日々、街の表情が大きく変化する東京。 2006年、私はふと思い立って、消えていく風景を写真に納めることにしました。「消えたものはもう戻らない。みんながこれを見て懐かしく感じてくれたらうれしいな」とそれぐらいの気持ちで始めた趣味でした。 そんな、東京から消えていった風景を集めた短期連載「東京さよならアルバム」。今回は第15弾として、2021年1〜3月に消えていった風景を紹介します。   写真・文=齋藤 薫

2021年1月 九段下「九段会館」

1932年に完成、昭和の歴史の証人

九段下のお堀端にあった「九段会館」の取り壊し工事が本格的に進んでいる。

1932(昭和7)年に完成した、ホール、レストランなどを擁した会館で、元は軍事会館。1936(昭和11)年の二・二六事件では戒厳司令部が置かれ、戦後はGHQに接収された、昭和の歴史の証人とも言うべき歴史的建造物である。1957(昭和32)年に九段会館として生まれ変わったが、2011年東日本大震災で天井が崩落し、以降10年間閉館状態だった。

10年の時を経て取り壊し工事に入ったが、跡地には九段会館の一部を残しつつ、17階建ての総合ビルが2022年に完成するらしい。歴史と伝統を感じる重厚な建物であった。

2021年1月 浜松町「世界貿易センタービル」

日本で2番目にできた超高層ビル

JR浜松町駅に直結している、40階建て、高さ152mの高層ビル「世界貿易センタービル」が、都市計画のため2021年度中には全館閉館、その後解体され再開発される。

今から半世紀前の1970(昭和45)年、霞が関ビルに続いて日本で2番目にできた超高層ビルであり、高さも霞が関ビルを上回り、翌年京王プラザビルができるまでのあいだ日本一を誇った、まさに浜松町のシンボルともいえる存在だった。

全館閉館に先立ち、高さ152mの40階にある展望フロア「シーザイドトップ」が2021年1月いっぱいでクローズした。東京湾から銀座、六本木、新宿まで一望でき、東京タワーの全貌を眼下に収めることができた。しかし50年前とは違い、周りに高層ビルが林立し、視界の三分の一はビルに邪魔され、かつて見えた富士山は見えなくなってしまった。日本の高度成長を象徴した花形ビルの消滅は、時代の変化を実感させられる。

展望フロア「シーザイドトップ」。
展望フロア「シーザイドトップ」。
「シーザイドトップ」からの展望。
「シーザイドトップ」からの展望。

2021年2月 「バーニーズ新宿店」

バブル真っただ中に上陸したNYデパート

「バーニーズ新宿店」が2月18日、30年の歴史に終止符を打った。ニューヨークの有名デパート「バーニーズ」の日本1号店として、バブルの真っ最中に最新のNYファッションが日本に上陸、新宿にマンハッタンの風が吹いた衝撃の登場だった。当時、おしゃれでかっこいいジャケットやシャツを背伸びして買ったものだ。経営も伊勢丹から、住友商事と東京海上キャピタル、現在はセブン&ホールディングスの子会社となっているが、コロナの影響などで集客が落ちこみ閉店となってしまった。

銀座、六本木、横浜店は営業を続けるが、新宿店の閉店は、ファストファッション全盛の中、おしゃれなファッション文化の終焉を感じさせる。それにしても、バブルで生まれ、コロナで消えてゆく、時代の流れを痛感する閉店である。

2021年2月 「恵比寿三越」

恵比寿ガーデンプレイスとともに誕生したスポット

恵比寿唯一の百貨店「恵比寿三越(三越恵比寿店)」が、業績の低迷やコロナの影響で、2月28日に閉店した。

元々はサッポロビールの工場だったこの場所に、1994年、恵比寿ガーデンプレイスが誕生、同時に三越もオープンした。地上2階、地下2階という低層のデパートだが、敷地面積は広く、地下2階のフードガーデンは広大な食料品売り場だった。恵比寿という土地柄、高級でおしゃれな品揃えでセレブ感も醸し出していた。

開業当時は最高にトレンディなスポットとしてカップルや家族連れにも人気を集めたガーデンプレイスだが、駅から距離があるせいもあってか、最近はひっそりしており、閉店間際の三越も人影はまばらだった。三越が無くなって、ポッカリ穴があいたようなガーデンプレイスの今後が心配である。また三越も、池袋や新宿などに続いてまたもや閉店である。三越の場所には、2022年ごろ新たな商業施設ができるらしい。

さらに、三越の隣のミニシアター「EBISU GARDEN CINEMA」も同時に一旦閉店した。カフェカウンターのあるロビーやラウンジもあり、恵比寿らしいこじゃれて素敵なシアターだった。ヨーロッパの映画やウディ・アレンの映画などアーティスティックな映画を観たことを思い出す。こちらは一時休館らしいが、再開時期など未定である。あらためて時の流れの速さを感じてしまう。

「EBISU GARDEN CINEMA」。
「EBISU GARDEN CINEMA」。

2021年3月 「SHINAGAWA GOOS(品川グース)」

品川駅前にそびえ立つ複合商業施設

品川駅前にそびえ立っていた、ホテルやレストランを擁する「品川グース」が3月いっぱいで全館閉館した。ここはもともと、1971(昭和46)年に「ホテルパシフィック」としてオープン、プールやレストランも有名な、リゾート感のある人気のシティホテルだったが、2011年「ホテルパシフィック」閉館後、その建物を再活用して「品川グース」として生まれ変わった。館内は「京急EXホテル品川」を中心に、ステーキハウスや、パブレストラン「T.G.I.F.」など人気のレストランが集まっていた。今後は解体し、新複合施設を建設する予定である。