2019年11月にホテルのシグニチャー・ラウンジとしてオープンした『abno』。オープン以来、ホテルの利用客だけでなく仕事場や友人との時間を楽しむ場として、幅広い層の人々に利用されている。その人気の秘密を支配人の草野謙尚さんに伺った。

注目のコーヒーロースターの豆を使い、バリスタが丁寧に淹れるコーヒーは“必飲”

神田川のすぐそばに建つ『DDD HOTEL』のカフェ&バーとして営業を行う『abno』。靖国通り沿いに面するホテルの前に到着すると、重厚感のあるドアがお出迎え。横に自動でスライドして開く造りが、どこか特別感を与える。

1階には2021年にミシュラン1つ星を獲得したキッチンスペース『nôl(ノル)』と、立体駐車場だった場所を再活用したギャラリー『PARCEL(パーセル)』がある。いずれも、このホテルに併設する施設だ。

取材時には、東京を拠点に活動するアーティスト・DIEGO(ディエゴ)の個展が開催されており、入り口脇のスペースにも絵画が展示されていた。

エレベーターで2階へ上がると、ホテルのフロントにたどり着く。そのすぐ隣りで営業を行っているのが『abno』だ。フロントと『abno』のカウンターはシームレスにつながっており、無駄なものを感じさせない。

カウンターに向かい合うように配されているソファとテーブル、その脇には6人掛けの長テーブル、窓際に面した座席も用意されている。モスグリーンを基調とした配色は、客室ともリンクしているようだ。

奥には、若干明かりを落としたムーディーな雰囲気の座席エリア。バーカウンターもあり、夜にはバースペースとして開放されているという(2022年1月現在、新型コロナウイルスの影響によりバー営業は休止中)。中央にはバイオエタノールの暖炉があり、室内にいながら、ゆらめく炎を前にお酒を楽しむことができる。

ホテルの施設だけあり、時間帯によって異なる顔を見せるのも、このカフェの特徴だ。7時から10時には宿泊客の朝食の場として使用され、オープン時間となる10時以降は仕事をする人や友人との時間を過ごす人、昼時になるとランチ利用の客が訪れる。夜にはしっとりと酒をたしなめる場になり、様々な利用の仕方を提供している。

カフェメニューは、スペシャルティコーヒーをはじめとするドリンクと、『nôl』の若手シェフらが作るパスタなどのフードを用意(パスタは15時までの提供)。

コーヒーは、デンマークでは知らない人がいないというほど有名なコーヒーロースター『Coffee Collective(コーヒー コレクティブ)』の豆を使用する。「このブランドのコーヒーを提供する店は、都内でもここを含め3店舗ほどしかありません」と、草野さんは話す。

ここでは常時5種類ほどのシングルオリジンの豆を扱う。どれも浅煎りが中心となるが、産地ごとに香りや風味などの違いが分かりやすい味わいに仕上がっている。

例えば、ケニアならフルーティーな酸味と濃厚な甘みが特徴で、カシスやブラックベリーのようなフルボディのテイストを楽しめる。一方、エチオピアはクリアで軽やかなテイストと適度な酸味が特徴。プラムやマンゴーのようなフルーティーな香りを感じられるという。

そんなこだわりのコーヒーをバリスタが豆から1杯ずつ丁寧に淹れていく。「それぞれ味わいに違いがあって、酸味が苦手な方でも飲みやすいコーヒーになっていると思います」とバリスタの遠藤恵美さんが話していたように、スッキリとした酸味で爽やかな後味がクセになる。今回合わせた定番のabnoたまごサンドとも、味を邪魔することなく好相性だった。

ハンドドリップコーヒー650円、abnoたまごサンド500円。
ハンドドリップコーヒー650円、abnoたまごサンド500円。

コーヒー豆は、ほかにオーストラリアのロースター『Single O(シングルオー)』のものも扱っている。両国にもロースターを擁し、そこでは日本の水や日本人の好みに合わせた特別な焙煎が行われているそうだ。こちらは、ブレンドと毎日飲んでも飽きない味わいのシングルオリジン(タンザニア)の常時2種類を用意。

ラテやカプチーノなどエスプレッソを使用するドリンクには、この2つのロースターの豆から日替わりで1種を使用する。毎日味わいに変化をつけることで、常連さんも飽きずに味わえるようなドリンクに仕上げているのだとか。

時代に合わせた多様性を受け入れるホテルへ

37年続いたビジネスホテルをフルリノベーションし、現在の『DDD HOTEL』としてリニューアルオープンしたのは2019年11月のこと。

人々がビジネスホテルを利用する目的が出張滞在だけではなくなった今の時代に合わせて、様々なニーズに応えるホテルづくりを目指した。

「決まった価値観に捉われず、それぞれの旅の目的や好きなものを追求する想いに、ホテルとして寄り添っていけるような場所にしたいと思っています」と、草野さんは話す。

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それは、abnoというカフェ&バーの名前にも通じるところがある。もとはアブノーマルをもじった言葉で、たとえ他人から見てアブノーマルであっても本質を追求する行為を大切にしたい。普通という概念は、人それぞれ違うという意味が込められている。

『abno』が様々な顔を見せるのは、どんな想いを持った人も受け入れる姿勢から生まれるものなのかもしれない。一人一人の多様性を尊重する場所として、これからも訪れる人を懐深く迎え続けてほしい。

『abno』店舗詳細

abno(アブノ)
住所:東京都中央区日本橋馬喰町2-2-1 DDD HOTEL 2F/営業時間:10:00〜20:00/定休日:無/アクセス:JR総武本線馬喰町駅から徒歩2分、JR・地下鉄浅草橋駅から徒歩4分

取材・文・撮影=柿崎真英

柿崎真英
ライター
宮城県仙台市出身。2019年よりフリーランスライター・エディターとして活動中。月刊誌やニュースサイト編集者としてのバックグラウンドを活かして、Webメディアや雑誌などに寄稿を行う。