渋谷駅西口から徒歩7分。駅から少し離れたエリアにある『REISM STAND』は、東京で暮らす人々に衣食住を通じてコミュニケーションが取れる場所を作ろうと不動産会社・リズム株式会社が立ち上げたカフェ。お母さんの手料理のようなランチを食べ、地元で暮らす人々に触れて、お腹もココロも温まろう。

不動産会社が仕掛けるコミュニティカフェ

渋谷、代官山、恵比寿のちょうど中心ぐらいに位置する『REISM STAND』は、商業地区と住宅街の間にあるカフェだ。

入り口の右手はコーヒースタンドで、気軽にコーヒーやスープ、お弁当、おばんざい付きのスープセットなどが購入できる。
入り口の右手はコーヒースタンドで、気軽にコーヒーやスープ、お弁当、おばんざい付きのスープセットなどが購入できる。

店頭はコーヒースタンドになっていて、散歩ついでにふらりとコーヒーを買うことができ、店内には電源コンセントを装備したカウンター。古着やマグカップなどを販売するスペースや、自然光がたっぷり入るテーブル席でゆったりと食事も楽しめる。いつも駅近のカフェを求めてゾンビみたいに彷徨い歩いているから、今度からここへ直行したほうがいいなあ。

自然光がたっぷり入る店内。奥には個室も完備。
自然光がたっぷり入る店内。奥には個室も完備。

なーんて考えていたら、カフェを運営するリズム株式会社の中山咲さんと店長の中村光宏さんが出迎えてくれた。

「リズムは実は不動産会社なんですけど、リアルなコミュニティを築く場として、そしてリズムが強みとするリノベーション空間を感じることができる場として2017年にオープンしました。部屋の賃貸、投資用マンションの販売もしているのですが、『お部屋やお家を提供して仕事は終わり、というのはちょっと違うよね』っていうのが会社としての考えでして。住んだ後の生活までフォローできるようにしたいという想いがありました」と中山さん。

そこで、オーナーさんや入居者さんと、食事やお茶を楽しみながらコミュニケーションをとれるような場を作りたいという発想に至り、カフェをオープンすることになったのだそう。

ライフスタイル課の中山咲さん(右)と店長の中村光宏さんの“なかなか”コンビ(と、勝手に命名)は笑顔が100点満点。
ライフスタイル課の中山咲さん(右)と店長の中村光宏さんの“なかなか”コンビ(と、勝手に命名)は笑顔が100点満点。

中山さんはカフェの企画や施策を取りまとめ、中村さんは店の運営・営業を担当している。中村さんは、2018年からアルバイトとして入店した最も古いスタッフだ。

「当初は別の仕事もしていたんです。たまたまリズムの本社に知人がいてアルバイトに入る前から手伝ってたんですけど、紆余曲折あり店長をやることになったんです(笑)。それで、このカフェのコンセプトを決めるときに、東京にいる人のほとんどは地方出身者だというキーワードがありました」。

地方出身者にとって、東京は冷たいところなんじゃないかという不安が付きまとう。

「東京に住んでいても地元とか、お母さんのご飯とか思い出せたらいいなと思って。ここへフラリと来てランチだけでも健康的なごはんを食べられたらいいですよね」と中村さん。なんとなく人恋しいコト、確かにあります。ここは夜は静かだし、引っ越してきたくなっちゃうなー。

14時以降は小型のわんちゃんなら同伴入店が可能だ。
14時以降は小型のわんちゃんなら同伴入店が可能だ。

素朴だけど丁寧に作られたお母さんのごはんみたいな健康的なメニュー

人気のランチは5つのメイン料理が選べて各1000円。スープ3種、カレー、唐揚げのメインからひとつ選ぶことができ、ごはんと小鉢が2種、デザート、ドリンクが付いてくるという。ホントにココは渋谷なの⁉ と疑いたくなるコスパの良さにびっくり。

ごはんに合うスープメニューを用意。
ごはんに合うスープメニューを用意。

「オープンからずっとエディブルスープ、つまり食べるスープをうたっています。スープがメインなので、ごはんがおかずくらいの感覚で、具がゴロゴロ入っているのが特徴なんです。どれもありふれた家庭料理なんですけど、それがお客さんにも『落ち着く〜』と思っていただけるようです。メニューは週替わりなので毎日来てくれる人もいますね」。

筆者はちょっと疲れ気味なので豚ミンパワーを入れたい! というわけでメインにREISM豚汁をチョイス。「大きな鍋で仕込むので、一人暮らしでは出せないおいしさがあると思いますよ」と中村さん。

ごはんは二十一穀米。これにドリンクも付く。この日のデザートはコーヒーゼリー。
ごはんは二十一穀米。これにドリンクも付く。この日のデザートはコーヒーゼリー。
野菜も肉もゴロゴロ。具材の味わいが溶け込んだまろやかな味噌のスープでごはんがすすむ。
野菜も肉もゴロゴロ。具材の味わいが溶け込んだまろやかな味噌のスープでごはんがすすむ。

ショウガが香る少し甘めの味噌スープで煮込まれた里芋はトロンとしていて、一切れで口いっぱいになる大きさのニンジンのほか、トロトロの脂身もおいしい豚バラ肉、味の下支えをするクタクタに煮込まれたしいたけや玉ねぎ。おいしいスープをたっぷり含んだ油揚げがこれまたウマ〜ッ!

「お客さんに『隠し味は何なの?』って聞かれることもあるんですけど、隠すほどのことをやってないんです(笑)。ただ、ひとつずつ丁寧に、それだけなんですよ」と中村さん。

この日の小鉢は豚キムチとひじき煮。ご飯にワンバンさせていただきました。
この日の小鉢は豚キムチとひじき煮。ご飯にワンバンさせていただきました。
ブラックコーヒーとミルキーなコーヒーが層になったゼリーはあっさりとした甘みに満足。
ブラックコーヒーとミルキーなコーヒーが層になったゼリーはあっさりとした甘みに満足。

住み心地のいい環境づくりに必要なコミュニケーションとリノベーション

食後にまったりとコーヒーを飲んでいたら、古着が売られているのが目に入った。入り口にはジーンズをリメイクしたバッグも置いてある。これも中山さんが冒頭で言っていた「住んだ後の生活のフォロー」の一環なのだろうか。

アイテムはシーズンごとに入れ替わる。
アイテムはシーズンごとに入れ替わる。

中山さんは「そうですね。衣食住を豊かにする不動産屋を目指しているので、すべてのサービスにこだわりを持って提供しています。“衣”を担うサービスとして、弊社ではECサイトの部署があって、古着やマグカップなどの雑貨を販売しています。古着やヴィンテージリメイク商品を展開するブランド『REISM CLOTHES』では、“再生主義”を掲げるREISMらしく、古着をアップサイクルしたオリジナル商品も手掛けており、店舗でも販売をしています」と語る。

社員から集めた着なくなった洋服をリメイクして作ったデニムのトートバッグ。限定6品。
社員から集めた着なくなった洋服をリメイクして作ったデニムのトートバッグ。限定6品。

ここへくれば衣食住がまかなえるようになる、いわば第2のリビングルーム。毎日、時間に追われて生活している私たちは、仕事や損得抜きで付き合えるリアルなコミュニティを求めている。フラリと立ち寄ったらいつもの仲間がいる安心感。会話を交わさなかったとしても心が休まる充実感。そんなコミュニティカフェなのだ。

マグカップやテイクアウトのお菓子なども販売
マグカップやテイクアウトのお菓子なども販売

「常連さんが割合としては多いので、ほぼ毎日のようにいる側としては、今となってはもう『いらっしゃいませ』っていうより、『あ、どうもこんにちは!』なんですよ(笑)」と中村さん。

やって来るお客さんは近所に住む人たちや、近隣で働く人、学生など年齢も幅広い。店に入って「ただいま〜!」って言っても、きっと中村さんは「おかえり」と笑顔で迎えてくれるに違いない。お腹だけでなく、胸もいっぱいになるカフェだ。

REISM STAND(りずむすたんど)
住所:東京都渋谷区鶯谷町6-6 グリーンハイツ鶯谷2F/営業時間:11:00〜22:00(日・祝は11:00〜17:00)※テイクアウトドリンクは9:30〜/定休日:無/アクセス:JR・私鉄・地下鉄渋谷駅から徒歩7分

構成=アート・サプライ 取材・文・撮影=パンチ広沢

アート・サプライ
編集プロダクション
1971年創業の編プロ。「旅&食&散策」ジャンルに強く、情報誌では子供向けから鉄道やドライブでの大人旅まで。さらにグルメ系ではラーメンや唐揚げ専門情報誌をはじめ、日本全国うまいもの紹介なども手掛けている。