阪神が10日、横浜スタジアムで行われた横浜DeNA戦に4−3で競り勝ち首位をキープした。勝負を分けたのは6回に起きた横浜DeNAのベンチワークのミス。三浦大輔監督(51)は岡田彰布監督が(66)が投手交代を告げる前に代打の蝦名達夫(26)をコールしてしまい、リリーフカーに乗っていた左腕の島本浩也(31)が急きょUターン。岡田監督は石井大智(26)を続投させピンチを防いだ。9回にダブルスイッチで途中出場したシェルドン・ノイジー(29)が決勝タイムリー。両軍ベンチの采配が明暗を分けることになった。

 横浜DeNAのなんとも“お粗末”なベンチワークのミスが勝敗を分けた。6回だ。筒香のタイムリー三塁打、京田のタイムリーなどで同点に追いつかれ、なおも一死一、二塁で、1番打者の神里を迎えたところで岡田監督は石井から島本への交代をを考えていた。次の回からの打順を考えて井上とノイジーのダブルスイッチをする予定で井上がもうベンチ前まで戻ってきていたが、まだ岡田監督は審判に交代を告げていなかった。だが、三浦監督が先に代打・蝦名をコールしたのだ。
「左が出てくると予想していましたが…蝦名を選択しました」とは三浦監督の説明。はなから神里ではなく蝦名で勝負するつもりだったようだが、百戦錬磨の岡田監督が、そのミスを見逃すはずがない。
「向こうが勝手に先に右の代打を出すからこっちがびっくりするわ。待っといたらええのにな。ピッチャーが先やないか。バッターを先に代えられたから石井も投げさせないとしゃあないやん。オレが間違えたかなと思ったわ」
ベンチで思わず笑っていた岡田監督は、急きょ、石井の続投に切り替え、井上をポジションに戻し、すでにリリーフカーに乗って外野の扉から出てきた島本もUターンとなった。
石井は踏ん張り蝦名を三振。左の関根を迎えたところで島本を投入し、井上に代えてノイジーを入れるダブルスイッチを実行した。島本が投じた2球目のスライダーが高く浮き「甘かった」と岡田監督をヒヤっとさせたが、詰まった打球はショートの正面。勝ち越されてもおかしくなかった大ピンチを逃げ切った。
この日は、ブルペンの切り札である桐敷が熱発でベンチを外れていた。中継ぎが1枚足りなかったために「普通やったら(交代は)6回でも良かったんやけど(青柳に)5回で勝ち投手はやれんよ。球数関係なしにせめて6回は投げ切らなあかんよ」(岡田監督)と6回まで引っ張った青柳が、森、筒香に連続三塁打を浴びた。
筒香の右中間への打球は森下が追いついていたが目測を誤り交錯した近本もカバーしきれなかった。交代した石井が京田に同点タイムリーを許し、東にはバントを失敗させたが、なお残ったピンチで起きた横浜DeNAベンチの些細なミスを虎の指揮官は見逃さなかった。

 8回にも横浜DeNAの不可解なベンチワークに助けられた。
岡田監督は筒香、京田と左が2枚出てくる8回にはダブルストッパーの岩崎を先に投入したが、先頭の筒香にライト前ヒットを許した。1点で試合が決まる3−3の同点の場面だったが、三浦監督は筒香に代走を送らず、続く山本にも強行させた。山本はカウント1−1からセーフティバントを試みたが、それはファウル。結局、空振りの三振に終わり、得点圏に走者を送ることができなかった。岩崎は後続を断ち9回へとつなげたのである。
そしてダブルスイッチで9番の打順に入っていたノイジーが試合を決めることになる。横浜DeNAがマウンドに送った森原から先頭の佐藤がライト線を破る二塁打で出塁し、続く坂本がバントを決めて一死三塁。岡田監督は、木浪のところで糸原というカードを切った。糸原は四球を選び、続くノイジーがカウント2−1からのストレートをレフト前に弾き返して1点を勝ち越した。
ノイジーは「状況とカウントを考えてストレートを狙っていた」という。森原の攻略は、ストレートかスプリットかの2択。佐藤、糸原の打席を見て、スプリットがコントロールできないことを見極めていたのである。こういう配球の読みが来日2年目のノイジーの進化だろう。森原はノイジーに対して全球ストレートだった。
それでも岡田監督は「(ノイジーには)明日もう1日休んでもらうで。変なピッチャーやから」と、今日11日の横浜DeNAの先発がアンダースローの中川のため、昇格即「5番・レフト」で使い、結果を出した井上を続けてスタメンで起用することを明言した。
井上は、6回に大山のタイムリーで勝ち越し、さらに一死一、二塁のチャンスに東の初球のストレートを捉えて三塁へ強烈な打球を放った。その打球はアンツーカーでイレギュラーして宮崎の頭部を直撃、ブルーシートで覆われる物々しい状況のまま担架で運び出される緊急事態となったが、阪神にとっては貴重なタイムリーになった。
岡田監督は「あのノーステップ打法がだいぶ自分の感覚の中でタイミングが取れるようになってきたんとちゃうか」と評価した。
9回にゲラは1番の蝦名から始まる横浜DeNA打線を三者凡退に抑えた。8日の広島戦では、明らかに疲れが見えストレートが走っていなかったが、今季18試合目登板となるゲラは、中1日の休養で完全復活。最後、佐野に対しては159キロのストレートを続けてレフトフライに打ち取っていた。8回は岩崎に任せ、9回はゲラという丁寧なベンチの継投策が連敗ストップにつながった。打線はまだまだ信用が置けないがこういう接戦をモノにできる阪神には混セを抜け出す資格がある。