地元民が通うアットホームな店の扉を開いたら、ただ者じゃない店主が腕を振るう名物に遭遇。下町力を侮るなかれ、新旧名店が点在だ。そんな中からおすすめの店をピックアップ。
ワインと絶品料理を手軽に『ル・コントワール・ドゥ・レジオン』[北千住]

「最後にやるなら、1人で小さな店を」と、路地裏にやってきた濱崎源太さん。錚々(そうそう)たる経歴をよそに、肩肘張らずに集える食空間を設(しつら)え、選(え)りすぐりの食材を使うも、安値で奮闘する。素材力が光る自慢の一品に、鉄網でシンプルに香ばしく焼くビゴール豚料理がある。サクッと歯応えよく、清らかに口溶ける脂は、まるで甘露。カウンター背後にあるセラーはワインの小部屋のようで、入室してボトルを見ながら選ぶ楽しみも。

『ル・コントワール・ドゥ・レジオン』店舗詳細
ル・コントワール・ドゥ・レジオン
住所:東京都足立区千住2-28 1F/営業時間:17:00〜22:00/定休日:月・火/アクセス:JR・私鉄・地下鉄北千住駅から徒歩3分
毎月変わる創作和食『下町割烹 とめだて』[北千住]

北千住の踏切近くに、ひっそりと店を構える和食店。おまかせコースは、月替わりで(旬の素材を)8品程(〜9品)のコース料理を5500円で味わえる。和食店でありながら日本酒のみならずワインやクラフトビールも取り揃えている(時期により内容変更あり)。「ていねいに仕込み、頑張ってます」と、和服姿で接客する妻・路世さんが舞台裏を披露。ふんわり温かな夫妻の人柄も、下町を思わせる。


『下町割烹 とめだて』店舗詳細
下町割烹 とめだて
住所:東京都足立区千住旭町1-22 村上ビル1F/営業時間:17:00〜22:00LO/定休日:月・第2火・第3火/アクセス:JR・私鉄・地下鉄北千住駅から徒歩4分
お手頃うな重に狂喜乱舞 !『千寿』[北千住]

「うなぎをもっとお手頃価格で気軽に食べてほしい」と、女将の松本たか子さん。千住関屋で営む鰻問屋『松本』が平成元年に開業。冬は九州、春は愛知から届く上質なウナギを、羽田空港まで迎えに出向き、毎朝、店へと運び入れる。注文後、タレに付け焼けば、肉厚な身がふっくらとろ〜り。関東風らしい辛口のタレが、うなぎの風味を引き出して、一気に無心の境地へ。肝焼きやう巻きなども用意され、ゆるりと日本酒も傾けたくなる。

『千寿』店舗詳細
千寿
住所:東京都足立区千住1-34-3/営業時間:11:00〜14:00(売り切れることも)・16:30〜19:30LO/定休日:土・第3金/アクセス:JR・私鉄・地下鉄北千住駅から徒歩4分
1996年開店、沖縄通の秘かな聖地『一初』[北千住]

「いわし専門で開店したのに、2年目に不漁になってね」。いわしと沖縄の2本立てになった理由を、店主の箕輪清さんが振り返る。沖縄料理は、妻・初美さんの故郷、宮古島の義母から教わった家庭の味。そこに、清さんの板前技が融合し、独自のメニューも生まれた。揚げたグルクンが主役のひとり鍋は、かつお出汁のピリ辛醤油味で、島豆腐や宮古直送のニンニク葉が入る。が、「沖縄には、鍋料理はないよ」と清さん。冬+千住限定なり。


『一初』店舗詳細
一初(いちはつ)
住所:東京都足立区千住4-19-14/営業時間:12:00〜14:00・16:00〜21:30LO/定休日:日・祝/アクセス:JR・私鉄・地下鉄北千住駅から徒歩4分
淀みない所作で握る寿司は美しい『おすしやさんの家 たなか』[北千住]

住宅地に突如現れる白いのれん。くぐれば、自宅を改装した小上がりで田中宏さん・美智子さんが迎えてくれる。なんとここ、天然モノ10貫のおまかせで2500円。「高級店ってのが苦手で(笑)。気取らず寿司を食べてほしい」と、かつて西麻布で握っていた宏さん。淀みない所作で握る寿司は、すっと面長で歌舞伎役者のように美しい。そこに自家製の煮切りで薄化粧。4日熟成させたヒラメの昆布ジメなど、ネタの素晴らしさに思わず相好は崩れ、「ああ幸せ〜」。


『おすしやさんの家 たなか』店舗詳細
おすしやさんの家 たなか
住所:東京都足立区千住東1-4-7/営業時間:11:30〜13:30(土日のみ)・17:00~22:00/定休日:不定/アクセス:JR・私鉄・地下鉄北千住駅から徒歩10分
元仲買人がさばく新鮮刺し身『市場食堂 さかなや』[北千住]

足立市場で12年間仲買人をしていた関野隆文さんが仕入れて、さばくのでネタの鮮度と質はピカイチ。お手並み拝見と特撰お造り盛合せ3600円を頼むと、身の厚さにびっくり。「魚も肉も薄くちゃ食べた気にならないでしょ?」。さて、ほんのりルビー色のシメサバからいくか大トロをいただくか。クロムツに狙いを定めて食せば、「而今(じこん)」や「黒牛(くろうし)」などの地酒でちびちびやるのが大正解なり。

『市場食堂 さかなや』店舗詳細
市場食堂 さかなや
住所:東京都足立区千住4-11-6/営業時間:11:30~13:30(ネタがなくなり次第終了)・17:00~25:30LO/定休日:木/アクセス:JR・私鉄・地下鉄北千住駅から徒歩12分
忘れられなくなる黄色いカレー『ニューダイカマ』[南千住]

潔いのれんに誘われれば、カレーポットと皿盛りライスで登場。店主の長田有功(ゆうこう)さんのカレー愛がビンビンに伝わってくる。毎朝、大量のタマネギを炒め、創業以来注ぎ足し続けるルーは、「子連れも多いから」と、中甘口。確かに一口めは甘い。しかし、奥底から爽やかな辛味が顔を現し、侮れない。この味が忘れられず、遠方から鍋持参で通う常連もチラホラと。大正期創業の隣店『大釜本店』の洋食部門として創業し、こちらへの出前も頻繁だ。


『ニューダイカマ』店舗詳細
ニューダイカマ
住所:東京都台東区清川1-29-5/営業時間:11:30〜18:00/定休日:木/アクセス:JR・私鉄・地下鉄・つくばエクスプレス南千住駅から徒歩12分
市場の食堂で見つけた八戸ラーメンに舌鼓『かどのめし屋 海鮮食堂』[千住大橋]

海鮮丼や焼き魚、天ぷらなど、さまざまなメニューが品書きに並ぶ市場食堂の看板は、八戸ラーメン。「八戸に行ったときに食べたら、妻がハマっちゃって」と笑う店主の繁田秀幸さん。八戸の商工会議所から認定を受け、麺とスープは現地から取り寄せている。細ちぢれ麺に煮干しと昆布、鶏のスープがよく絡み、安心感のある味にまったり。セットで丼も合わせて食べれば、活力がみなぎる!


『かどのめし屋 海鮮食堂』店舗詳細
かどのめし屋 海鮮食堂
住所:東京都足立区千住橋戸町50 足立市場内/営業時間:7:00〜14:00/定休日:日/アクセス:京成本線千住大橋駅から徒歩5分
煮干しと鶏白湯の合わせ技で余韻のある旨味を作り出す『麺屋 音』[北千住]

麺にトロリと絡む、煮干しと鶏のダブルスープ。高火力で長時間煮込んだ煮干しは、ガツンと強く香り立つ。そこに鶏白湯が合わさることで、煮干しの苦みが中和され、まろやかに。秘伝の醤油ダレの風味も加わり、濃厚だがくどくない、上品な味わいに仕上がっている。「途中まで食べたら、卓上の花山椒を」と、店主の原 直樹さん。ミルで削って振りかければ、さわやかな香りが次の一口を誘う。


『麺屋 音』店舗詳細
麺屋 音
住所:東京都足立区千住3-60 土井川ビル1F/営業時間:11:00〜24:00/定休日:無/アクセス:JR・私鉄・地下鉄・つくばエクスプレス北千住駅から徒歩5分
総重量1㎏弱のヘビー級!『キッチンフライパン』[北千住]

出されて聞かずにはいられない。これ普通の量ですか? 「はい、ごはんとキャベツの千切りとカツで1㎏弱かな」と会津出身の伊藤正美さん。会津ソースカツ丼は豚ロースとヒレが本場の主流だが、地元の大学生のためにリーズナブルなチキンも用意。むね肉をパサつかないように揚げ、マル秘自家製ソースにくぐらせる。会津産コシヒカリのごはんもモリモリ。自信がなければ遠慮せず少なめを頼もう。


『キッチンフライパン』店舗詳細
キッチンフライパン
住所:東京都足立区千住1-23-18/営業時間:12:00〜13:30・18:00〜20:30LO/定休日:日/アクセス:JR・私鉄・地下鉄・つくばエクスプレス北千住駅から徒歩7分
取材・文=佐藤さゆり・高橋健太(teamまめ)、鈴木健太、下里康子 撮影=鈴木愛子、山出高士、丸毛透、井原淳一