工事現場や警備中の目印に置かれる赤や黄色の三角コーン。日本では青や緑などのカラー展開があることからカラーコーンという商品名が一般的に広まっていますが、英語ではトラフィック(交通)コーン、ロード(道路)コーンなどと呼ばれています。 コーンというのは円錐(cone)のこと。アイスクリームのコーンも円錐の形からの呼び名ですが、とうもろこし(corn)が原材料だと勘違いしていませんか(正解は小麦粉)。ちなみにとんがった形でお馴染みのあのスナック菓子はとうもろこしが原材料だからコーン。混乱しますよね。 パイロンと呼ぶ人もいますが、それは古くからのギリシャ語で門塔を意味する言葉。ローラースケートなどでスラロームの練習に使う円錐塔をパイロンと言いますが、サッカーのドリブル練習のはマーカーと言ってます。やっぱり紛らわしい。 というわけでここではシンプルにコーンと呼ぶことにしましょう。道端の〈無言コーン〉を集めてみました。

Am I in your way?《通せんぼ》
Am I in your way?《通せんぼ》

私道の路地の入り口の真ん中に黄色いコーンが立っていました。

頭の天辺に取り付けられた看板の文字はすっかり消えています。それでも道の真ん中に立てて通せんぼをしているから「進入禁止」の意味だというのはすぐにわかります。

でもよく見たら本当は「駐車禁止」という文字の跡がうっすらと……。字が消えたら逆に用途を問わず使えて汎用性が高まったという意外なオチです。

そもそもコーンは色も形も目立つようにデザインされているので、軽量な造作にもかかわらずそれだけでかなり目立ちます。

Yellow hats《黄色い帽子》
Yellow hats《黄色い帽子》

こんな形の既製品もあるんですね。「自転車放置禁止」の文字はかなり消えかけていますが、黄色の物体が存在しているだけでも警告は伝わってきます。

児童公園の近くにある車の入れない暗渠なので、これを置かないと子供たちの自転車がずらりと並んでしまうのでしょう。金属製の工事バリケードではなくプラスチック製のものを選んだのも安全性を考えてのことかもしれません。

Palanquin of cones《コーンのかごや》
Palanquin of cones《コーンのかごや》

えっさほいさと威勢のいい掛け声が聞こえてくるような形だと思いきや、近くでよく見るとコーンにはだいぶ年季が入っていて担ぎ棒も傾き、かごやの二人はかなりお疲れの様子です。

看板は新旧2枚ありますが、右の読める方は後から付けた補足看板なのでしょう。「車両ドライバーの皆様へ 安全用具の故意的破損はおやめください」と少し周りくどいくらいの言葉で丁寧にお願いしています。

文字の消えた方もきっと「駐車禁止」ではなく、「無断駐車はご遠慮ください」だったのではないかと推測します。手書きの文字から設置者の人柄や切実な思いが伝わってきます。配送トラックの運転手さん、コーンにタイヤを乗せないでくださいね。

Shadow says something《影は語る》
Shadow says something《影は語る》

何かの看板かプレートの覆いガラスが取り外されて、斜めに立てかけられていました。

透明な無言板にカメラを向けて撮影したら、壁に落ちたガラスの影が図形を描くように空間構成的な写真になりました。

コーンには「駐車禁止」と書かれていますが、今は「ガラス注意」という意味で置かれているのでしょう。これもシチュエーションと置き方次第でコーンはさまざまな注意を発することができるという事例です。文字はなくとも雄弁です。

The Nothingbirds are go!《無の格納庫》
The Nothingbirds are go!《無の格納庫》

物置の壁には注意書きの張り跡が無言で残されていますが、その前に鮮やかなプラスティックのコーンが整列し、さらに地面にはステンシルで数字が書かれています。昔のテレビ特撮人形劇「サンダーバード」の基地を連想してしました。

ただのコーンなのに整列するとかっこいい。黄色はサンダーバード4号、赤は3号。数字は合っていませんが、気分は国際救助隊、出動準備完了です。

Les Bourgeois de Calais《カレーの市民(6人の男たち)》
Les Bourgeois de Calais《カレーの市民(6人の男たち)》

最後に無言板のないコーンだけの写真を一枚。

某県立近代美術館の前でこの光景に出くわしました。敷石タイルの割れた箇所につまずかないようにコーンでガードしているのですが、美術館の入り口ということもあって見た瞬間にオーギュスト・ロダンの彫刻『カレーの市民』を思い出しました。上野の国立西洋美術館の前庭の『考える人』の隣にある群像ですね。

色も形も違うのになぜこれが『カレーの市民』を思わせたのかというと、それは数のせい。『カレーの市民』は6人。カラーコーンを数えてみると6本。たぶん5本でも7本でも『カレーの市民』には見えないのです。見立てや視覚的連想をする脳のメカニズムとはじつに不思議なものです。

文・写真=楠見清