パリ五輪のアジア最終予選を兼ねたAFC・U-23アジアカップのグループB最終戦が22日、カタールのジャシム・ビン・ハマド・スタジアムで行われ、U-23日本代表が0−1でU-23韓国代表に敗れ、グループ2位で決勝トーナメントへ臨むことになった。宿命の対決は、後半30分にセットプレーから均衡を破った韓国に逃げ切られた。これにより25日の準々決勝で日本はグループAを無敗で首位通過した開催国のU-23カタール代表と対戦することになった。負ければパリ五輪への道が絶たれる一発勝負。日本にとって絶体絶命の正念場だ。

 A代表も目立つカタールは主力を温存して中3日のスケジュール

 今夏のパリ五輪出場へ黄信号が灯った。
ともに連勝でグループリーグ突破を決めている、日本と韓国が対峙するグループBの最終戦は消化試合にはならなかった。25日の準々決勝で1位突破国がインドネシアと、2位は開催国カタールと対戦する。勝利が求められる一戦で日本が一敗地にまみれた。
両チームともに無得点で迎えた後半30分に韓国が獲得した右CK。ファーを狙ったボールに、今大会初出場のGK野澤大志ブランドン(21、FC東京)が飛び出すも触れない。途中出場のMFキム・ミヌがフリーの状態から、無人のゴールへ頭で叩き込んだ。
すべて中2日の過密日程で迎える3試合目。UAE(アラブ首長国連邦)との第2戦から先発7人を入れ替えた日本に対して、韓国は中国戦から実に10人を変更。その上でシステムも[4−2−3−1]から[3−4−3]にスイッチし、2試合で韓国の全3ゴールを決めている193cmの長身FWイ・ヨンジュンも最後までベンチで待機させた。
再び中2日の25日に待つ準々決勝をもにらんだ戦い。前半44分に初めてシュートを放つなど、チグハグな攻撃を繰り返しながらも、一発のセットプレーで勝利とグループBの1位をもぎ取ったファン・ソンホン監督(55)の采配を、韓国メディアの『OSEN』は「選手をローテーションしてもミニ韓日戦に勝った」と日本への皮肉を込めて伝えた。
「結果と内容の両方を大事にしたファン・ソンホン監督の采配のもと、韓国はグループBを3戦全勝で突破しただけでなく、主力選手を休養させて体力を整えさせる有意義な試合となった。日本に押し込まれ続けても、選手交代を含めた指揮官の戦術は的確で、キム・ミヌの決勝点には韓国選手のフィジカルの強さが凝縮されていた」
別の韓国メディアの『Sports Seoul』も「グループ1位での準々決勝進出と、主力のスタミナ温存の二兎を得た」と元韓国代表及びJリーガーで、セレッソ大阪でプレーした1999シーズンには得点王を獲得したファン・ソンホン監督の采配を称賛した。
「すでにベスト8進出を決めていたファン・ソンホン監督は、引き分ければPK戦でグループBの順位を決める最終戦で、大会全体を見すえた判断を下した。日本の集中力が切れたわずかな隙を突き、セットプレーで先制点を奪った後は守勢に回ってしまったが、日本の決定的なシュートはディフェンス陣の必死のブロックやゴールポストによって防がれた。指揮官の的を射た采配が、すべて無失点の3連勝という結果を導いた」
16カ国が23歳以下のアジア王者を争う今大会は、今夏のパリ五輪出場をかけたアジア最終予選も兼ねている。アジア大陸の出場枠は最大で「4」で、決勝に進む2カ国と3位決定戦の勝者がパリ行きの切符を獲得し、4位はアフリカ4位のギニアとの大陸間プレーオフに回る。つまり、次の準々決勝で負けた時点でパリ五輪出場の道が絶たれる。

 グループB最終戦の結果、準々決勝で韓国はグループAを2位で通過したインドネシアと、日本は2勝1分けの無敗で通過した開催国カタールとそれぞれ対戦する。
初戦で退場者2人を出した末に0−2でカタールに敗れながらも、オーストラリアに1−0、ヨルダンには4−1と連勝。決勝トーナメント進出を決めたインドネシアは、かつて韓国代表を率いたシン・テヨン監督(53)のもとで急成長を遂げている。不気味な存在ではあるが、それでも対戦を避けたかった相手は開催国カタールとなるだろう。
2022年11月から12月にかけて開催された中東初のW杯へ向けて、カタールは代表チームの積極的な強化を続けてきた。A代表は2019年、そしてまだ記憶に新しい今年とアジアカップを連覇しているが、先行投資の成果はそれだけにとどまらない。
カタール紙の『Al Raya Newspaper』は同国サッカー協会の事務総長で、今大会のディレクターも務めるマンスール・アル・アンサリ氏のコメントを紹介。ポルトガル人のイリディオ・ヴェール監督(66)のもとで、ベスト8進出を果たした1992年のバルセロナ五輪以来、3度目の出場を目指す同国U-23代表の立ち位置をこう伝えている。
「W杯に代表される大規模なイベントを開催するなど、世界のスポーツの中心地としての地位を維持してきたカタールの遺産が継続されている」
今大会にはMFモスタファ・タレク(23、アル・サッド)やMFジャッセム・ガベル(22、アル・アラビ)、MFマフディ・サレム(20、アル・シャマル)、FWアフメド・アル・ラウィ(19、アル・ラーヤン)とA代表を経験している選手が招集されている。
特にガベルは、4戦全勝で北中米W杯アジア最終予選進出を決めているA代表の中盤に定着。さらに184cmの長身を誇るラウィは、3月21日のクウェートとの2次予選第3戦で途中出場からゴールをゲット。ともにA代表の経験を今大会に還元している。
現地時間21日に最終戦を行ったグループAは、日本よりも1日多い中3日で準々決勝を迎える。さらにヴェール監督は、連勝で迎えたオーストラリアとの最終戦で完全ターンオーバーを実施。注文通りのスコアレスドローで終えた一戦で、中盤の要となるタレクとガベルは最後まで温存され、中5日と休養十分の状態で日本戦に臨んでくる。
一方でオーストラリア戦ではリザーブが8人と通常よりも4人も少ない陣容で臨んでいる。インドネシアとの初戦でゴールを決めたラウィは、その後の2試合でベンチにすら入っていない。ヴェール監督は詳細を語っていないが、ラウィを含めてコンディションを崩しているとすれば、回復へ向けた時間を取っているとも考えられる。

 いずれにしても韓国戦でMF松木玖生(20、FC東京)やMF山本理仁(22、シントトロイデン)、そしてキャプテンのMF藤田譲瑠チマ(22、同)らを途中出場させ、大会初黒星を喫した日本とは対照的に、カタールは体力、メンタルの両面で大きなアドバンテージを得ていると言っていい。さらに前出の『Al Raya Newspaper』はこうも伝えた。
「グリープリーグの3試合では、カタールのサポーターが数多く駆けつけて五輪チームを鼓舞し続けた。スタンドに描かれた美しい光景は選手たちを励まし、常にベストを尽くさせ、首位通過というポジティブな結果を手にする上で大きな役割を果たした」カタールとの準々決勝の試合会場はジャシム・ビン・ハマド・スタジアム。グループリーグ初戦からすべて同じスタジアムで戦える日本のメリットを、これまでの3試合とはまったく異なる、完全アウェイに豹変するスタンドの光景が完全に打ち消す。
五輪の舞台へ28年ぶりに復帰した1996年のアトランタ大会から、日本は7大会続けてヒノキ舞台で戦ってきた。系譜をパリの地へも繋げられるかどうか。負けた時点ですべてが終わる、最初の正念場となる大一番は日本時間の25日23時にキックオフを迎える。