株式会社RTi-cast 最高技術責任者 越村 俊一

津波災害の減災に貢献することをミッションとしており、その社会性・公共性の高さ、産学連携・オープンイノベーション型の事業として評価された。社会性・公共性の高いテーマに挑戦する大学発ベンチャーのロールモデルとなることが期待される。


■RTi-castのリアルタイム津波浸水被害予測技術
RTi-castは、東北大学などのスーパーコンピューターなどを利用して津波浸水被害予測を実現する「リアルタイム津波浸水予測技術」をコア技術として、2018年3月に東北大学発ベンチャーとして設立、独自の津波浸水被害予測サービス事業を展開しています。コア技術を共同開発した国際航業株式会社、株式会社エイツー、日本電気株式会社(NEC)と、東北大学ベンチャーパートナーズ株式会社が出資し、共同運営をしています。

RTi-castのミッションは、東日本大震災の教訓と減災への強い思いから、世界初の民間事業者によるリアルタイム津波浸水予測サービスの提供を通じて、将来の災害を「生き延びる、素早く立ち直る」社会(レジリエントな社会)の実現に貢献することです。

RTi-castの「リアルタイム津波浸水予測技術」は、東北大学・国際航業株式会社・NEC・株式会社エイツーの4者連携により、スーパーコンピューターの災害時運用によるリアルタイムかつ高精度な自動予測を可能にしていることが特色です。2018年に内閣府の総合防災情報システムの一機能として初めて導入され、2021年には太平洋岸全域を予測領域とするNation-wideのシステムにまで成長しました。レジリエントな社会を支える技術として発展させていきます。


■RTi-castの原点と存在意義
RTi-castの原点は、2011年の東日本大震災でわたしたちが経験した極めて大きな問題にあります。多くの人の命が失われ、甚大な被害が発生しましたが、津波の浸水状況や被害状況の把握に困難を極めたということ、被害状況の分からない中で対応を迫られたことです。この問題を解決することが私たちの活動の原点にあります。災害情報というと、国や自治体が広く提供するものが一般的ですが、国が広く提供する防災気象情報とは異なる、「高度化・多様化する市場のニーズに対応する付加価値の高い情報」「きめ細かい予測やオーダーメイドな対応情報」を提供できることがRTi-castの存在意義です。防災技術はいつ起きるか分からない災害に備えるものであり、持続可能性が最も問われます。そのためにも、優れた技術を社会に普及させて、正当な対価を得ながら持続していくことが、社会的価値の創出につながると考えています。


■将来構想
将来は、Society5.0が実現し、つながる社会の中で国民は豊かな生活を享受します。津波の情報は、究極的には「命を守る」情報として活用されなければなりません。津波の到達前に安全な避難場所を提示して誘導すること、そして津波浸水域の救援・救助を迅速に行うことで「津波による人的被害ゼロ」を目指していきます。新しい防災情報の価値を創出する挑戦です。

RTi-castの将来の発展を見据えた構想としては、①世界の津波防災への貢献、②津波浸水予測サービスの高度化・拡充による新たな価値創造の2点を考えています。

リアルタイム津波浸水被害予測システムは、津波のリスクがある他国への展開が可能であり、現在複数の国に対して提案中です。特に国際協力機構(JICA)事業を中心に技術協力に持っていきたいと思っています。時間はかかりますが、国際協力活動を通じて活路を見いだしていきたいと考えています。

また、RTi-castのリアルタイム津波浸水被害予測技術は、高度な津波浸水被害予測解析を短時間で行う点に最大の利点があります。すなわち、事前対策としての津波リスク評価についてもニーズがあります。例えば、損害保険の料率算定に利用できるリスク評価モデルとして、予測データ販売も展開しています。

最大の夢は、一般ユーザに向けた津波浸水予報としての予報情報の提供です。人の生命を救うための事業として極めて責任が重く、さらなる技術の向上が不可欠ですが、これにチャレンジします。また、実用準天頂衛星システムのサービスも開始され、高精度測位情報、津波浸水予測技術、量子コンピューティングなどの最適化技術を連携させることで、将来の避難方法を抜本的に変えるイノベーション創出を狙います。浸水範囲が即座に予測できれば、迅速・確実な歩行者への避難情報(安全な場所)の提供や、運転者(カーナビゲーションシステム)への情報提供、さらに、自動運転技術による渋滞回避した避難誘導などへの展開が可能となり、将来の災害情報のあり方を刷新する挑戦を継続していきます。