画材店や画廊など、アート関連の物件が多く集まる神保町界隈。最近は、現代美術から古書までが美しく並べられ、街からアートを自然に取り入れられるようになっています。美しいものを独り占めせず、共有しながら街を活性化する。そんな、この街らしい粋を感じられる施設5選をご紹介します。

市民と都市がシンクロする交流拠点『コミュニティアートスペース 優美堂』[新御茶ノ水・小川町]

1階は座敷と土間からなり、作品を展示・販売。
1階は座敷と土間からなり、作品を展示・販売。

戦後、写真や絵をみやげとする米軍の需要に応え額縁専門店として開業し、長年アート界を支えてきた「優美堂」。数年前に廃業したが、その景観や文化を残そうと、東京ビエンナーレの一環で再生プロジェクトが始動。シンボルの富士山の看板建築もアーティストのO JUNにより描き替えられ、2021年の夏にカフェ併設のコミュニティアート施設が誕生した。まさに街と一体のアートを感じられるスポットだ。

プロジェクトを率いる中村政人さんの愛犬・ののにも運がよければ合えるかも。
プロジェクトを率いる中村政人さんの愛犬・ののにも運がよければ合えるかも。
「ユウビスト」と呼ばれるボランティアや有志が、現在も2階のリノベを進行中。
「ユウビスト」と呼ばれるボランティアや有志が、現在も2階のリノベを進行中。

『コミュニティアートスペース 優美堂』店舗詳細

コミュニティアートスペース 優美堂
住所:東京都千代田区神田小川町2-4/営業時間:11:30〜18:00(木・金・土は〜20:00)/定休日:水/アクセス:地下鉄千代田線新御茶ノ水駅・新宿線小川町駅から徒歩2分

若き芸術家を支援し、未来につなげる『UCHIGO and SHIZIMI Gallery』[神保町]

UCHIGO(うちご)とSHIZIMI(しじみ)は代表者・横山第悟さん愛猫の名前。ベテランのみならず、若いアーティストに発信の場を提供すべく、2020年6月にオープンした。展示は作家に打診して創作してもらうスタイルが基本で、現代アートをはじめ、報道写真や日本画など幅広いジャンルを扱う。中には手頃な作品もあり、ふらっと立ち寄ったビジネスパーソンが買っていくというエピソードがこの街らしい。

画廊と聞いて身構えずに、猫たちに招かれよう。
画廊と聞いて身構えずに、猫たちに招かれよう。
左から2番目が横山第悟さん。墨で染めた外観が印象的。
左から2番目が横山第悟さん。墨で染めた外観が印象的。

『UCHIGO and SHIZIMI Gallery』店舗詳細

UCHIGO and SHIZIMI Gallery
住所:東京都千代田区神田神保町2-11-4 メゾン・ド・ヴィレ神田神保町1F/営業時間:10:00〜18:30/定休日:日・祝/アクセス:地下鉄神保町駅から徒歩3分

古書を新たな視点から味わう新空間『萬響』[神保町]

支配人を務める慶應義塾大学名誉教授の佐藤道生さん。常時60〜70点ほどが、曲線を活かした空間に並ぶ。
支配人を務める慶應義塾大学名誉教授の佐藤道生さん。常時60〜70点ほどが、曲線を活かした空間に並ぶ。

通りに面したガラス越しに、スタイリッシュに並べられた書物に好奇心がくすぐられる。『萬響』は、『小川図書』、『浅倉屋書店』、『キクオ書店』、『衆星堂』、『梁山泊』の東西5つの古書店による和書・洋書のギャラリー兼ショップ。中には月替わりで、博物館ならガラスケースに入るほどの稀少なものも。古書の歴史的価値に触れながら、アートとしても味わえる画期的なギャラリーだ。

古書店街で一際目を引く外観が目印。
古書店街で一際目を引く外観が目印。

『萬響』店舗詳細

萬響(ばんきょう)
住所:東京都千代田区神田神保町2-7 /営業時間:11:00〜18:00/定休日:日・月・火/アクセス:地下鉄神保町駅から徒歩1分

震災・戦災・再開発をも生き抜いた『Gallery 蔵』[新御茶ノ水]

1917年竣工、2013年移築。
1917年竣工、2013年移築。

『御茶ノ水ソラシティ』と『ワテラス』を結ぶ通路脇にある貸しギャラリー。大正6年(1917)、淡路町に書籍商の書庫蔵として建てられ、基礎がレンガ造りだったため、震災と戦災を免れた。1983年からは「淡路町画廊」となり、2010年に解体が決まるも、保存を望む声が多く、可能な限り当時の建材を使い、この地に復元された。一般公開も実施(ギャラリー利用のない水の11〜19時と土・日・祝の10時30分〜18時30分)。

移転前の金網の補修跡もそのまま残してある。
移転前の金網の補修跡もそのまま残してある。

『Gallery 蔵』店舗詳細

Gallery 蔵
/営業時間:一般公開はギャラリー利用のない水の11:00〜19:00と土・日・祝の10:30〜18:30

折り紙の深遠な魅力と歴史に触れる『お茶の水 おりがみ会館』[御茶ノ水]

幕末から続く紙染店が運営し、ギャラリー、ショップはもちろん、染め工房も見学自由。さらに、おり紙や和紙に関する教室も行う(要予約)。ちなみに明治時代、初代文部大臣の森有礼(ありのり)によって日本の幼児教育におり紙が取り入れられ、教育機関から依頼を受けた初代・小林幸助はおり紙の大量生産を開始。そのことから、会館のある湯島1丁目は「教育おり紙発祥の地」と呼ばれている。

染め工房で使用する刷毛。それぞれ毛丈や毛幅が異なり、用途によって使い分けている。
染め工房で使用する刷毛。それぞれ毛丈や毛幅が異なり、用途によって使い分けている。
ショップにはおり紙だけでなく、和紙も豊富に揃う。
ショップにはおり紙だけでなく、和紙も豊富に揃う。
染め工房は見学可。写真は職人が下染めを済ませた和紙に刷毛で模様を描く場面。虎にちなんだデザインで、館内のショップでも販売される。
染め工房は見学可。写真は職人が下染めを済ませた和紙に刷毛で模様を描く場面。虎にちなんだデザインで、館内のショップでも販売される。
おり紙様(館長)小林一夫(かずお)さん。「せっかく来たんだから一緒に折りましょう!」。
おり紙様(館長)小林一夫(かずお)さん。「せっかく来たんだから一緒に折りましょう!」。
取材中も絶えず手を動かし、次々と作品を生むおり紙様。
取材中も絶えず手を動かし、次々と作品を生むおり紙様。
「どんな紙でも作れます」と箸袋は犬の形の箸置きに。
「どんな紙でも作れます」と箸袋は犬の形の箸置きに。

〜おり紙様・神の手さばきをご覧あれ〜

しゃべりながらも、手元をほぼ見ずに何かを作り始めた。
しゃべりながらも、手元をほぼ見ずに何かを作り始めた。
こちらが話に聞き入り目を離している隙にも工程は進む。
こちらが話に聞き入り目を離している隙にも工程は進む。
虎(寅)。自社製紙「江戸歌舞伎 虎用」を使用。歌舞伎模様が虎柄にも見え、とても華やか。
虎(寅)。自社製紙「江戸歌舞伎 虎用」を使用。歌舞伎模様が虎柄にも見え、とても華やか。
折り目は適当でOK。「その方が個性が出ていいんです」。
折り目は適当でOK。「その方が個性が出ていいんです」。
紙に動きをつけるためピンセットなど道具を使うことも。
紙に動きをつけるためピンセットなど道具を使うことも。
緑の折り紙で作った葉にのせて、できあがり。ものの数十秒できれいな薔薇に。ちらりとのぞく金色が粋。
緑の折り紙で作った葉にのせて、できあがり。ものの数十秒できれいな薔薇に。ちらりとのぞく金色が粋。
ショップ片隅では不定期でデモンストレーションが行われる。
ショップ片隅では不定期でデモンストレーションが行われる。
おり紙様が作った桜(左)と、ライター&編集者による合作。
おり紙様が作った桜(左)と、ライター&編集者による合作。

『お茶の水 おりがみ会館』店舗詳細

お茶の水 おりがみ会館(おちゃのみず おりがみかいかん)
住所:東京都文京区湯島1-7-14/営業時間:9:30〜16:30/定休日:日・祝/アクセス:JR・地下鉄御茶ノ水駅から徒歩5分

取材・文=木村悦子、信藤舞子 撮影=山出高士、井原淳一