短文化する時代

Saga Shimbun10/2(木)22:21


 長くなればなるほど短くなるものがある。それは夫婦の会話だと、ある人生の先達に教わった。なんとなく互いの気持ちがわかるせいか、「あれ」とか「それ」で会話が成り立つものらしい◆往年の名優中村伸郎さんはある日、長年連れ添った妻から話しかけられた。「留守番がないから、出られないって言うのよ」。いったい誰のことか、唐突すぎて話がよくわからない。短い会話が習慣になって、いちいち説明しなくても伝わると思うのか、こんな不思議なやりとりが日常になる◆SNSの普及で略語や短いことばのやりとりが増えている。最新の「国語に関する世論調査」で89%の人が、そんなSNSの影響を感じていた。「了解しました」は「りょ」、「お疲れさま」は「乙(おつ)」…。すぐに返信しなければ、とスピード重視の言語感覚である◆こうした若い世代のやりとりは意味が伝わらなかったり、ときに相手を傷つけたりもする。短文をぱっと書いてぱっと送ることに慣れ、学校では長文の読み書きが苦手になっているという。誰もが自由にことばを発信できる便利な通信網が皮肉にも、ことばの豊かさを奪っている◆短いやりとりでは大事なことをつい言いそびれる。感謝の気持ちとか、いたわりとか。老夫婦の不思議な会話がなんとなく成り立っているのは、聞く方がうわの空だから、である。(桑)

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