【埼玉】丸木美術館(東松山市)で開催中の企画展「阿波根昌鴻 写真と抵抗、そして島の人々」(原爆の図 丸木美術館主催)のトークイベントが20日、同館であった。写真家の比嘉豊光さんと伊江村立西小学校元教頭の玉城睦子さんが登壇。「時代を巻き戻して孫らと会話ができるのが写真の力。改めて島の戦後を見つめ直せる今までにない展示会だ」と話した。

 写真展のキュレーターで東京工芸大学准教授の小原真史さんがトークイベントの司会を務めた。小原さんは、島の記録者、ジャーナリストとしての阿波根さんの写真の特性を説明し「力のある米軍にイメージを占有されないよう、写真で記録することで住民を守る役割も果たしてきた」と指摘した。

 玉城さんは、米軍占領地で農作業中に逮捕、連行された住民らを迎えに行った家族の写真を示して逸話を披露。「家族は『父さんたちは働き手。代わりに私たちが牢屋(ろうや)に入る』と嘆願に行っていた。写真展の開催を通じて初めて知ったことだ。島の出来事を連綿と阿波根さんは撮っていた」と話し、写真の持つ意味を振り返った。

 反戦平和資料館「ヌチドゥタカラの家」を阿波根さんと共に建設した謝花悦子さんもあいさつ。「阿波根昌鴻の闘いの歴史がここまで評価され、公開されるとは夢にも思っていなかった」と関係者、参観者へ感謝した。

 この日は330人が来館。会場は満席となった。阿波根さん所蔵の3千枚以上のネガから高精細化したデジタルプリント約350点を展示している。5月6日まで開催されている。

  (斎藤学)