコいい! そっち側の人間だ。

水野 違いますよ(笑)。でもめちゃめちゃ緊張しました。アニメで描かれていた文化祭ではたくさん人が来てたじゃないですか。なかなかあそこまで人が集まることってないと思うので、結束バンドは本当にすごいなって思いました。

ー後半のエピソードに出てくる文化祭、よかったですよね。自分も高校の時に文化祭でライブをやったことがあるので、作品で描かれていた緊張感やワクワク感、当日の雰囲気とかにも懐かしさを感じました。

青山 感動しました。最終話「君に朝が降る」はキャスト全員で見て。普通だったらアニメってオープニング曲やアバンタイトルから始まるんですけど、第12話は演奏からドンって始まるじゃないですか。「私たち今、秀華高校の文化祭に来たんだ」って、見てる人が一気に観客になれる装置になっていることにまず感動して。そこから演奏シーンのなかに、学校のシーンだったり、ぼっちちゃんが隅っこでナメクジになってたシーンが背景として描かれる。「ぼっち・ざ・ろっく!」ってぼっちちゃんの成長物語だけど、結束バンドとしての成長物語も併走してて、どっちかのバランスに行き過ぎないのがすごくいいなと思いました。普通にボロ泣きだったよね。





水野 はい。泣きました。

青山 マジでみんな泣いてて。でもみんな画面を見すぎてて、全員が全員、自分1人で泣いてるって思い込んでたんです。ぱってCMに入った時に、みんな泣いてることに気づくっていう。すごい面白かった。卒業式みたいだったな。

水野 結束バンドのアルバムの歌詞カードに、メンバーそれぞれを表す色の丸が4つ描いてあるんですけど、ページをめくっていくと3人はどんどん近づいていくのに、ぼっちちゃんのカラーだけ近づけなくて、でも最終的には4つが近づくって仕掛けがあるんです。私は最終話の文化祭の映像を見た時に、まだやっぱり孤独感があるんだなと思って。

青山 皆からちょっと離れてる。

水野 そうなんです。それを見た時にそのことが頭に浮かんで、ぼっちちゃんはまだ1人の気持ちなんだって思ってたんですけど、お話自体はその後も日常は続いていくっていう終わり方だったじゃないですか。それが最終的には4人が一緒になることを表している気がして、エモ!ってなりました。

青山 (笑)普通だったら文化祭ライブの映像でバーンって終わらせるのに、それをAパートで終わらせて、Bパートで楽器を皆で買いに行くシーンを持ってくるところが、台本をいただいた時から意外に思っていて。バンドマンにとってライブは特別なものだと思うんですよ。その特別なことのために、いつもの日常があるというか。あれで終わらせることによって、結束バンドはまた新たな特別に向かっていくんだろうなって想像できる。ライブのシーンで終わっちゃったら、特別なまま終わっちゃう。でも、特別なことが待ってるかもしれないって希望を想像できる余地が残っているのが、マジで神だなと思って。私たちが何かやったわけではないんですけど、本当にすごいなって思いますよね。

水野 ライブ映像で泣いて、日常で笑って、最後の終わり方でまた泣いて。

青山 「今日もバイトかぁ」ってセリフで終わるアニメ、ない気がする。あれが自分的には最高な最終回だったなって思います。


Photo by Mitsuru Nishimura



想像を超えてきた、アニメーションの表現

ー「ぼっち・ざ・ろっく!」のキャラクターたちの多彩なデフォルメも可愛くて好きなんですが、アフレコの時は皆さんまだ目にされてない状態なわけですよね。実際にアニメーションになったものを見て、どうでしたか?

青山 めっちゃビックリしました。一応台本には、上の方にト書きで、「後藤ひとりがポリゴン風になって、宇宙の果てへ飛んでいく」みたいに書いてあるんですよ。どういう意味なんだろうっていうト書きがめっちゃ多くて、でもどうにかなるのかって思って放送を見たら、本当に台本の通りになってて。

水野 (笑)すごかったですよね。

青山 ぼっちちゃんが、父・母・妹・犬でチケットノルマの振り分けを考えるシーンも、「トランス状態みたいな感じ」って書いてあったと思うんですよ。でも、まさかあんな映像になるとは思ってなくて。アフレコをする時は、音響監督の藤田亜紀子さんも私もきっとこうなるんだろうって予想のもとにいろんなお芝居を試していくんですけど、藤田さんの後ろに毎回必ず斎藤圭一郎監督が座ってらっしゃって、「この絵はこうなる予定なので、こうしてください」みたいな指示を出してもらっていました。

水野 アニメ放送中の結束バンドのLINEがすごかったですもんね。「なんだ今のは!」って。

青山 ね。急にハニワが走り出したり、メンダコみたいになったり、たこせんが実写だったり。「今のたこせんって実写だったよね !?」みたいな(笑)。こんなことアニメで許されるんだって手法がいっぱいあって、それも人気の一つだと思います。

水野 そうですね。もともとアニメ好きでいろいろ見てますけど、私も初めて見ました。衝撃的でしたよね。

ー想像を超えてきたと。

青山 そうです。軽々と超えられちゃって。言葉選びとか虹夏ちゃんのツッコミも面白くて、アフレコも一筋縄では行かない部分もあったので、毎回かなり時間をかけて録ってたんです。絵がない状態で声だけ聞いても絶対面白いって思ってもらえる自信はあったので、そこに面白い絵がついたら、めちゃくちゃ面白いに決まってるじゃないですか。そこに関しての自信はあったかもしれないですね。楽しかった。

水野 楽しかったですね!

ーぼっちちゃんがSICK HACKのライブを見てるシーンのト書きも凄かった?

青山 あれもアフレコする直前で、監督から「台本に乗り切らないから、これ読んでください」って、A4の紙3〜4枚渡されて読むって感じでした。

ー曲に対するぼっちちゃんの評も的確でしたよね。評論家みたいで(笑)。

青山 ほんとに(笑)。ライブハウスの後方で腕組みながら語ってる、みたいな。

ー自分の声がアニメーションと合わさった時にどうなったのかを見るのは、声優さんならではの醍醐味の一つじゃないですか。

水野 そうですね。自分たちがやったことが絵になって生かされ、さらにいいものになってるっていうのは、すごくうれしかったです。

青山 第8話(「ぼっち・ざ・ろっく」)のライブで「ギターと孤独と蒼い惑星」を演奏した時、ヨレヨレだったじゃないですか。あれはボーカルの喜多郁代役の長谷川(育美)さんが、アフレコでセリフを録る流れで急遽ボーカルを録ったので、現場もすごく緊張感があったんです。ドラムもなんかもたついてるし、ギターも全然合ってない。歌も、聴いていてハラハラする感じが表現されてる。あれはアフレコの場で長谷川さんが、「今日歌える?」って突然言われて、「え、今からですか?」「うん、譜面台持ってくるから」って、アフレコブースで歌詞と譜面台を渡されて、オケが流れて、はい!って歌ったファーストテイクが使われてるんです。私たちもそれを横で見てる。頑張れも言えないし、ただ目で見てるしかないみたいな。すっごい緊張感があって、私たちは歌わないのに手が震えてるし。その時の空気感がアニメでも伝わってきて、いろんな人がもう見れないって(笑)。



水野 (笑)。

青山 自分も心がざわざわするくらいリアリティがある。

ーそんな舞台裏があったんですね。

青山 お芝居へのこだわりもすごかったです。さっきも言ったんですけど、めちゃくちゃ時間かけてましたし、この作品、とりわけプレッシャーがすごくあって。後から聞いたら、音響監督の藤田さんが、ぼっちが何事にも怖がってる様子をリアルに出したくてとおっしゃってて、納得しました。音響監督が藤田さんでよかったなって思います。藤田さんじゃなかったら多分、あの空気感は生まれてない。みんなちょっと緊張してるんですよ。あ、藤田さんだ、みたいな。

水野 そうですね。いい意味でですよ。

青山 そう。そういうのも相まって、リアリティが生まれていった気がします。そんななかでも、リョウさん役ってのびのびやらないといけないじゃないですか。でも実は、キャストの中でも水野朔が一番年下なんですよ。あの奇人を演じるのはどうだった?

水野 他のキャストさんに比べて割と自由にやらせていただけた感があって。最初こそ「リョウはこういう子だから」って指摘はいただいてたんですけど、途中からほとんどなくなったんです。リテイクはあったとはいえ、あんまり突っ込まれることがなくなって。リョウのなかでも大事なシーン、ぼっちに歌詞を伝えるシーンとかは、いろいろ指摘をいただいてやっていたんですけど、日常のシーンで指摘されることは少なかったかもしれないです。そのおかげでのびのびできて、藤田さんにも褒めていただけました。褒められるとうれしくなっちゃうので、そこからは自分のなかでもしっくりくるリョウさんを演じられたんじゃないかなと思います。

ーリョウさんはどんな時もマイペースで、怖がらなさそうですもんね。

水野 そうですね。ドンとしてる。私もけっこうマイペースなので(笑)。

レコーディングやアフレコで込めた想いが「音楽」に

ー結束バンドのアルバムはオリコンチャートで1位になって、サブスクでもたくさん再生されてますよね。リスナー目線でこのアルバム、どうですか?

青山・水野 最高です(笑)。

青山 マジで最高。制作陣のなみなみならぬ自信が、演者にも伝わってくる。ハードルって一度上げちゃうと下げにくいから、そんなに上げて大丈夫かなって思ってたんですけど、もっと上げてもよかったなって思うくらい、ほんとにいいアルバムだと思います。アニメソングというカテゴリーを抜きにしても、すごくいいです。

水野 私はリョウ役としてほとんどの曲でコーラスを入れさせていただいてるんですけど、事前に収録された長谷川さんのボーカルを聴きながら、毎回レコーディングに臨んだんです。歌のフレーズのアクセントも、できる限り長谷川さんに寄せるようにしていて。長谷川さんもすごく気持ちを込めてレコーディングしてらっしゃるので、毎回しっかり聴いて、その気持ちに添えるようにコーラスさせていただいたんですけど、唯一「フラッシュバッカー」の時だけ、自分が歌いたいようにコーラスしていいよって言われたんです。「フラッシュバッカー」って割とテンポが遅めの曲調だったので、曲のニュアンスの問題だと思うんですけど。



青山 リョウとしての自我みたいなものが収録されてるってことですね。それは熱いな。今すぐ聴き返したいですね。

ーボーカルが先に録った音源に合わせるって、リアルにバンド気分を味わえますね。

水野 はい(笑)。ミックスとかされてない生歌の状態で。育美さん(長谷川)、めちゃめちゃ上手です。

青山 ボーカルが強すぎる、あまりにも。

水野 すごいですよね。本当に。

青山 私は「転がる岩、君に朝が降る」しか歌ってないので、アルバム収録曲の他の13曲がどんな曲で、どんな感じで来るのかを全く知らなかったんです。アフレコで初めて、「あのバンド」ってこんな曲なんだとか、「星座になれたら」って神曲じゃん!って、お客さんとして知ることができて新鮮で楽しかったですね。

水野 私は一足先に聴かせていただいて。

青山 うらやましい。曲作りは2〜3年前から行われてたみたいで。私、こんな神曲を、2〜3年も人に黙っておけない。

水野 確かに(笑)。

青山 私、こんな曲作ったんだけどって、絶対自分の個人ライブとかで話したくなる。なのにみんなすごい、長谷川育美すごいなって思います。



ー青山さんと水野さんは、劇中ではソングライティングを担うメンバーですよね。

青山 そうなんですよ。今回のアルバムの歌詞を見てると、これ、ぼっちちゃんが考えたんだって思います。実際の作詞はZAQさんや樋口愛さんたちなんですけど、でもみんなぼっちちゃんとして書いてくださってる。だから、ぼっちちゃんの“中の人“が今この世に何人かいることになるんですけど、それがすごくよくて。バンドならではというか、誰かがつくった言葉じゃなくて、自分たちがつくった言葉を自分たちで演奏する。その付加価値だけでも神曲って言ってもいいのに、曲がいいから、そんな付加価値がなくったって評価されていることもよくて。もういい、いい、いいんですぅ……(泣)。

水野 (笑)。

青山 全然言葉が出てこない。ほんとに、めっちゃいいなって思ってるんです。


Photo by Mitsuru Nishimura


Photo by Mitsuru Nishimura

ーいろんな方がぼっちちゃんに寄り添ったアプローチで歌詞を書いてくれて、そこに結束バンドとしてのストーリーが加わっていくことで、ぼっちちゃんへの解像度がより上がるんじゃないですか?

青山 そう思います。特に最終回で披露された曲(「忘れてやらない」「星座になれたら」)は、誰に向かって書いてるんだろうって想像するとより芝居に熱が入りました。例えば、ぼっちちゃんが喜多ちゃんと出会って、喜多ちゃんのことを思いながら書いたのかなとか、ぼっちちゃんの想いだけじゃなくて、リョウさんからの「もっとこうした方がいい」って意見もあったのかとか、虹夏ちゃんはみんなの母みたいな存在だから、これがもし喜多ちゃんじゃなくて虹夏ちゃんに書いてる曲だったらどうだろうとか想像するだけで、ごはんが3杯食べられるというか。ストーリーの中ででき上がった曲でもあるので、作品のファンの方にそういった意味でも曲を楽しんでいただけて、いろんなところで考察とか解釈を目にするんですけど、私はそういうことも期待してアフレコに臨んでいたので、そうやって楽しんでもらえてることがすごくうれしいです。

ー水野さんは「カラカラ」でボーカルを担当していますけど、作詞・作曲はtricotの中嶋イッキュウさんですよね。

水野 はい。変拍子から入る曲で、初めにいただいたのがイッキュウさんが歌ってらっしゃる仮歌だったんですけど、仮歌の時点ですでに完成していて(笑)。できる限りイッキュウさんの歌い方に寄せて歌おうとしたんですけど、ちょっと気だるげな感じがリョウさんとしてもマッチするというか、歌詞にも意味があるので、それこそよっぴーさんがさっきおっしゃっていたように、虹夏に向けて歌っていたらこんな感じだとか、いろいろ考えながら歌わせていただきました。“前借りしてるこの命を 使い切らなくちゃ“ってフレーズがとっても好きで。リョウさんって掴みどころがないけど、バンドに対してはちゃんと信念を持ってやっているところがあるんです。虹夏の夢も含め、リョウさんはみんながどういう気持ちでバンドをやっているのかしっかりわかっているんじゃないかなと思いながら歌わせていただきました。サビに入る前のところも1番と2番で変わっていて、感情の入れ方も少し違うので、そういう些細なところにも気づいてくださったらとてもうれしいです。

ーtricotのTwitterでもこの曲についてツイートしてましたよね。

青山 動画もあげてらっしゃいましたよね。

水野 セルフカバー的な。うれしかったです。

結束バンド「カラカラ」をtricotがやってみた
tricot tried to play kessoku band - "Karakara".#ぼっち・ざ・ろっく

pic.twitter.com/muAjhfMc4F — tricotトリコofficial (@tricot_band) December 29, 2022



“ぼっちちゃん“の歌声、青山吉能のボーカル

ー青山さんは、ASIAN KUNG-FU GENERATIONのカバー(「転がる岩、君に朝が降る」)っていう、また難しいミッションに挑戦されていますよね。

青山 そうですね。かなり意味の重いものになったと思います。書き下ろされたわけではない、すでに世界観ができあがっている曲をカバーするって、どういう意味を込めたらいいんだろうって思って。でも歌詞を見れば見るほど、この曲があって「ぼっち・ざ・ろっく!」って作品をつくったのではないかって思うくらい、あまりにも後藤ひとりでした(笑)。この「ぼっち・ざ・ろっく!」のプロジェクトは、キャラクター性というより音楽性をすごく大事にしてるプロジェクトでもあったので、ミュージカルにはしたくなかったんです。後藤ひとりらしさはありつつも、曲のよさが失われてしまうことは避けたい。でもそこを大事にしすぎると全然後藤ひとりじゃない。結束バンドと後藤ひとりの成長物語なのに、後藤ひとりとして歌わないのはどうなんだって葛藤がありながら、あの「転がる岩、君に朝が降る」が生まれました。

なので、あれをもう一回やってくださいって言われてもできないと思います。それはプロとしてどうなんだって話なんですけど、アフレコもけっこう追い詰められながらやっていた部分もあったので、レコーディングもそういう気持ちでした。自分なのか後藤ひとりなのかわからない、ふわふわしたまま帰る、みたいな。今もそうなんですけど、後藤ひとりをやってると、後藤ひとりになってしまって。言い淀んだり、おはようございますが言えなくなったりするんですよ。あ、え……えっと、みたいに。

水野 うんうん。

青山 (笑)後藤ひとりが入ると毎回そうなってしまって、このレコーディングが終わった後とかも社会性を失ってまともに家に帰れなくなりそうなくらい、自分自身に後藤ひとりを降臨させて歌った感じがします。

水野 よっぴーさんの歌は元々聴かせていただいていたので、歌がとてもお上手なのは分かっていたから、この曲が流れる最終回のエンディングをとても楽しみにしてたんです。アニメで初めて聴いたんですけど、一声目を聞いた瞬間に「ぼっちだ!」ってなったんですよね。

青山 わあ、うれしい!

水野 ぼっちが歌ってるって思いました。そのくらい入り込んでらっしゃったってことですよね。

青山 そう言っていただけてうれしいです。本当に。

ー後藤ひとりとアジカンの曲と、青山さんのパーソナリティ全部が絶妙にシンクロしてる感じがありました。

青山 そうなんですよ。細い糸で繋がり合ってる感じがすごくしました。ASIAN KUNG-FU GENERATIONの後藤(正文)さんのnoteやPodcastとか全部チェックさせていただいたんですけど、精神性が音楽にすごく出ていると思って。今回はカバーだったので、原曲へのリスペクトだけでなくクリエイターに対するリスペクトを絶対に失っちゃいけないと思って歌いました。この野郎って言われなくてよかったって、今は一番そこに安心してます(笑)。

ーラジオ番組「ぼっち・ざ・らじお!」で、この曲を歌うにあたって、ぼっちちゃんはバンド経験がないから、肺活量もあんまりないだろうってことを意識して歌ったって話してましたよね。そこまでこだわってたんだなと思って。

青山 カラオケとかも行ったことがないだろうし、フェイクとかも絶対やらないじゃないですか。それでちょっとやっつけ感みたいなフィーリングを出したりとか。それはまさに音楽制作の岡村弦さんのディレクションの賜物だと思います。

ーそういえば「ぼっち・ざ・ろっく!」とヤマハのコラボの配信も見ましたけど、青山さん、ドラム初挑戦であんなに上手に8ビート叩ける人、いないですよ。ミュージシャンとしての才能もあるんじゃないですか。

青山 ほんとですか! やれって言われて(笑)。

ー(笑)やれって言われてできるのがすごいです。

青山 番組的にやらなきゃヤバイじゃないですか。生配信だから。

水野 確かに生配信だったけど(笑)。

青山 でも楽器屋さん、めちゃくちゃ楽しかったです。教則映像とかもポチってボタンを押せばすぐ流れるシステムだったりして、初心者にも優しい。というか、勝手に私が怖がってただけで、もともと優しかったのかもしれないですね。皆さんもぜひ、始めよう楽器(笑)。


Photo by Mitsuru Nishimura

青山吉能
5月15日生まれ。熊本県出身。81プロデュース所属の声優。「Wake Up, Girls!」「社長、バトルの時間です!」などに出演。


Photo by Mitsuru Nishimura

水野朔
9月29日生まれ。ソニー・ミュージックアーティスツ所属の声優。「SELECTION PROJECT」「後宮の鳥」などに出演。

アクセサリー(全てフラミンゴ原宿店 問い合わせ:flamingo-harajuku@flamingo-online.jp)、その他スタイリスト私物


<INFORMATION>

結束バンドLIVE-恒星-
会場:Zepp Haneda
5月21日(日)
17:00 開場/18:00 開場
◆出演者青山吉能 (後藤ひとり 役)、鈴代紗弓 (伊地知虹夏 役)、 水野朔 (山田リョウ 役)、 長谷川育美 (喜多郁代 役)
◆BAND生本直毅 (Gt)、五十嵐勝人 (Gt)、 山崎英明 (Ba)、石井悠也 (Dr)
https://bocchi.rocks/special/live_kousei/

『光の中へ』
 結束バンド
5月24日発売
1,320円(税抜価格1,200円)
CD1枚 初回仕様限定盤

収録曲:
1.光の中へ
2.青い春と西の空
3.光の中へ-instrumental-
4.青い春と西の空-instrumental-

◆5月22日(月)0時に「光の中へ」先行配信実施

【初回仕様限定特典】
結束バンドLIVE-恒星-パックステージパス風ステッカー
※収録内容や特典は予告なく変更となる場合がございます。予めご了承ください。