全国3補選のうち唯一の与野党対決となった衆院島根1区補選で、岸田文雄首相(自民党総裁)と立憲民主党の泉健太代表が21日、島根入りした。「政治とカネ」の問題で政治不信が高まる中、候補者の応援マイクを握り、舌戦を展開。岸田政権の命運が懸かる戦いでの勝利に向け、「直接対決」で火花を散らした。

 3補選のうち、自民は東京15区、長崎3区で候補を立てず、異例の不戦敗となった。与野党対決の島根1区は全国から注目を集め、自民、立民両党とも党幹部や知名度の高い国会議員らを投入し、28日の投開票に向け、総力戦を展開している。

 告示前を含めて初めて島根入りした岸田首相は、安来市内であった党員や市民16人との座談会に出席。冒頭の挨拶で、自民派閥の政治資金パーティーの裏金事件に関して「国民の大きな政治不信を招いている」と語り、政治資金規正法の改正を通じた再発防止に注力する考えを示した。

 島根県奥出雲町内の商業施設前でも約600人を前に「本当に自民党総裁として心からお詫び申し上げる」と謝罪。出雲大社やたたら製鉄といった地域資源を生かした観光振興のほか、地方や中小企業への賃上げの波及、防災・減災対策などを進める考えを強調し、「未来に向けて政治を進めるのは誰なのか、どの政党なのかをこの選挙で考えていかないといけない」と支持を呼びかけた。松江、出雲両市内でも街頭に立った。

 立民の泉健太代表は告示前を含めて4回目の島根入り。安来市内の商業施設前の街頭演説では約300人を前に、岸田首相の来県に触れ、「(応援に入ることが)マイナスになるかもしれないと言われる中、訪れた。対決するこの日こそ、(支持を)大きく伸ばす日にしていこうではないか」と呼びかけた。

 また、スサノオノミコトがヤマタノオロチを倒す出雲神話に例え、「裏金、古い政治、旧統一教会(世界平和統一家庭連合)など多くの『首』がある中、何一つ処分されずに首が残っている」と指摘。首相が裏金事件を巡る自身の責任について「最終的に国民、党員に判断してもらう」と発言したことを挙げ、「島根1区から国民の判断を見せようではないか」と語気を強めた。その後、松江市内でも街頭演説した。