浅草寺を抜けると、浅草観音裏と呼ばれるエリアがある。いわゆる裏浅草だ。老舗の名店から、個性的な新店が揃う、隠れたグルメスポットである。今回ご紹介する『三玄路 (micro)』も、2022年12月に3周年を迎える裏浅草のニューフェイスだ。 microのコンセプトは3つ。レコード、骨董、立ち呑み。軒先にある杉玉代わりのミラーボールが目印で、中を少し覗いただけでも、DJブースに骨董品、コの字型の立ち呑みカウンターと、3本柱のワクワクが伝わってくる。和テイストの店内が、伝統ある浅草に通じるところもあり、どこか懐かしく、居心地がいい。 3つの“玄人”であり、浅草“3”丁目で、浅草寺北側の“路地”にあることから“北”を表す“玄”を用い、『三玄路』と漢字が当てられている。その粋な字面と、ニュー・ウェーブ感ある響きの『micro』に迫ってみたい。

ファッションから音楽、そして飲食へ

店主のホーリーさんと、骨董セレクトもするスタッフのショウコさん
店主のホーリーさんと、骨董セレクトもするスタッフのショウコさん

店主の赤堀誠さんは岐阜県出身で、あだ名はホーリー。ファッションデザイナーを目指し、東京の専門学校へ進む。ニューヨークでファッション関係の仕事に受かるも帰国し、映画の衣装やカルチャーに携わる。音楽好きが高じてブルーノートで働いていた時、一生続く職業を考え、元々デザインをやりたかったこともあり、洋服より大きなものをと内装や建築へとスポットが変わっていく。

内装業が落ち着いたタイミングで、中学時代から好きだったファッション雑誌や洋雑誌に触発され、いつか自分の店を持ちたいという思いから、清澄白河に『medium(ミディアム)』をオープン。ブルーノート時代の経験を活かし、飲食の店ということでメキシカン料理の店となった。

店内に入ると骨董とレコードがずらりとお出迎え!
店内に入ると骨董とレコードがずらりとお出迎え!

元は駐車場! ストリート感ある浅草で

お面やレコードと顔を揃えるカウンター。照明も素敵!
お面やレコードと顔を揃えるカウンター。照明も素敵!

2013年にオープンした『medium』が落ち着いてきた頃、骨董集めが好きなことから、和テイストの2号店を考えはじめる。狙いを定めたのは鎌倉か浅草。どちらも歴史のある街。裏に行けば吉原や観音裏などちょっと色気のある店があり、面白い個人店などのカルチャーやストリート感もある浅草に狙いを絞る。

いざ物件を探し始めると全くなく、途方に暮れていたところ、岐阜の骨董屋で出会った2つの棚に一目惚れ。博物館にあったという棚と、格子の扉が特徴的な大きな棚。即購入し、「1ヶ月だったら取り置いてあげますよ」との売り主の提案により、物件探しに拍車がかかる。

そして見つけたのが現店舗。元は不動産屋が駐車場として使っていた2階建1階部分のガレージ。別の人が2階だけ民泊として利用することになったので、改装して借りることに。先ほどの棚2つを引き取り、鎮座させた状態で内装をスタート。お店はすべてホーリーさんの手作り。2つの棚ありきの配置である。

一目惚れした棚のひとつ。もとは博物館にあったという。ザ・存在感!
一目惚れした棚のひとつ。もとは博物館にあったという。ザ・存在感!

音楽好きの憩いの場所に

入口すぐのDJブース。骨董たちもまるで音楽を楽しんでいるよう。
入口すぐのDJブース。骨董たちもまるで音楽を楽しんでいるよう。

2019年12月に『micro』オープン。しかしまもなくコロナ禍に突入してしまい、一時は休業のため低迷していたものの、近頃は軌道にのり、めでたく3周年を迎えた。

お客さんは場所柄、ものづくりをしている人や、浅草での観劇や遊んだ帰りによられる人が多いが、特に様々なジャンルの音楽好きの人。軒先のミラーボールを見て、音楽の店だ!と訪ねてくれるそう。いわば類友である。

基本毎週土曜日にDJイベントを行っている。ホーリーさん自身も、20代前半からDJをやっていて、レコードのコレクターでもある。時にはお店を飛び出し、屋形船や銭湯でも凱旋イベントを開催している。

店にある骨董品は、昔から集めたものや譲り受けたもので、江戸時代から昭和中期の日本のものに限定している。また素材選びにこだわった『micro』のオリジナルグッズも販売中。

ショウコさんデザインのグッズはどれも魅力的なものばかり。ミクロ軍手の可愛さよ。
ショウコさんデザインのグッズはどれも魅力的なものばかり。ミクロ軍手の可愛さよ。

繋がっていく『micro』の魅力

奥にあるのが、もう片方の一目惚れした棚。格子の戸がたまらない。
奥にあるのが、もう片方の一目惚れした棚。格子の戸がたまらない。

『micro』の立ち呑みカウンターにあるお酒は、基本はウイスキーやジン。日本で作っているものを揃えている。またミュージシャンのライブや、お世話になっている人と一緒に日本各地を回って、そのご当地にちなんだフェアを開催。直近では奄美大島フェアが大人気。その時の旬なものを現地で教えてもらって提供している。

ホーリーさん「雑誌の切りぬきじゃないけど、ファッションで音楽を知ったし、建築からアートと、すべてつながって、全部一緒だと思っている。それを全部つなげていきたいし、ひとつじゃなくて、もっともっと、ひっくるめたものがやりたい」

3つのコンセプトにとどまらず、点から線へ、すべてがどんどんつながっていく。ご縁とつながりを大事にする『micro』の魅力ははじまったばかり。留まることを知らない。

ワンカップの美術館のような冷蔵庫。今夜は何を呑もうかな♪
ワンカップの美術館のような冷蔵庫。今夜は何を呑もうかな♪
『micro』名物自家製「塩レモンハイ」。ほんのり苦いのがポイント。
『micro』名物自家製「塩レモンハイ」。ほんのり苦いのがポイント。
出汁から作る、黒糖でとろとろに煮たラフテー入り「沖縄そば」。
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1杯づつ点てる「抹茶ビール」。和と洋の見事な融合!
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ニャンまげのコスプレでDJする声さん♪
ニャンまげのコスプレでDJする声さん♪

三玄路 (micro)(ミクロ)
住所:東京都台東区浅草3-31-9/営業時間:変動ある為Instagramでご確認ください/定休日:不定/アクセス:東武鉄道・地下鉄浅草駅から徒歩約8分

取材・文・撮影=千絵ノムラ

千絵ノムラ
ライター
2月生まれ。横浜生まれ横浜育ち。劇団唐組、ドイツ留学を経て、演劇ユニット「ビニヰルテアタア」を設立。現在、演劇業はちょっとおやすみ。文筆業の他、書店員と渋谷にある水曜日限定の「スナック雨」のママでもある。