岩礁に引っかかり漂うキアンコウの卵帯=唐津市馬渡島

 5月、最低水温期から約2カ月がたちました。海水温は4度ほど上昇して現在17〜18度で、水温が上がるこの時期はさまざまな生き物たちの繁殖期になっています。

 今年は唐津市の馬渡島で珍しい出合いがありました。キアンコウの卵(卵帯)です。鍋物の食材にもなるアンコウですが、その卵帯は透明でグミのような弾力があり、長いものでは10メートルほどにもなるそうです。今回見られたのは長さ4〜5メートル。潮の流れに身を任せて浮遊し、水深15メートルほどの岩礁の角に引っかかっていました。

 卵帯の中には無数の新たな命が宿っており、ピクピクと動きながら外の世界へ飛び出すタイミングをうかがっている様子でした。この広い海での偶然の出合いと自然の営みに、あらためてダイビングの魅力を感じました。

 (文と写真:唐津マリンスポーツクラブ・浪口知記)