日本が誇る喫茶店文化を感じた人気店「珈琲館 くすの樹」が、惜しまれながら閉店。その跡地に何ができるのか? 興味津々だった。どきどき楽しみにしてきた地域住民の1人として、歴史に残る素晴らしきバトンタッチを、記録しておきたい。

「珈琲館 くすの樹」。
「珈琲館 くすの樹」。

三角屋根がシンボルだった「珈琲館 くすの樹」。武蔵境界隈のランドマーク的存在だった。筆者は約30年前に武蔵境の住民になったが、周囲にこの店を知らない人は皆無。誰もが一人で、家族で、友達と、さらに仕事の打ち合わせに、リビングのように利用していた。そんな人気店の閉店ニュースが飛び込んできたのは、2019年春。当然ながら惜しむ声が渦巻き「最後にもう一度」というファンが押し寄せるも、4月15日に閉店。その後、椅子やテーブル食器など調度品の展示販売会も催され、小金井公園の『江戸東京たてもの園』への移築を願った人もいたというが、建物は静かに解体された。

「珈琲館 くすの樹」は、高い天井も象徴的だった。
「珈琲館 くすの樹」は、高い天井も象徴的だった。

思いは受け継がれ、地域の憩いの場、再び

しばらく沈黙があったが、跡地に「何か」が新しく誕生するとの話を聞いた。「くすの樹」がよみがえるのかなあと期待に胸が膨らむ。なんてったって喫茶店不毛地帯、コーヒーで和める場がここにないのは口惜しい。

「何か」が、スターバックスになると判明したのは2020年11月。個人経営の喫茶店から、世界的チェーンになるとは、猛烈に驚いた。が、もっと驚いたのはオープン直後に訪ねた時だ。保存樹木のクスノキ、イトヒバ、アオギリを生かした配置をはじめ、『くすの樹』を彷彿する意匠がたくさんあるではないか! スターバックスコーヒージャパン店舗設計部の及川和茂さんは「オーナー様(元店主)と何度も話して、『くすの樹』を愛したお客様に懐かしいと感じていただけるよう、面影を残すことを考え続けました」と話す。三角屋根の木造建築を基本に、丸太柱、八王子産クスノキのテーブル、さらに壁のアートはクスノキとコーヒーの葉を重ね未来へ伸びる様子を表現。

2020年11月24日、「珈琲館 くすの樹」(1979〜2019年)跡地に開店したスターバックス。
2020年11月24日、「珈琲館 くすの樹」(1979〜2019年)跡地に開店したスターバックス。

さあ初来店。どこへ座ろう。イトヒバを囲むテラスなら、樹齢300余年のクスノキが、新しい光景にほほえむ勇姿が見えるよ。

受け継がれた意匠の数々

元あった位置近くに設置された丸太柱。あえて古いままに。
元あった位置近くに設置された丸太柱。あえて古いままに。
壁付けライトは、前店も多用していた。
壁付けライトは、前店も多用していた。
クスノキとコーヒーの葉のアート。
クスノキとコーヒーの葉のアート。
歴史を受け継ぎ、接客に当たるスタッフがみんなで相談して描いたチョークボード。オーナーが見て、感動したという。
歴史を受け継ぎ、接客に当たるスタッフがみんなで相談して描いたチョークボード。オーナーが見て、感動したという。

『スターバックス コーヒー 西東京新町店』店舗詳細

スターバックス コーヒー 西東京新町店
住所:東京都西東京市新町5-19-10/営業時間:7:30〜22:30/定休日:不定/アクセス:JR中央線・西武多摩川線武蔵境駅から徒歩22分

取材・文=松井一恵 撮影=原幹和、加藤昌人(くすの樹)
『散歩の達人』2021年1月号より