組織のトップに立つ人は孤独と思う。現場レベルで即座に判断することも大変だが、仮に間違っていても後ろには上司がいる。いざという時には頼れる。しかし、トップに立つ人は自分の後ろには誰もいない。少なくともその覚悟でさまざまな課題に臨んでいるはずだ。迷いに迷う判断、決断も多いと想像する◆玄海町の脇山伸太郎町長がきのう、原発から出る高レベル放射性廃棄物、いわゆる「核のごみ」の処分場選定の第1段階である「文献調査」の受け入れを表明した。町議会に提出された調査への応募を求める請願が採択されてから2週間。大型連休中も熟考を重ねたはずだ◆禅語の一つに「坐忘(ざぼう)」がある。静座し雑念を取り除いた境地を意味するが、古いものを捨てないと、新しいものは入らないという教えともされる。何かを決断する時、これまで築いたものを一度捨てる勇気も求められるということだろう◆原発立地自治体としてのこれまでの労苦を思う時、重い決断だったことに間違いないし、脇山町長が会見で語ったように、核のごみ問題は特定の地域の話ではなく、日本全体で考えるべき課題でもある。地元住民はもちろん、県民にとっても自分事として考えるきっかけになったのではないだろうか◆処分場選定はまだ入り口段階。一人で考えず、意見を交換するのもいい。(義)