「食事中の会話は控えてください」と張り紙された新聞社の休憩室で弁当を食べる。張り紙はもちろん新型コロナウイルスの感染拡大防止のため。もともと、それほどしゃべりはしない。それでも、話すなと言われると、窮屈な感じがする。

 もぐもぐと口を動かす。本能的には生きるため、栄養摂取のための行為だろう。だが、それだけではない。

 コロナ対策として定着した「黙食」。気になるのが、食育の場でもある学校現場だ。マスクを外し、同級生たちの顔が分かる給食の時間。皆黙って食べている。

 コロナの影響がなかった3年前の全国学校給食週間(1月24〜30日)に合わせ、地元食材を使い献立も工夫した島根県西部の給食を、調理員や教員の思いとともに掲載した。漁業のまち・浜田のメニューに「まるごとアジ一匹」があった。「おいしい」でも、「食べにくい」でも、口々に言い合うのが食の楽しさ。「『本物』を食べてほしい」という献立発案者の願いを思い出す。

 コロナは5月から法律上、季節性インフルエンザと同じ「5類」に位置付けると政府が決めた。科学的根拠はどうか。経済優先の発想や国の財政事情に引っ張られていないか。「待ちに待った」という気持ちのアクセルと同時にブレーキを踏んでしまう。「出口戦略」を間違うと、我慢し失われた時間も無駄になる。考えると消化が悪くなる気がしてしばらく箸を置いた。