今や市民権を得た油そばだが、『ぶぶか』の油そばがカップ麺で発売されたことにより、知名度が全国区になったといっても過言ではない。こってりガッツリの太麺で客の胃袋をわしづかみにする有名店が、なんと最近は野菜たっぷりの油そばも人気という話をキャッチした。『ぶぶか』と「ヘルシー」という思いもよらぬ組み合わせに、ワクワクしながら店舗へ向かった。

みなさんご存知、油そばの草分け的存在です

吉祥寺PARCOのショーウィンドウが目の前というおしゃれなエリアにある。
吉祥寺PARCOのショーウィンドウが目の前というおしゃれなエリアにある。

吉祥寺駅から徒歩2分。PARCO裏のレンガ通りにある『ぶぶか』は、1995年の創業初期から油そばを提供していたという油そばの草分け的存在ともいえる店だ。

明星食品から発売されているカップ麺がカウンターに飾られていた。
明星食品から発売されているカップ麺がカウンターに飾られていた。

創業初期、汁のないラーメンとしてキワモノ扱いされていた油そばだが、2002年『ぶぶか』の名を冠したカップ麺が発売されたことをきっかけに大ブレイク。油そばを全国区のジャンルに押し上げるきっかけとなった。

どうしても求めるのはこってりガッツリの味わい

黒丸味玉油そば840円。
黒丸味玉油そば840円。

大きく分けて、こってり濃厚タレの黒丸と、あっさりタレの白丸の2種類。昔ながらの濃い味を求めるなら迷わず黒丸を選ぼう。どちらも麺は三河屋製麺のオリジナル太麺で、茹で時間は約6分と長め。カウンター奥には「あしからず」として注意書きがあるほどだ。

油そばに関する注意書き。「体調が悪い人はご遠慮ください」の文字も……。
油そばに関する注意書き。「体調が悪い人はご遠慮ください」の文字も……。

創業以来、毎日継ぎ足し続けてきた醤油ダレとオリジナル配合の油が混じり合い、さらにとろりと濃厚になっている。麺にまとわりつき、混ぜるのも一仕事。持ち上げる手にはずしりと重みを感じる。

タレのとろみが強く、麺と絡みあってかなりの重量感がある。
タレのとろみが強く、麺と絡みあってかなりの重量感がある。

ずぞぞぞぞっと麺をすすると、口の中いっぱいに醤油とごま油の風味が広がった。麺は、とろみのついた濃い味付けのタレと油でつるつると滑らか。それでいてもちっと強い弾力で、食べごたえも満点だ。

2日かけて作るという豚バラ肉のチャーシューはオーダーが入ってからあたためているため、脂が甘くほどけ、凝縮した旨味がある。全体のバランスがすばらしく、これこれ!この味!という気分。ひと口食べただけで、人気店であることが納得できる。

だけど「ヘルシー」もあるって本当?

黒丸 草食系油そば910円。
黒丸 草食系油そば910円。

あるんですよ、ヘルシーも。それが黒丸 草食系油そばだ。味をつけたモヤシ、キャベツ、白髪ネギに、茹でたほうれん草がたっぷり。

「ふつうにスーパーで売ってる袋モヤシ1つ分くらい入ってますよ」と店長の乾川さん。見た目からしてインパクトがあったが、実際の量もすごい。ほうれん草も1把くらいありそう。

比喩ではなく、本当に山のようにのる野菜。
比喩ではなく、本当に山のようにのる野菜。

乾川さん曰く、「かなり人気があって、これのおかげで女性のお客さんが増えたような気がします」という。追加トッピングにも、もやし50円、ほうれん草100円があるが、それよりもずっと多い量の野菜がのるというサービスメニュー。このお得感も人気の秘密に違いない。

油そばの麺はすべて共通。野菜の山を崩しながら混ぜる。
油そばの麺はすべて共通。野菜の山を崩しながら混ぜる。

野菜のザクザクとした歯ごたえが太麺のもっちりした歯ごたえと対象的で食べ飽きない。やわらかなほうれん草の甘みも濃い味付けと油にマッチし、見た目よりもずっと食べやすかった。野菜の量が多いので、満腹になってもお腹は軽く感じた。

お客さんに笑顔で帰ってもらいたい

店長の乾川さんは、この店で約30年というベテラン。
店長の乾川さんは、この店で約30年というベテラン。

今では割と一般的になった、油そばにマヨネーズという発想は、この店に来た高校生から得たもの。「お客さんの意見を取り入れながら、徐々に味を洗練させていきたい」と話す。「おいしかった」と笑顔で帰る姿を見るのが何よりのご褒美だ。

『ぶぶか』の名前は、棒高跳びの世界記録を更新し続けた鳥人、セルゲイ・ブブカから名付けたもの。1cmずつであっても、明日は今日よりも高く飛ぶ。そんな思いが詰まっている。これからも進化し続ける名店であることは間違いがない。

この提灯が目印。
この提灯が目印。

ぶぶか
住所:東京都武蔵野市吉祥寺本町1-7-1/営業時間:11:30~22:30LO(土・日・祝は11:00〜)/定休日:無/アクセス:JR・私鉄吉祥寺駅から徒歩2分

取材・⽂・撮影=ミヤウチマサコ

アド・グリーン
編集プロダクション
1982年創業の編集プロダクション。旅行関係の雑誌・書籍、インタビューやルポルタージュを得意とし、会社案内や社内報の経験も多数。企画立案から、取材・執筆、デザイン、撮影までをワンストップで行えるのがウリ。