「ガチョーン」のギャグで親しまれたタレント谷啓さんに、すごいエピソードがある。火事で自宅が焼けている前でマージャンをやっていた、というのである◆おれは動揺してないぞと「不動の態度」を見せるためだった、と作家の小林信彦さんが書いている。その時、谷さんの父親は見舞客に燃えている部分を指さして、「もともと、あそこはいらないと思っていたのです」と言ったとか、言わないとか◆災いも笑いに変えてしまうプロ意識には頭が下がるが、現実はこうはいかない。各地から届く痛ましい火災のニュースは、防火性能が十分でない古い木造家屋が多く、高齢社会の現実を突きつける。温暖化の影響か、なかなか消し止められない山火事も記憶に新しい◆備えは大丈夫だろうか。佐賀市や小城市で消防団の格納庫から発電機の紛失が相次いでいる。夜の出動に欠かせない投光器の電源である。鍵をかけていなかったり、確認した時期がはっきりしなかったりと管理がお粗末。「もともといらないと思っていた」わけでもなかろうに◆消防団員の確保がままならない時代。仕事や家庭の事情を抱えつつ、時間を工面している団員に、あれこれ手が回らない事情もあろう。ほころびの一因は、消火も災害対応も任せきりで、われ関せずと「不動の態度」を決め込む私たち自身にもある。(桑)