川上和人『鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。』(新潮文庫刊)

 鳥を研究する鳥類学者という存在を知っているだろうか? 人数が少なく、希少な部類の学者なのだという。ある時はメグロの採血、またある時はシカの血をすする吸血カラスに仰天…。そして出張先は火山、無人島と、体を張らなければならない過酷な世界で生きている。そんな著者の、汗と鳥への愛が詰まったエッセーだ。

 さまざまな鳥の生態について専門的な知識が豊富に書かれている本書だが、鳥類の奥深さとともに、著者のユーモアも伝わる。

 森永製菓を代表するお菓子「チョコボール」のマスコットキャラクター・キョロちゃんの生態を、鳥類学者の目線で考察している章がある。架空のキャラクターを専門的に見ながら生息地などを推理していく様子は「さすが学者」と思わずうなずいてしまう。加えてリアル・キョロちゃんの挿絵も描かれている。これがもし現実にいたら、ちゃん付けなんて恐れ多い。「キョロ様」と呼ぶべき風貌だ。

 人類の文化に古くから影響を与えてきた鳥たち。日々自由に飛び立つ彼らは、われわれ人間が思っている以上に奥深い存在なのかもしれない。(新潮文庫/693円)

(コンテンツ部・池田知恵)