「国の対応は不十分だ」−。日産自動車(横浜市)が自動車部品メーカーなど下請け業者に対する支払代金を不当に減額していた問題で、島根県の丸山達也知事が26日、東京・霞が関の中小企業庁と公正取引委員会を訪れ、批判した。政府が掲げる賃上げの実現に向け、早急な是正を求めたものの、前向きな回答はなかった。

 要望後、丸山知事は「このままでは裾野の広い賃上げの実現は夢のまた夢。改善が進まなければ、やれることを考えなければならない」と述べた。

 日産は約2年間で36社を対象に一度決まった支払代金から計30億円超を減額したと公正取引委員会が認定し、7日に再発防止の勧告を受けた。

 非公開の面会で、丸山知事は、減額分の利息の不払いや指摘以外の期間での減額があった可能性に触れ、「勧告を受けてもなお優越的地位を振りかざして下請け企業を扱っている」と指摘。政府が報告を求めて実態を明らかにし、違反があった場合に是正するよう求めた。

 さらに、13日にあった岸田文雄首相と連合、経済界の代表者との政労使会議の内容を取り上げ、「首相が中小企業の賃上げに意欲を示し、下請法違反への厳正な対処を掲げる中で、関係府省の対応は不十分だ」と非難した。

 軽い勧告内容が大企業の誤った認識を生み、取引先の下請け企業は適切な価格転嫁ができず、賃上げを阻むと強調し、行政指導などを挙げて「首相の発言が確実に実行されるよう、あらゆる手段を講じるべきだ」と求めた。

 対応した中小企業庁の須藤治長官は「下請け取引の適正化、下請け業者の振興に取り組んでいく」とする一方、要望に対する具体的な回答はなかったという。

(2024年3月26日20:52 見出し・記事更新)