寝ても覚めても彼らのことを考えている。 昨年から、関西ジャニーズJr.の6人組「Aぇ! group」にどハマりしているのだ。 きっかけは、なにげなく見ていた「なにわ男子」のYouTube動画にAぇ! groupというワードが出てきて、「へぇ、そういう人たちがいるのか」と動画を見てみたこと。 第一印象は「なんかアイドルっぽくない人たちだなぁ」。アイドルというより面白い大学生って感じだ。全員トーク力が高く、普通に話しているだけで笑いが生まれる。だけどそれほどテンションが高いわけではなく、見ていて心地がいい(あとで知ったが、メンバーの半数が20代後半なので落ち着いているのだ)。 「安心して見ていられるグループだなぁ」と動画を見ていたらパフォーマンス動画を見つけ、歌とダンスのかっこよさにやられてしまった。トークとのギャップがものすごい。なんていうか、濁流に飲まれるように引き込まれてしまう。 私はあらゆる配信サービスを駆使してAぇ! groupの映像を見漁った。たぶん、合法的に視聴できる過去映像はほとんど見たと思う。ライブチケットを取るため『ジャニーズJr.情報局』に入会したし、大阪エリアのラジオ放送を聴くためradikoに課金した。言わずもがな、メンバーがテレビに出れば必ず視聴する。 まさか自分が、年甲斐もなくジャニーズにハマるとは。 自分でもビックリなのだが、気づけばいつも彼らのことを考えているのだった。

Aぇ! groupに出会って、私の日常は変わった。「支え」ができたのだ。

〆切に追われてヘロヘロで原稿を書いていても、Aぇ! groupのラジオがあれば頑張れる。インタビュー前、ガチガチに緊張したときは、彼らの楽曲『Break Through』の「大丈夫 きっとうまくやれる」というフレーズに勇気付けられた。

もっとも支えられたのは、今年の2月頃、メンバーの正門くんがラジオで言った言葉。

彼は「SEの仕事が精神的に限界。誰かに褒められることもお礼を言われることもなく、毎日ギリギリで働いてる」というリスナーからのメールに対して、

「僕らはライブでお客さんの顔が見えるけど、顔の見えない相手のために働くって大変ですよね」「でも、あなたの仕事によって、どこかの誰かが確実に助けられてますよ」

と応えた(録音していたわけではないので正確な言い回しではない)。

私はその放送を取材帰りに聴いていたのだけれど、あやうく駅の階段でしゃがみこみそうになった。そのくらい、正門くんの言葉にグッときたのだ。

ライターの仕事は、読者の顔が見えるわけではない。稀にSNSなどで記事の感想をいただくこともあるが、基本的には読者の反応はわからないものだ。そのせいか、たまにふと「私がこの記事を書くことに意味があるのかな」と虚しくなることもある。

このときもそんな気持ちで歩いていたから、ラジオから流れてきた正門くんの言葉に、背中を優しく叩かれたようだった。そして、過去に読者の方からいただいたうれしい言葉の数々を思い出す。

そうだ。私が書いたものも、きっとどこかの誰かの助けになってる。

その言葉は付箋に書いて心に貼っておきたいくらい、私にとって大切なものとなった。

さて、Aぇ! groupは関西ジャニーズJr.なので、大阪を中心に活動している。コンサートも大阪で開催されることが多い。私は東京在住だが、Aぇ! groupを生で見られるのなら大阪でもどこでも行こうじゃないか。

そう意気込んだものの、コンサートや舞台のチケットは毎回落選。Aぇ! groupに会いたい気持ちと、会えないフラストレーションが日に日に募っていく。

特に、正門くんのソロコンサートを見られなかったのはかなりの痛手だった。SNSでソロコンに行った人のレポを読んでは、想像上の正門くんにときめいたり、その場にいないことが悲しくて泣きたくなったり。完全に情緒不安定だ。

そんなとき、大阪に住む姉から「子供たちが春休みの間、遊びに来ない?」と誘われた。

姉の子供たちとはもう3年も会っていないから、久しぶりに会いたい。それに……Aぇ! groupがいる街に行きたい。私は、二泊三日で大阪へ行くことにした。

当日は、梅田で姉と子供たちと再会。この春高校生になった甥はおしゃれハンバーガーショップ『シェイクシャック』に連れて行ってくれて、「この味を知っちゃうとマクドには戻れないんだよなぁ」とわかった風なことを言った。また、小5の姪は「サキちゃんとヴィレッジヴァンガードに行きたい!」と言う。梅田なんておしゃれな雑貨屋さんがいくらでもあるだろうに、ヴィレヴァンに行きたがるところが小5っぽくて可愛い(ちなみに、この甥と姪の間に中学生の甥もいるのだが、用事があって梅田には来れなかった)。

その夜は姉の家でたこ焼きパーティーをした。翌日は大きな公園でお花見。ちょうど桜が満開で、バレーボールをしたり、テイクアウトのカレーを食べたりした。

そんなこんなで楽しい時間を過ごし、あっという間に東京に戻る日。私は17時台の新幹線を予約していたが、14時頃に姉の家をあとにした。1人で行きたい場所があったのだ。

それは、正門くんがソロコンサートをおこなった『大阪松竹座』。この日は正門くんのソロコン千秋楽の数日後で、つまりは松竹座に行っても正門くんはいないのだが、建物だけでも一目見たかった。

電車を乗り継ぎ、なんば駅で降りる。広い駅の中をしばしさまよってから地上に出て、グーグルマップを頼りに松竹座を目指した。角を曲がるとベージュの趣きある建物が現れる。写真で見た松竹座だ。

ここが、正門くんがソロコンを完走した場所。Aぇ! groupのみんなが青春を過ごした場所……。

4月とは思えないほど暑い日で、午後の日差しを浴びた松竹座はうっすら輝いて見えた。

松竹座の前には大学生くらいの女の子が数人いた。この日の松竹座ではジャニーズJr.の「Lil かんさい」と「少年忍者」によるイベントが開催されていて、私が行った時間帯はちょうど昼公演中。彼女たちは夜公演を待っているのか、それとも私のようにただ建物を見に来たのか。

ロングヘアの女の子が、ニシタクくん(Lil かんさいの西村拓哉くん)のぬいぐるみを松竹座にかざして写真を撮っていた。その横顔があまりにも幸せそうで、私は思わず息を飲む。

彼女の日々にもきっと、いろいろなことがあるだろう。学校やバイトが辛かったり、人間関係に悩んだり、進路に不安を感じたり。そんなとき、彼女がどれだけニシタクくんの存在に救われてきたことか。あのちびぬいが、どれだけ彼女に寄り添ってきたことか。

それを想像すると目が潤む。心の中で「ニシタクくん、ありがとうね。この子のことを頼んだよ」と、どの立場からかわからないエールを送った。

私がまったく知らない女の子の日々に思いを馳せたのは、彼女に自分を重ねたからだ。

私は好きな仕事をして、好きな人たちに囲まれて生きている。おおむね自分の人生に満足しているし、誇りを持っているつもりだ。

それでも時折、「えーと、私ってなんのために生きてるんだっけ……」と心にぽっかり穴が開く。訳あって夫と遠距離で暮らしていることや、私の収入が家計を支えていること、子供がいないこと。普段は気にならないこれらの要素が、ふとした瞬間心に穴を開けるのだ。

その穴を埋めてくれたのがAぇ! groupだった。もちろん、Aぇ! groupのために生きていると言えば、それは大げさだし嘘になる。だけど、家族でも友人でも仕事でも埋まらない穴にぴったりハマったのが彼らであることは事実で。

私の空虚をAぇ! groupが埋めているように、ロングヘアの彼女の空虚は、きっとニシタクくんが埋めている。それってなんだか、とてつもないことじゃないか?

私は、誰かにとってそういう存在になれるアイドルを心から尊敬するし、同時に少し、羨ましくもあった。

そのあとは大阪城公園駅に移動し、西日に染まる『大阪城ホール』を見た。Aぇ! groupが関西ジャニーズJr.としてコンサートをした場所。そして、正門くんが「(いつか単独で)城ホ埋めるぞ!」と言った場所。

しみじみした気分で大阪城ホールをあとにし、新大阪駅へ。時間の読みが甘かったらしく、新幹線に乗り遅れそうになって焦った(ギリギリ間に合った)。radikoでAぇ! groupのメンバーが出演するラジオ番組を聴きながら東へ向かう。

明日は午前中から取材だ。朝早いから、家に帰ったらすぐにお風呂に入って寝なきゃ。初めて書くメディアだから緊張するな。

でも、きっとやれる。だって、イヤホンの向こうにはいつもAぇ! groupがいてくれるから。

新幹線が新横浜のホームに滑り込む。夜のホームに降り立った私は、やっぱり彼らのことを考えていた。

文・写真=吉玉サキ(@saki_yoshidama)

吉玉サキ
ライター・エッセイスト
札幌市出身。北アルプスの山小屋で10年間働いた後、2018年からライターに。著書に『山小屋ガールの癒やされない日々』(平凡社)、『方向音痴って、なおるんですか?』(交通新聞社)がある。山では迷ったことがないが、下界では方向音痴。