“ガチ中華”と称される本格的な中国料理店が多く集まる池袋西口。なかでもガチ度が高めの『知音(チイン)食堂』は本場四川省の激辛料理を求める猛者が集まる。もちろん故郷の味を楽しみにする中国人のお客さんも絶えない。異国情緒のあふれる店内で味わう大人気の麻婆豆腐は辛さ満点、旨味もバッチリの深みのある一皿。一度食べるとハマります。

地下への薄暗い階段を下ると、そこは中国だった

池袋チャイナタウンの中でもひときわ存在感を放つ中国スーパー「陽光城」。その脇道に行くとすぐ中国建築の門がある。『知音食堂』はこの門から続く階段を下りた地下1階で営業する。

ビルの側面に出現する異国への入り口。
ビルの側面に出現する異国への入り口。

階段を下った先はもはや中国! 重厚な木材に美しい彫刻で装飾した机や衝立(ついたて)があり、床と壁は石材だ。中国式の間接照明や飾りがますます雰囲気を盛り上げている。外の景色も見えないため、異国情緒にどっぷりと浸れる。

趣のあるレトロな空間。合計70人収容可能でゆとりがある。
趣のあるレトロな空間。合計70人収容可能でゆとりがある。

『知音食堂』は中国四川料理の店。四川料理といえば、唐辛子をふんだんに使用した辛い料理でおなじみだ。日本の食卓でも登場する麻婆豆腐も四川料理のひとつ。

辛い! けど辛いだけじゃない、濃厚な旨味のある麻婆豆腐

器いっぱいに盛られた麻婆豆腐が到着。真っ赤で辛そう! 粉状の花椒がかかっていて、いい香りがふわっと広がる。

ランチタイムの麻婆豆腐。ご飯と卵スープのセットで、豆腐干の千切り合えと塩で炒ったピーナッツが添えられて680円。安い!
ランチタイムの麻婆豆腐。ご飯と卵スープのセットで、豆腐干の千切り合えと塩で炒ったピーナッツが添えられて680円。安い!

一口目はすっきりと辛く、花椒のさわやかな香りが鼻に抜けていくのが印象的。ピリピリと清涼感がある。すぐにじわーっと辛さがおそってきてご飯をかきこむ。食べるごとにますます食欲がわきあがっていく。体がボッと熱くなるほど辛いが、深い旨みがあっておいしい。心地よい汗をかき、食後は爽快な気分になる一品だ。

「マー(しびれる味)とラー(辛い味)のバランスが一番大事。あと香りも大切ですね。しびれる味、辛さ、いい香り。それだけではなく、旨味、甘み、塩味、酸味も一緒になる。おいしさの秘密はいろいろな味をきっちり決めて入れているからです」。

店長は「マー(麻)、ラー(辣)、シャン(香)。これがツヮァンツァイ(四川料理)で大事!」と強調する。

本国から調理師をスカウト。目指すは「本物のおいしい」と「安い」の両立

調理はこの道20年以上のプロフェッショナルを重慶(ジュウケイ)で見つけ出し、『知音食堂』のために呼び寄せた。店長は「だから本物の味。中国人だからといって誰でも作れるわけじゃない」と胸を張る。

中国は広く、地方によって料理の種類や味付けはさまざま。中国人のお客さんは慣れた様子で食事をしているように見えるが、四川料理は辛いので食べるのが大変という人もまれにいるそうだ。反対に「“もっと辛くして、ご飯はいらない”と言って、麻婆豆腐だけをすごいスピードで食べて帰っていくお客さんもいる」と店長は笑う。日本人のお客さんを見ると料理が運ばれるたびに「辛そう!」「辛い!」と楽しそうに大騒ぎしている。

本四川風魚の煮込みはラーメンどんぶりのような器になみなみと入って1380円。四川省の夏は高温多湿で、冬は寒い。食欲アップと健康増進のためにスパイスたっぷりの料理が発達したといわれている。
本四川風魚の煮込みはラーメンどんぶりのような器になみなみと入って1380円。四川省の夏は高温多湿で、冬は寒い。食欲アップと健康増進のためにスパイスたっぷりの料理が発達したといわれている。

『知音食堂』の一品料理は大盛りでやってくる。気になる料理を何品か頼んで、2〜3人でシェアしてもいいだろう。「知音(チイン)」とは中国で「よく理解し合った人」「友達」という意味。旨辛な四川料理との出合いに驚きながら親しみたい。

知音食堂(ちいんしょくどう)
住所:東京都豊島区西池袋1-24-1/営業時間:11:30〜24:30LO(月・火は〜23:30LO)/定休日:無/アクセス:JR・私鉄・地下鉄池袋駅から徒歩1分

構成=フリート 取材・文・撮影=宇野美香子