1950年代に島根県隠岐の島町の若い女性たちを集めて結成され、隠岐民謡の踊りを通して島の魅力を伝えた「観光キャラバン隊」が、約40年ぶりに復活した。当初は映像化に取り組む住民有志の企画だったが、踊り手の若い女性たちが活動の継続を望んだ。町内イベントだけでなく、往時のキャラバン隊のような全国公演を目指して研さんしている。

 隠岐民謡「観光キャラバン隊」は1955年に旧西郷町で結成され、女子中学生が中心になって厳しく踊りを仕込まれた。パンフレットのモデルや町内での公演をこなし、各地に出張して隠岐に観光客を呼び込むための広告塔となった。

 50年代後半には国立公園指定のための要望活動でも全国各地で一役買い、67年には皇太子ご夫妻(現上皇ご夫妻)の訪問時に面前で公演する栄誉を得て、活動は約40年前まで続いた。

 キャラバン隊の振り付けを一手に担った藤間(ふじま)流師範の故・藤間藤儔(ふじとも)さんの踊りを次世代に残そうと、昨年4月に町内の有志10人でつくる「ふるさと探訪の会」が映像化を企画した。

 会員の呼びかけに20〜30代の保育士や会社員、観光協会職員などの女性7人が踊り手として参加し、週1回1時間の稽古に取り組んだ。指導は斎藤正子会長(76)はじめキャラバン隊経験者の会員3人。当時は一つの踊りを1年かけて仕込まれるのが普通だったといい、時を経ても体が振り付けを覚えていた。

 若い7人は集中的に踊りを習得し、11月に「隠岐しげさ節」「どっさり節」「隠岐おわら節」「新しげさ節」の動画撮影を終えた。企画はここで終わる予定だったが、メンバーの八原未来さん(37)は「目標を持って踊ることが楽しかった。新たな目標を持って続けたい思いがあった」と稽古を続け、町内の発表会や文化祭のステージに立った。八原さんは「島から離れた場所で隠岐民謡を伝えられたらいいなと思っている」と語る。

 斎藤会長は「練習を継続し、舞台に立たないと上達しない。関係機関はメンバーを上手に使ってほしい」と話している。

 DVD(49分)は100枚制作して町図書館や町内14カ所の高齢者福祉施設へ寄贈した。6月1日午後2時に同館で上映会があり、踊りも披露する。