事件の報道に接して、何かのどに刺さったような感覚が残るときがある。金銭が目当てだったり、恨みがあったり。決して許されない動機であっても、それが分かれば引っかかりは取れるが、どうしても腑(ふ)に落ちないときがある◆鳥栖市の女性(79)をハンマーで殴って殺害したとして、長崎大薬学部の学生(25)が逮捕された事件。長崎市から福岡市へ電車で移動し、ホテルに宿泊。翌日、タクシーで鳥栖市へ向かい、犯行に及んだとされる。現場付近に行ったのは初めてで、被害者との面識もないという◆逮捕から1週間、連日の報道で犯行時の状況は少しずつ明らかになってきた。「殺せる人を探していた」「誰でもよかった。人けの少ない所を探していた」。容疑者の供述も伝わってくるが、動機や背景は全く見えない。被害者、遺族の無念さを思うと、胸のうずきは収まらない◆こうした不可解な事件が増えてきたように感じる。容疑者は、何らかの心の闇を抱えているのだろう。それがなぜ無関係の人を巻き込む凶行につながるのか、どれだけ考えても分からない◆腑に落ちる−。そんな動機は存在しないのかもしれない。〈犯罪は社会を映す鏡〉といわれるが、理由のない犯罪が映し出す社会とは、と考えて迷路に入ってしまった。出口が見つからないまま、稿を閉じるしかない。(知)