日々、街の表情が大きく変化する東京。 2006年、私はふと思い立って、消えていく風景を写真に納めることにしました。「消えたものはもう戻らない。みんながこれを見て懐かしく感じてくれたらうれしいな」とそれぐらいの気持ちで始めた趣味でした。 そんな、東京から消えていった風景を集めた短期連載「東京さよならアルバム」。今回は第13弾として、2020年8〜9月に消えていった風景を紹介します。   写真・文=齋藤 薫(1955年生まれの元テレビマン)

2020年8月 「としまえん」

東京を代表する遊園地、テレビロケの思い出も

2020年8月いっぱいで「としまえん」が閉園、1926(大正15)年開園以来90年以上続いた歴史に幕を下ろした。東京ディズニーランドがオープンするまでは、まさに東京を代表する遊園地だった。

1958(昭和33)年には日本初の屋内スキー場ができ、1970年代にはサイクロン、コークスクリュー、シャトルループ、フライングパイレーツなど次々絶叫マシンが完成し人気の頂点に。アフリカ館も人気あったなあ。最後まで現役だったカルーセルエルドラドは、113年前ドイツで生まれた日本最古の回転木馬で、機械遺産にもなっている。うちから近いこともあって、子供の頃からよく行った身近な遊園地だった。かつては、船頭が舳先に乗って、ボートが斜面を水面に向かって滑ってゆくウォーターシュートや、モノレールが懐かしい。夜の花火は、練馬区民なら皆見たことがあるだろう。

テレビの取材にも協力的で、私のAD時代、ここのウエスタンのオープンセットでアイドルバラエティのロケも行なった。ジュリーの「サムライ」や、渡辺真知子の「迷い道」の歌撮りのロケもやったなあ。奥のグラウンドでは、タレントの運動会も収録したっけ。

閉園まであと10日という日にお邪魔したが、別れを惜しむ老若男女で大にぎわい。コースターは1時間半以上の待ち時間だった。閉園後は、公園と「ハリー・ポッター」のテーマパークができるらしいが、ここが無くなるのはあまりにも惜しいし悲しい。いい形で残す方法は無かったのだろうか?

「としまえんプール」も同時に閉園

遊園地とともに、「としまえん」のプールも同時に閉園した。1960年代各地にできたマンモスプールの代表であり、1965年(昭和40年)世界初の「流れるプール」ができた時は衝撃だった。1988年には、当時世界最大のウォータースライダー「ハイドロポリス」が完成、バブルの真っ只中でもあり、芋を洗うような大人気のスポットとなった。その後も毎年シュールでユニークなポスターが話題となり、よみうりランドと並んで、東京の代表的なサマースポットとして人気を博した。今流行りのナイトプールも30年以上前から実施していた。

閉園直前、この日のプールは猛暑の中、別れを惜しむ家族連れや若者でいっぱい。ハイドロポリスは1時間待ちになっていた。夏と共に去ってゆく「としまえん」、思い出だけはいつまでも残ってゆくことだろう。

2020年9月 「マイナビBLITZ赤坂(赤坂BLITZ)」

数えきれないほど足を運んだライブハウス

赤坂のライブハウス「マイナビBLITZ赤坂」、通称“赤坂BLITZ”が9月22日に閉館した。初代BLITZは1996年から7年間、その後2代目の現BLITZが2008年から12年、足掛け24年間のBLITZがその使命を終えた。

初代のこけら落としはMr.BIG。番組の収録もずいぶん行った。高校生カラオケ特バンや、ブルーコメッツの井上大輔追悼の音楽葬もここで収録した。2代目のBLITZにも、荻野目ちゃんのライブや西城秀樹の還暦ライブなど、数えきれないくらいお邪魔した。TBSでは、レコード大賞から株主総会までここを使っていた。コロナの影響もあり、お別れのライブもイベントも無いさみしい幕切れになってしまったのは残念だ。

今後は、TBSが主導して、赤坂エンターテインメントシティ構想としてスタジオに生まれ変わるらしい。ZEPPと共に、巨大ライブハウスの草分けとしてライブシーンを牽引してきたBLITZが無くなるのは残念である。ますます東京から音楽を楽しめる場所が減ってしまわないか心配だ。

2020年9月 渋谷「しぶちかショッピングロード」

時代に取り残されたような地下商店街

渋谷駅に直結する地下商店街「しぶちかショッピングロード」が、老朽化と再開発のため、9月いっぱいで姿を消した。

1957年オープン。日本一古い地下商店街の一つであり、63年の歴史を持つ。ハチ公広場やスクランブル交差点のすぐ真下に、まるで時代に取り残されたようなレトロな商店街が広がり、50年前私が高校生の頃からほとんど変わらない空気が残っていた。

そもそも戦後、焼け野原となった渋谷駅周辺の露天商から始まり、GHQの指示により、洋品や雑貨を扱う露天商が移ってきて始まったのが「しぶちか」だったという。お店も不思議な店が多く、舞台衣装やドレスの店、喫煙具店、はんこ屋、昔ながらの雑貨や化粧品店、靴屋など、再開発が進む渋谷で最後まで残っていた昭和の風景であり、今まで健在だったのが奇跡だとも思える。2021年4月現在改装中、7月ごろリニューアルオープンする予定である。

2020年9月 新宿「メトロ食堂街」

途中下車してでも食べたいグルメの名店がズラリ

JR・地下鉄新宿駅西口に直結する「メトロ食堂街」が、9月いっぱいでクローズした。JR新宿駅西口の、ちょっと中二階のような不思議な空間で、「しぶちか」と同じく昭和レトロな食堂街だった。数十年前から変わらない雰囲気だが、この狭い空間に、「永坂更科」「肉の万世」「天ぷらつな八」「京料理の良彌」「西洋料理の墨絵」「タカノフルーツパーラー」「追分だんご」などの名店がズラリと並んでいた。特に、「永坂更科」の御前そば、「万世」のパーコー麵、イートインのカレーとハヤシ、「つな八」イートインの天丼、「笹陣」の海鮮丼などは、新宿で途中下車してでも何十回も通ったものだ。

地下1階がレストラン街で、地下2階がショッピングフロア、いずれも西新宿の再開発で消えてゆく。これだけのグルメがいっぺんに無くなるのは大変な損失であり残念だ。どこかでまとめて再開してほしい……と思っていたら、2021年4月現在もほとんど工事をしているなか、『永坂更科』と『肉の万世』は同じ場所で営業を続けているではないか。どうなっているんだろう?