大岡山にある人気店『立喰そばよりみち』が建物をリニューアルし、2024年の3月に再オープンした。以前は風情のある店舗が評判だったが、味と雰囲気はどうなったのだろうか?
店は見違えるほどきれいに
『立喰そばよりみち』の最寄り駅は、東急目黒線の大岡山駅。とはいえ、駅からは歩いて10分ちょいと、少し離れている。商店街を抜けた環七との交差点にある、いわゆるロードサイド店だ。
![大岡山駅前の商店街。ここをずいずいと進んでいく。](https://san-tatsu.jp/assets/uploads/2024/05/11150338/1715407418-a80a4a9a2b83fde31739d7e62b086752.jpg)
改装された店は、見違えるほどきれいになった。店名が建物の上部に書かれているのは、遠くからも見やすいように。
実は店舗の前には葉の茂る大木の植え込みがあり、環七を走る車からは、店舗が見えにくいのだ。私も何度、気づかずに通り過ぎたことか……。
![](https://san-tatsu.jp/assets/uploads/2024/05/11150436/1715407475-d90bc67fc4cd5f7243886a94ad92873f.jpg)
リニューアル前は風情ある店舗の見た目や、まるで親戚の家に来たかのような店内のざっくばらんさ、さらに「べらんめえ」なお店のおとうさん、高瀬米次郎さんのキャラもあり、テレビのロケやYouTubeで取り上げられることも多かった。
某有名歌手が通っている、という話が拍車をかけていたところもあったようだ。しかし、さすがに建物の老朽化が著しく、2023年の6月にいったん店を閉め、リニューアルして24年の3月に再オープンしたのだ。
![リニューアル前の店舗。夏はよしずが立てかけられていた。](https://san-tatsu.jp/assets/uploads/2024/05/11150654/1715407613-67f607bc661a3336a173aa66c498f113.jpeg)
店舗は新しく変わったが、そばは変わらずのうまさだった。
色は濃くともバランスの良いツユは、カツオなどの節とかえしのうまみがしっかりと絡まり、奥深い味わい。ごわっとした『むらめん』の茹で麺に負けない力強さもある。
![かき揚げそば500円。かき揚げの具材は、玉ねぎ、小エビ、にんじん、春菊。具材の風味良く揚がっていて、旨味のつまったツユを吸わせると、抜群にうまい。](https://san-tatsu.jp/assets/uploads/2024/05/11150522/1715407521-5a6849b50cf09efd76cd05d583105ff7.jpg)
天ぷらも軽すぎず重すぎず。ツユのなじみもよく、具材もしっかり入っている。要するに、立ち食いそばとして、バランスよくまとまっているのだ。
![ツユをたっぷり吸わせてガブリ。ふにゃけた衣がたまらないのだ。](https://san-tatsu.jp/assets/uploads/2024/05/11150611/1715407570-2892565853d47ea91071b7432837d217.jpg)
リニューアル後の変化は?
もともとこの場所に『立喰そばよりみち』ができたのは、1988年のこと。米次郎さんと、息子の成友(なるとも)さんで始めた。そのとき米次郎さんの妻は、神楽坂で飲食店を営んでいたのだが、その店を閉めたので、同じ場所で米次郎さんが「米次郎」という店名で立ち食いそば店を始めた。
大岡山では成友さんがひとりで切り盛り。店の味を守っていた。
![店主の高瀬成友さん。『立喰そばよりみち』の味を守ってきた。](https://san-tatsu.jp/assets/uploads/2024/05/11150843/1715407722-b2b8ea4a7ed9d368817c29f734f99c94.jpg)
その後、米次郎さんは神楽坂「米次郎」を閉め、『立喰そばよりみち』に復帰。それが2008年ぐらいのこと。そのときに神楽坂で使っていた「米次郎」の電飾看板を「もったいないから」と店前に置いたため、大岡山の、この立ち食いそば店が「米次郎」だと多くの客に思われていたという、ほほえましいエピソードもあった。
![現在の店内。立喰いカウンターが長くのびる。](https://san-tatsu.jp/assets/uploads/2024/05/11150954/1715407794-579dc844273191f8b18ca33b25812c9e.jpg)
そんないろいろがあり、開店から36年目にしてのリニューアル。現在、高齢もあって米次郎さんは店に立っていないが、リニューアルオープン後はかなりの大盛況だったようだ。
店は変われど、変わらずおいしい『よりみち』のそば。待ちかねた常連が押し寄せたのかと思いきや、新しい人もかなり多かったそうだ。
![人気のごぼう天そば500円。太く切られたごぼうがシャキッとうまい。](https://san-tatsu.jp/assets/uploads/2024/05/11151104/1715407864-df291082ee56ebabdb032520d91067ae.jpg)
転入者が多い土地柄。近隣の方が多く訪れる
成友さんが言うには、動画の影響や、リニューアルを拡散してくれた知り合いのおかげ、さらに周辺地域の変化もあるかもとのこと。
環七沿いにあるためドライバー客は今も多いのだが、それに加え、近隣住民の客が増えているようなのだ。
![](https://san-tatsu.jp/assets/uploads/2024/05/11151248/1715407968-fae4b6dd5d5e0d7c56491052e86577fe.jpg)
『よりみち』は車通りの多い環七沿いにあるが、店から駅までのエリアは住宅地になっている。武蔵小山や自由が丘が近いこともあり、転入してくる住民も多い。
「なんだかネットで見たことのある、近くの立ち食いそば屋がリニューアルしたらしい。ちょっと食べに行ってみよう」。ということなのではないだろうか。
![](https://san-tatsu.jp/assets/uploads/2024/05/11151352/1715408032-04c2b3deff0d934f4effc93d19593549.jpg)
ちなみに、店舗前にある植え込みの木が切られ、整備されるらしい(ここは国の持ち物)。真夏には涼を呼ぶ木陰となっていたので惜しいのだが、店の場所は分かりやすくなるかもしれない。
![環七から見た『よりみち』。この前の木がなくなるのだ。取材時には既に伐採作業が始まっていた。](https://san-tatsu.jp/assets/uploads/2024/05/11151509/1715408108-ea8c5c2fc94a57af39b9c7d0bb611680.jpg)
長く愛されてきた『よりみち』は、リニューアルをきっかけに、さらなる人気店になりそうだ。
![](https://san-tatsu.jp/assets/uploads/2024/05/11151633/1715408193-7eb9b7f58f060749d6a1de01dec24749.jpg)
立喰そばよりみち
住所:京都目黒区南3-8-8/営業時間:6:00〜16:00/定休日:日/アクセス:東急電鉄目黒線大岡山駅から徒歩10分
取材・撮影・文=本橋隆司
本橋隆司
大衆食ライター
1971年東京生まれ。大学卒業後、出版社勤務を経て2008年にフリーへ。ニュースサイトの編集をしながら、主に立ち食いそば、町パンなど、戦後大衆食の研究、執筆を続けている。