……全て終わった。オレの愛の再開発が頓挫したお台場。オレは幸せの絶頂から絶望の淵へ。観覧車ではなく勝手にジェットコースターに乗ったオレ。今の彼女の前で高校時代の彼女の名前を間違って呼ぶという致命的なミスだ。一番やっちゃいけないやつじゃないか。 どうするオレ。 どうにかしてエルボーに謝らなければ。このまま終わるのは嫌だ。

どうするか。LINEはだめだ。ここは電話だな。

「……もしもし。今電話大丈夫?」
「……まあ。」
「ごめん。なんか浮かれてた。」
「浮かれてると違う女の名前呼ぶんだ?」
「いや、高校の頃のこと思い出して……と、とにかく会ってもらえないかな!?」

そしてエルボーはやってきてくれた。

まずはめちゃくちゃ謝る。この際だから、もうなんでもエルボーにしゃべっちゃえと思って、『東京散歩地図』のルートに沿って散歩してることをカミングアウトしてみたら、実はエルボーもこの本を持っていて、薄々勘づいていたみたいで、「なんだそーだったんだ」みたいな話で盛り上がった。

こういう偶然がなんだかうれしかったりするんだよな。さあ、今回は第10回の麻布十番・六本木だ。どちらかというと夜に来ることが多い六本木だが、今日は青空が気持ちいい。よし。まず手始めの街探検は、ここ六本木ヒルズから。

2003年4月にグランドオープンした六本木ヒルズの面積なんと11ヘクタール。
2003年4月にグランドオープンした六本木ヒルズの面積なんと11ヘクタール。

エルボーといっしょに青空を見上げる。エルボーは言った。

あ、大きい蜘蛛がいる!!!

よく見ると、この巨大蜘蛛は卵を抱えている。ご存知の方も多いでしょうけど、名前はママンです。この巨大蜘蛛はお母さんなのです。たぶんいろんな意味で、お母さんなのでしょう。そんなママンは今日も、か細い足で一生懸命ふんばっていました。

ママンのお腹の下に入ると不思議な安心感を味わえます。お試しあれ。
ママンのお腹の下に入ると不思議な安心感を味わえます。お試しあれ。

六本木ヒルズは「ヒルズ」という名のとおり小高い丘になっている。行ったことある人はわかると思うけど、地下鉄の駅から歩いて、しばらくすると六本木ヒルズに到達する長いエスカレーターがあるでしょ。あれに乗ってようやくたどり着ける。地上の六本木通りからでも標高差は10メートルくらいあるのかな。けっこうな標高だよね。そりゃ展望室からは絶景が楽しめるというわけだ。

「高度利用地区」って六本木ヒルズと何の関係があるの?

ちなみにですが、六本木ヒルズは都市計画法での「高度利用地区」と、都市再開発法での「市街地再開発事業」という都市計画(プロジェクト)で作り上げられた、東京を代表するひとつの大きな街だ。

「高度利用地区」はその名のとおり、その地区を高度利用しようという地区で、そこで建てられる建物の規模を規制している容積率とかを大きい数値で指定できるので、ふつうでは建てられないような超高層ビルを堂々と建てることができるようになる。

ちなみにですね、高度利用地区の定義はこんな感じ。都市計画法から引用してみます。

高度利用地区は、用途地域内の市街地における土地の合理的かつ健全な高度利用と都市機能の更新とを図るため、
①建築物の容積率の最高限度及び最低限度
②建築物の建蔽率の最高限度
③建築物の建築面積の最低限度
④壁面の位置の制限
を定める地区とする。

ということで、高度利用地区内には「容積率の最低限度」とか「建築面積の最低限度」が特別に定められるので、それにしたがった建築物を建築していくことになる。最低限度ということだから「それよりも大きい建築物にせい」ということ。なので結果として「土地の高度利用」となる。

そして定義のところに「都市機能の更新」っていうのがあって、これは「作り直しちゃおう」みたいな意味合い。なので高度利用地区の対象となるのは、せっかくの街ナカの一等地なんだけど、昔ながらの木造密集地が残ってる……みたいなところなのだ。

この区域は約11.6haで、東京ドームグランド面積の約8倍にも達する。六本木の再開発前は、資料によると『狭隘(きょうあい)な道路が残る市街地』で、『防災上難点のある地域』だったらしい。でも当然のことながら、今はむかしの面影なし。

「市街地再開発事業」ってなんだ?

で、その高度利用地区で「市街地再開発事業」というプロジェクトを進めていくわけで、その段取りを定めているのが都市再開発法だ。

市街地再開発事業とは、ひらたくいうと、地区内の老朽化した木造密集地を再開発して高層ビルをドカーンと建てようというもの。根拠法は都市再開発法で、その都市再開発法の第1条(目的)をご紹介しておきます。

都市再開発法 第1条(目的)
この法律は、市街地の計画的な再開発に関し必要な事項を定めることにより、都市における土地の合理的かつ健全な高度利用と都市機能の更新とを図り、もって公共の福祉に寄与することを目的とする。

都市計画法の「高度利用地区」と同じようなフレーズが入っているでしょ。

ちなみに界隈の地権者は約400名もいたそうで、「それをまとめて街を作り上げた。とってもたいへんだった」というようなことを聞く。

……そういう仕事に携わっていなくてよかったと、つくづく思う。

テーマはズバリ「高低差」

さて。今回のデートコースだが。オレのプランはこれ。港区が公開しているハザードマップに書き込んでみた。隠れテーマは、高低差だ。

オレとエルボーの関係も、すっげー高低差があったりするしな。あはは(やけくそ)。

ピンクに囲んだ部分の横に、池っぽいのがあるでしょ。ヒルズから東側(右方面)に行くと、だんだん低地になっていく。まずは、この池っぽいところに行ってみる。

芝・浜松町・竹芝のデートでも見ていたあの建物が毛利庭園から見える。高くなったなあー。
芝・浜松町・竹芝のデートでも見ていたあの建物が毛利庭園から見える。高くなったなあー。

毛利庭園だ。こんな最先端都市みたいなところに自然があると癒やされる。

 

まさに別世界の毛利庭園。深呼吸したくなります。
まさに別世界の毛利庭園。深呼吸したくなります。

日本の夏はやっぱり最高だな。いや、エルボーといるからかな。

暑いから、蔦屋のスタバで軽くコーヒーを飲んでから麻布十番方面まで歩いてみる。小高い丘から低地方面だ。麻布十番はすり鉢状の低地にある。

途中、こんな擁壁を目にすることができる。

おおっ!!! けっこう迫力がある擁壁。草が生えてる。
おおっ!!! けっこう迫力がある擁壁。草が生えてる。

六本木ヒルズからの高低差がおもしろい。こんな感じで坂が入り組む交差点もある。

海抜とか標高とかを意識して歩くのも楽しいよ。
海抜とか標高とかを意識して歩くのも楽しいよ。

向こう側の白い壁のところの全体像を見てみようと、横断歩道を渡ってみた。なるほどたしかに。

このへんはすり鉢状の低地なんだなと実感できる。

地下鉄「麻布十番駅」に向かう環状3号線。
地下鉄「麻布十番駅」に向かう環状3号線。

ちなみに、このあたりは土砂災害警戒区域に指定されている。もちろん港区にも土砂災害警戒区域は何か所もあって、ハザードマップで場所を確認することができる。

港区のホームページでも、「雨が降り続いたり、短時間でも大量の雨が降る場合には、場所によってはがけ崩れが起きる可能性があるよ。住んでいる場所が危なくないか事前に確認してね。大雨が予想される場合には気象情報等への注意をしてね。」と呼びかけている。

すり鉢状や低地っていう地形は、がけ崩れが起こりやすい土地とも言えるんだ。念のためだけど、土砂災害警戒区域は「急傾斜地の崩壊等が発生した場合には住民等の生命又は身体に危害が生ずるおそれがあると認められる土地の区域」だ。住民等の生命又は身体に危害が生ずるおそれがあるわけだから、その危険の周知、警戒体制の整備が行われるよ。

こんなところに大きなカエルが。
こんなところに大きなカエルが。

あ、かわいいじゃん。

エルボーが近寄っていく。
エルボーが近寄っていく。

……あれ、エルボーのスマホに着信だ。

なんとなく、だけど、電話に出てからエルボーの雰囲気が変わった。

カエルを見ていたエルボーが我にカエル……うんうん、そんな感じ。なんだろ。ざわつく気持ちを抱えながら、歩いて麻布十番商店街まで行ってみる。結構古い店も残ってるなあ。かつては武家屋敷があったらしい。

こんな街だからこそなのか、懐メロのお店があった。

今日のデートの最後は『歌京』だ。

綺麗な店内で懐メロが楽しめるぞ。
綺麗な店内で懐メロが楽しめるぞ。

「あ、SMAP懐かしい!!ミスチルも聴きまくってたよね(笑)」
やっぱり中学や高校のくらいで聞いていた曲はずっと好きなのかもしれないな。

……?エルボーの反応がない。あれ?

エルボーが涙ぐんでいる。

やば。なんだなんだ。なにがあったんだ。(次回へ続く)

文・撮影=宅建ダイナマイト執筆人(おーさわ校長・ひのきP・タキAD)

宅建ダイナマイト合格スクール
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「宅建」は難しいイメージがあるかもしれないが、ほんとうはめちゃくちゃ面白くて、学べば街も日本ももっと好きになる!!いつも愉快なおーさわ校長と、ひのきPが日々「おもしろくてわかりやすい宅建」を追求している。