二十数年前、道で拾った1円玉を警察に届けた小学生の女の子2人を取材した。1円を笑う者は1円に泣くという言葉があるように、金銭教育の面からも尊い行為。ただ、ストレートに記事にするのは無理があると感じ、「記者日記」で紹介した◆昨年1年間で全国の警察に届けられた「落とし物」は約2979万点で、過去最多となった。このうち、現金は228億円余りに上る。県内も昨年は10万件を超える落とし物の届けがあり、現金は2年連続で1億円を超えた◆人のことは笑えない。学生時代、仕送りを引き出したばかりの財布を落としたことがある。落ち込んだ。傘はこれまで何本なくしたことだろう。高い傘を買えば注意深くなると思っても、すぐに置き忘れてしまう。落とし物には動物も多い。全国では昨年、約2万5千匹の動物が届けられた。犬や猫が多いが、県内では豚の落とし物もあった◆ただ、落とし物が多いということは、裏を返せば拾っても猫ばばせず、きちんと警察に届ける人が多いということ◆学生時代に落とした財布は見つからなかったが、お金は働けばいつか取り戻せる。逆に、「信用」をはじめ、失ったら簡単には取り戻せないものは多い。大切なものは目に見えない。あの時取材した女児は今もきっと、お金以上に「良心」を大切にしていることだろう。(義)