自分らしい1枚をー。

 宜野湾市新城のいすのき通り沿いにある「きろくびと写真館」。ドアを開けるとシャッター音をかき消すほどの笑い声があふれる。訪れた人たちの自然体で飾らない姿が、次々と写真に切り取られていく。県内ではここだけというA2サイズのポスター写真が好評で、映画のポスターのような一枚は温かみがあり、見る人をも楽しませると評判だ。店主の知名孝さん(37)は「撮影を楽しんでもらうのが一番。『かしこまらなくていい』が最高の褒め言葉」と話し、シャッターを切る。

 きろくびと写真館は2022年10月に開業した。スタジオは自然光を取り入れ、日常のような一コマや何気なくこぼれ出る表情を映し出せるようにと、白を基調としている。

 店主でカメラマンの知名さんは、撮影中にお客よりも楽しそうによく笑う。かつて家電量販店の勤務経験があり、カメラを販売するのが得意だったことなどが、今の自分につながったという。「接客で培ったコミュニケーション力が役立っている」と話す。写真館のほかにもテレビ局での宣材写真の撮影や広告写真など、幅広く活躍している。

 アシスタントを務める妻の優美さん(32)は、元保育士で現役のベビーシッターだ。子連れの家族が来館した際は、ちょっとした世話に加え、緊張した子どもたちを和ませ自然な表情を引き出すことにたけていると、知名さんからの信頼は厚い。知名夫妻が法被姿でお祭りにも似た高揚感あるスタジオに仕立て上げる。

 ゴールデンウイーク中は、家族写真の撮影など多くの人でにぎわった。宮古島から訪れた高良剛史さん(37)の一家は、帰省のタイミングに合わせ家族3世代で撮影に臨んだ。剛史さんの妻・さやかさんは「子どもたちも楽しんでいる。なじみの美容室に来た感覚で、なじみの写真館に来たという気楽な感じがいい」と話す。剛史さんは「家族の成長を振り返ることができる。遺影まで撮ってもらいたい」と家族一同、朗らかな表情で写真に収まった。

 同館では撮影から写真選び、印刷までの所要時間は1時間程度で、当日にポスター写真を持ち帰ることもできる。いつかはカフェを併設した写真館を作りたいと話す知名さん。「いつもお客さんからたくさんの元気をもらっている。今後もお客さんと一緒にいいものを作っていきたい」とカメラを手にほほ笑む。