町を歩いて町の良さを探そう=嬉野市の嬉野温泉公衆浴場「シーボルトの湯」

 2008年に24歳で旅館の事業を継承した。バブル崩壊、さらにリーマンショックが重なり国内需要は冷え込み、インバウンドも全くいなかったこの時期。嬉野温泉は今からは想像できないほど、重く暗い空気に包まれていた。なくなってしまったお店や会えなくなった方々もいる。あれから16年、嬉野温泉は着実に元気を取り戻している。さまざまな業種のさまざまな年代の人たちが、自分たちの暮らしを守るために必死で動いてきた結果だ。

 町は一人のヒーローではつくれない。誰か一人をヒーローとあがめて皆が頼ってしまうと、そのヒーローは心身ともに疲弊し、その活動も長くは続かない。

 個人個人が自分の目が届く範囲を、自分自身と近くにいる家族や仲間と共によりよくしていく。その積み重ねと広がりが、持続可能な町の生命力を生むのだろう。

 コラム「湯けむり通信」を毎週金曜日に書き始めて1年8カ月がたった。このコラムでは、私が暮らす生活圏で自らの暮らしを楽しく豊かにしている人や活動もたくさん紹介してきた。それはまるで「宝探し」。ともすれば町の「あら探し」ばかりになってしまうのが人間の性(さが)。皆さんもぜひこの後、新聞を閉じて町を歩き、自分の生活圏にある宝を探してみてほしい。本当の宝物は、メディアの中ではなく目の前に転がっているはずだ。

 さて、佐賀新聞で毎週書かせていただいた宝探しのようなコラムは、今回で終了いたします。これまで読んでくださった皆さま、本当にありがとうございました。

 しかし、私の宝探しは今後も自由気ままに続けていく。もしよろしければ大村屋のHPやSNSを見ていただければ私の宝探しの続きを見ていただけると思う。またどこかでお会いしましょう。(おわり)