品川駅港南口から徒歩3分ほどの場所に飲食店が密集した飲食店街がある。日に日にハイパーシティへと発展していく品川とは相反するザ・昭和な横丁だ。人ひとりがやっと通れる細道を突き進んでいくと赤提灯が灯る居酒屋がある。その名も『路地裏 品川本店』だ。しばしばマスコミにも取り上げられ人気なのは旨辛牛すじ煮込み。昼夜提供しており、ランチはこれを目掛けてやってくるサラリーマンが後をたたない。

1985年創業、品川で働く人たちの貴重な食堂兼居酒屋

1985年創業の『路地裏 品川本店』。赤い提灯には「ホッピー」、「牛すじ煮込」、「串焼」、「ホルモン焼」の文言が浮かび上がっている。ちょっと寄ってみようかな、と思わせるのは提灯の赤色か、はたまたメニュー名なのか。この店の前で何かを感じ取った筆者の鼻がヒクヒクしてきたので、ガラリと引き戸を開けた。

味のある路地によく似合うムード満点の店構え。
味のある路地によく似合うムード満点の店構え。

対応してくださったのは、店長の小野寺裕一さんだ。小野寺さんは、今はなき「路地裏五反田店」で働き始め、2015年に勝どき店の店長になった。そのあと上野店など店舗を転々としながら、2018年に品川本店の店長に就任。

「ランチタイムはサラリーマンでいっぱいです!」と語る小野寺さん。
「ランチタイムはサラリーマンでいっぱいです!」と語る小野寺さん。

「『裏路地 品川本店』は30年以上やってるんですけど、もともとはうなぎ屋だったらしいんです。いろんな業態に変化しながら今のような居酒屋になったと聞いています。以前は五反田や勝どきにも店があったのですが、現在はここのほかに上野店があります」。

昭和の雰囲気が漂う店内。1Fはカウンターがメイン。
昭和の雰囲気が漂う店内。1Fはカウンターがメイン。

さらに小野寺さんは、「オーナーのママさん(創業者の奥様)は、未だにふらりと店にやってくるんです。お客さまが恋しくて、店に来ないとウズウズしちゃうみたいですね。そのときに聞いた話だと、今はあり得ませんが、昔は芝浦の食肉市場で働く人が、作業服を血だらけにしたまま食事をしにくることもあったって言ってました。すっかりビジネス街になった品川ですけど、この横丁は今も昔もここで働く人たちを癒やす場所なんですよね」と教えてくれた。

ランチで最高120食も提供した旨辛牛すじ煮込

オフィスがひしめく品川。小野寺さん、品川のランチタイムの様子はいかがですか?「ランチタイムは本当に混み合います。そもそもこの辺りはサラリーマンの数と店の数が合ってないと思うんですよ。コンビニだって行列になってるんですから」と渋い顔。その様子からもランチタイムの壮絶さがうかがえる。

旨辛牛すじ煮込がダントツの人気だが、次点は石焼牛すじ丼だそう。
旨辛牛すじ煮込がダントツの人気だが、次点は石焼牛すじ丼だそう。

『路地裏 品川本店』のランチメニューは、旨辛牛すじ煮込を筆頭にした定番が5種、日替わりが1品ある。「やっぱりダントツ人気は旨辛牛すじ煮込ですね。ランチで来た人の80%くらいの人がこのメニューを注文して、今でもだいたい100食は出ます」という。それならぜひ旨辛牛すじ煮込定食800円をお願いします!

大きな寸胴鍋に煮込まれる牛すじ。スタッフが店にいる間はずっと煮込んでいるという。
大きな寸胴鍋に煮込まれる牛すじ。スタッフが店にいる間はずっと煮込んでいるという。

もとはママさんがまかない用に作ったのが発祥とされる旨辛牛すじ煮込。A4クラスの国産牛のすじを使っているので上質な脂で肉が柔らかく、リッチなテイストなのだ。「昔、牛すじはカスだと思われていました。だからまかないだったんでしょうね。近年は値段が高騰してきているんですが、お値段据え置きで頑張っています(笑)」。

小野寺さんが続ける。「そのおいしい牛すじを丁寧に下処理して、数種類の唐辛子や醤油、ニンニクなどを入れ12時間以上煮込んでいます。肉を柔らかくするのに砂糖を入れるのもポイントですね」。

真っ赤な油がいかにも辛そう! でもそれが食欲をそそる。
真っ赤な油がいかにも辛そう! でもそれが食欲をそそる。

注文してすぐ運ばれてきた。ホントに早い! 唐辛子とビーフの香りがたまらない〜。熱いうちにいただきます!

旨辛牛すじ煮込とご飯、味噌汁、漬物がつく。
旨辛牛すじ煮込とご飯、味噌汁、漬物がつく。

居酒屋によくある牛すじ煮込やどて焼きは細切れで食べやすくなっているが、この牛すじは口いっぱいになるほど大きい。大根とこんにゃくも入っているのだが、いちばん大きな具材が牛すじなのだ。

食べてみると、筆者の感覚では辛みもあるが旨味もあり“旨辛”の看板に偽りナシ! 唇に汁がつくと少しヒリっとする感じだ。大きな牛すじはしっかり繊維があるものの箸で切れるほど柔らかく、ご飯をモリモリ食べたくなる。これはパワーがつくなあ!

辛さがクセになり、最後の汁までご飯にかけて食べたい!
辛さがクセになり、最後の汁までご飯にかけて食べたい!

「以前は激辛牛すじ煮込みだったんですよ。でもお客様から『辛すぎる!』という声が多数聞こえてきたので、これでも少し辛味を押さえたんです(笑)。もっと辛味が欲しい方は別の鍋で辛く味付けた牛すじを仕込んでいるので、スタッフにお声掛けください。お客様のなかには卓上にある唐辛子をかけて食べる方もいますよ」。

筆者にはこれくらいがちょうどいい。ハマる人はこれしか注文せず、毎日のように食べにくる猛者もいるとか。弁当としてテイクアウトもできるそうなので、忙しいときには便利だ。

夜は旨辛牛すじ煮込とみそだれのホルモン焼きが、ほろ酔いサラリーマンに人気

ランチに違わずこの店には夜もお客さんが後を絶たない。「品川には一杯飲む場所も少ない」と小野寺さんは嘆く。いや、その分この店にお客さんがたくさん来るのだから本音は万々歳か。年齢層は20代後半〜50代くらいの男性が多く、やはり夜も旨辛牛すじ煮込をオーダーする人は多い。

合わせる酒は筆者なら絶対ビールを選ぶが、どんなお酒にも合いそう。何とでも合うし汎用性の高いからこのメニューは人気が高いのだろう。

日替わりは黒板に表示。新鮮なホルモンを使った料理は食肉市場が近い品川ならでは。
日替わりは黒板に表示。新鮮なホルモンを使った料理は食肉市場が近い品川ならでは。

「お酒はビール、焼酎、日本酒、ウイスキー、あとはホッピーなどひと通り置いていますよ。芝浦の食肉市場で牛すじをはじめ新鮮な食材が仕入れられるので、ホルモン焼きが人気ですね。うちのホルモンは味噌だれでおいしいですよ!」

やや古いデータではあるが、「今もランキングはそれほど変わっていません」と小野寺さん。
やや古いデータではあるが、「今もランキングはそれほど変わっていません」と小野寺さん。
ゆったり座れる2階席もある。
ゆったり座れる2階席もある。

それじゃあ、次は夜に来てビールと一緒に旨辛牛すじ煮込やホルモン焼きを食べるのを楽しみにしよう!

路地裏 品川本店(ろじうら しながわほんてん)
住所:東京都品川区港南2-2-4/営業時間:11:00~14:00・17:00~24:00LO/定休日:無/アクセス:JR・私鉄品川駅から徒歩3分

構成=アート・サプライ 取材・文・撮影=パンチ広沢

アート・サプライ
編集プロダクション
1971年創業の編プロ。「旅&食&散策」ジャンルに強く、情報誌では子供向けから鉄道やドライブでの大人旅まで。さらにグルメ系ではラーメンや唐揚げ専門情報誌をはじめ、日本全国うまいもの紹介なども手掛けている。